瑩 ・・・

道を照らし 人を照らす
かがり火のような人になれ・・・

たったひとつの 美しき玉を
守リ抜く男になれ・・・



*******



夢を見た 
明け方 チェヨンは目を覚まし
腕の中で 安堵した顔で
くうくうと寝ているウンスを見た

今しがた見た夢 
どうしても思い出せない女人の顔


瑩 瑩・・・と呼ぶ声が聞こえた


眠りにつく前


そう言えば チェ家の本貫って
鉄原なの? 偶然ね 
私の両親も
今は鉄原に住んでいるのよ


天界の 父上様 母上様が?


そうそう 不思議ね
ヨンとは知らないうちに
いろんなところで
繋がっているのね


そう言って
ほんとうに天女のような顔をして
笑った

あの顔と 一瞬重なった

記憶を辿る・・・



ヨン ヨン・・・
どうしたの?
難しい顔してるわ


目を覚ましたウンスが 
心配そうに 尋ねた


起こしてしまったか?



その細く白き肩をそっと抱く



夢を見ていました
優しい女人の声がして
一瞬イムジャかと思ったが
違うようでした


言ってしまってから 
他の女人が夢に出てきたなど
言うべきことではなかった
と 思い至る・・・

ウンスは別に
気に留める様子もなく
どんな声だったかと聞いた



聞き覚えはあるが
思い出せず 
でも慈しみに満ちた声でした


そう それきっと
ヨンのお母様よ



母上?



ええ お墓参りしたでしょう
きっと お母様が会いに来て
くれたのよ


・・・・


小さい頃に亡くなったって
聞いてたけど
顔を思い出せないくらい
幼い頃だったのね・・・



ウンスがチェヨンの顔を
自分の肌に引き寄せ
柔らかい胸に抱え込むと
チェヨンの髪を
優しく指に巻き付けながら


ヨンのお母様ってどんな人
だったんだろう


と 聞いた


それが話を
あまり聞いたことがなく・・・
父は後妻も娶らず
俺を慈しみ育ててくたゆえ
母のことを聞いては
いけない気がして・・・


そう お父様 
お母様を忘れられなかったのね
ヨンがお母様似なら きっと
ものすごく美人だったわね
ヨン きれいな顔立ちだもの


きれい? 俺が?


ええ


ウンスは思った

きっと 今の私よりも
若い時に ヨンの母親は
ヨンを残して逝ってしまった
どんなにか
心が張り裂けそうだった
ことだろう

どんなにか
ヨンの行く末を案じていた
ことだろう

子を残して
先立ったヨンの母を思う

そして ふと
子に先立たれた
私のオンマを思い出す

ふたりの母のことを思うと
胸が苦しくなった





急にウンスの目の前に
幻影が広がった



*******



まだ逝きとうはありませぬ


床に横たわり天井を見上げる
女人の姿が見えた


あれは ヨンのお母様?


もう既に話をする力もないようで
心の中で 夫と息子に思いを託す


何一つ
してあげることができぬまま
先に逝く 私をお許し下さい

ふたりを天よりずっと
見守っておりまする

瑩や 
強く強く生きておくれ
父に負けぬように
賢くおなり

其の名の通り
人を照らすかがり火となって
皆を導く人となれ

そしていつの日か
そなただけの美しい玉に
出会えたら 其の玉を
大切に守り抜く人となれ


あなた 瑩を頼みます
私の分まで慈しんで
育てて下さいませ

そんなに悲しそうな顔を
しないでください

心残りはたくさんあれど
あなたと出会い
瑩を授かったこと
私はとても幸せでございました


瑩・・・瑩・・・
私の可愛い坊や
どうか どうか
幸せになっておくれ
母のたった一つの願いです・・・


女人の頬を涙が伝う
それを見た夫がむせび泣く
あどけない幼子が
笑っている・・・



*******



今の映像は
なんだったんろう?
ヨンのお母様の遠い記憶?
それともヨンの記憶?


お母様が 私に
見せてくれた・・・
自分の思いを・・・
ウンスは そう思った



どうした?という顔で
ウンスの腕の中にいる
チェヨンが ウンスを見上げた


ちょっとお母様に会ってたの
やっぱりきれいな方


チェヨンは驚きもせず
そうか・・・と言った



ねえ ヨン
もしも 私が先に死んだら


チェヨンが苦い顔で
ウンスを見る


私のことは 忘れていいのよ


そのようなこと 絶対出来ぬ


そう言うと思った・・・


ウンスは優しく微笑んだ

チェヨンが顔を埋めた
ウンスの胸に悪さをした

こら!と言いながら
ウンスは
それを いまは許した・・・


あなたの寂しさも 悲しみも 
私一緒に受け止めるわ・・・



*******



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