朝餉の支度を早々に終えると
ウンスは隠れるように
自分の部屋にいた


腕の中で朝目覚めたら
忘れているかと思ったのに
まだ少し胸の奥が
きりっと痛んだ・・・


彼は聡い人だから
きっと何か感じたはず

昨夜はいつもより
抱きしめられた腕に力が
籠っていて
気にするなと
言われた気がした

だから昨日は安心して
眠りにつけたのに


痛いところをつかれると
それが些細な内容でも
心かき乱される

悪い癖だ



ゆっくりと
部屋のひとつひとつに
目をやる
彼が私のために用意したもので
いっぱいの部屋

この部屋にいると
胸の中が温かい気持ちになる

服や簪の贈り物がたくさん
あることも そうだけど
それ以上に
私のことを思って選んでくれた
その時間がうれしくて
つい顔を
ほころばせてしまうのだ



イムジャ ここにおったのか


そう ひとを猫みたいに
探さないでよ


と 
わざと ぷうと頬を膨らませ



今日の服を選んでいただけよ
さ 朝ご飯にしよう


そう言うと
心配をかけないようにと
ウンスは慌ただしく
朝餉の準備を始めた




*******



典医寺に出仕すると
チェ侍医がいた

相変わらずの美男
光守にそっくりで
なんだかおかしな気分だけど

侍医のことは王様が
穏便に片を付けたから
武閣氏たちにも
知られずに済んだ

きっとチェ侍医目当ての
患者が増えるんだろうな 
でもあまり女の人には
興味なさそうだけど・・・
そう思いながら顔を見つめた



何か私の顔についてますか?



視線が不躾だったのか
チェ侍医に聞かれた



いえいえ 相変わらずの
美男だなぁと思って
武閣氏たちが騒ぐのも
無理ないわね



さようですか?
生まれついての顔なので
あまり気にしたことは
ありませんが


とさらりと言う

こういうところ
チェヨンとは違う

彼ならきっと

何を戯れ言を って
目をきりっと上げるわ

ほんとに不器用な人
でも私は
そんな彼が好き
なんだけど・・・と
そんなことを思うだけで
笑みがこぼれる

朝の嫌な気分は
忘れられそうな気がした



大護軍といい
チェ侍医といい
私のまわりはいい男が
たくさんいて幸せだわ


ウンスは ふふっと笑った


しあわせ・・・ですか?


ええ いろいろあったけど
これからよろしくね
私 韓医学は
まだまだ勉強途中でいろいろ
教えていただけると助かるわ


ウンスはにっこりそう言った



しあわせか
心がぐらりとするようなことを
素直に言えるあなた様は
罪なお方だ

大護軍こそお幸せであろう
このような方を妻に娶るのだ
他のことが目に入らぬくらい
大切にしていらっしゃるのが
よくわかる

私は典医寺であなた様のお側で
ずっと一緒にいられれば
それだけでよいのです
それが私の幸せなのですよ


言えるはずもない想いを
抱きながら
チェ侍医はウンスに
優しく微笑んだ



*******



『今日よりも明日もっと』
いろんな思いを抱えても
それでも明日はやってくる



にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村