ウダルチ兵舎にて

昨日は世話になったな


チェヨンがチュンソクに言った


いえ 医仙様と上手く・・・と
言いかけて その顔色を見た
チュンソクは 丸く収まったかと
納得した


昔からおふたりは何かしらの
騒動を起こし 気がつくと
周りもそれに巻き込まれている
なれど その度ごとに
周りもお二人も 絆を強めてきた

この先もきっといろいろなことを
覚悟せねばならぬであろうなと

チュンソクが苦笑しかけたとき


また世話になる 頼むぞ
以上だ


短く告げたチェヨンは足早に
兵舎を去っていった


また? 世話に? 頼む??


なんだかひどく悪寒がする
チュンソクは身震いをした



*******



宣仁殿に行く途中の回廊で
チェヨンは 枢密院(チョミロン)
知枢密院事(チサチョミロンサ)に
出会った
チェヨンは一礼して通り過ぎる


親元派でありながら
時に軍事機密をも扱う役職の
この男はチェヨンのことを
疎ましく感じていた

王からの全幅の信頼を得て
官位以上の破格の
扱いを受けている

王の反元政策を
牽引しているのも
大護軍チェヨンであることは
誰の目にもあきらかであった


そしてこの上 
王妃を後ろ盾とした
天人の典医を手に入れるという
今まで以上の権力がチェヨンに
集中するかと思うと 
苦々しい思いが溢れた



*******



朝議がほぼ終わりかけ 皆が
宣仁殿を下がろうかと言う頃

おもむろに知枢密院事が
王に尋ねた


ちょうど良き折
王様にひとつお伺いしたき事が
ございます
聞く処によると大護軍チェヨンと
典医寺の医仙殿との婚儀の
準備が進められているとか


いかにも そう聞いておる
なれど一介の武官の婚儀
何もこのような場で持ち出す
話ではあるまい


と 今にも何か
言い出しかねないチェヨンを
手で止めて 王は言った


いえ 王様
話はそう簡単ではありませぬ
奇皇后は徳成府院君が亡くなった
因を医仙殿と考えておりましょう

そのような時に
高麗の武人大護軍が
医仙殿を娶るなど 
元に言質を与えるようなもの
攻め入る隙 付け入る隙を
与えると言うことに
ほかなりません
政にも狂いが生じましょう

大護軍には医仙殿との婚儀を
取りやめて頂き
元の貴族から姫を娶るのが
良策かと存じますが・・・


王は じっと
考える素振りを見せる
チェヨンの方を伺うと

王に向かい鼻で笑った


王様 臣からもひとつ
よろしいでしょうか


うむ


婚儀に際し異を唱えられた
お気持ちはわかり申した
この大護軍という位が
元と我が国の
妨げになると言うのなら
それが婚儀のじゃまになると
いうのなら
位に何の未練がありましょう

臣の代わりに
大護軍を務められる者は
この高麗にも多く
いることでしょう

なれど臣にとり
あの女人の代わりに
臣の妻になる方はひとりも
おりません

このお役目返上させて
頂きたく存じます


そう言い放つと
唖然と見送るウダルチの兵を
残しチェヨンはとっとと
宣仁殿を後にした


あ~ 先ほどの頼むは
このことか・・・


チュンソクはしてやられたと
頭を抱えた



*******


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