【オシャラコ善兵衛(ぜんべえ)】は誇張譚(こちょうたん)の笑い話です。

 

《 あらすじ 》

 

昔、オシャラコ善兵衛(ぜんべえ)という鴨捕(かもと)りの名人がいたそうです。

とても寒い冬の日、オシャラコ善兵衛が阿武隈川(あぶくまがわ)に行くと、たくさんの鴨がいました。

(よし、よし、今日は寒いから夜には川に氷が張って、この鴨たちは一度にみんな捕れるな)

オシャラコ善兵衛は家に戻(もど)ってたくさんの縄(なわ)をなうと、夜中にまた阿武隈川に行きました。

すると阿武隈川には氷が張り、鴨の足も凍(こお)りついて動けなくなっていまし

た。

 

 

オシャラコ善兵衛は、朝、氷が溶けたときには鴨が逃げてしまわないように、鴨の足を一羽ずつ縄でくくりつけ、縄の端をしっかりと、自分の腹の周りに巻きつけて、氷が溶けるのを待っていました。

明け方、

(さあ、いよいよ氷が溶けるころだな。今日は滅多にない大猟(たいりょう)だな)と思っていると、急にあたたかくなって阿武隈川の氷がいっきに溶け始めました。

 

 

そのとたん、鴨の群れが一斉(いっせい)に空高く飛びました。

鴨の足につけた縄の端を自分の腹に巻きつけておいたオシャラコ善兵衛も、あっという間に何十羽もの鴨に吊(つ)るされて空高く飛んでしまいました。

(うわぁ、大変だ。どうしょう)

高い空からはとても降りられない。

オシャラコ善兵衛は困ってしまいました。

そのうち、鴨の群れは、村でいちばん高いお寺の塔(とう) のほうにむかって行きました。

(よし、あの塔の近くに行ったら、何とかして降りてやろう)

 

 

鴨の群れが塔の真上を通ったそのとき、オシャラコ善兵衛はエイッと塔のてっぺんめがけて飛び降りました。

さて、お寺の塔には降りてみたものの、そこから下には飛び降りることができません。

オシャラコ善兵衛は塔の下にむかって大声で叫びました。

「誰かいないか。助けてくれ、助けてくれ―」

 

 

塔の下では、お寺の小僧たちが庭を掃(は)いていたが、なかなか声が届きません。

オシャラコ善兵衛は、一層声を張り上げて叫びました。

「誰かいないか。助けてくれ—。助けてくれ—」

「おや、どこからか声が聞こえるぞ」

ようやく、小僧の一人にその声が届きました。

小僧はあたりを見回したが、まさか高い塔のてっぺんに人がいるとは思わないから、なかなか、みつけられません

「ここだ。ここだ。塔の上にいるぞー」

小僧は、高い塔の上に、豆粒ほどに見える人がいたのを見てびっくりしました。

「大変だ。和尚(おしょう)さん、和尚さん」

あわてて和尚さんに知らせました。

 

 

和尚さんが、高い塔を見上げると、なるほど、塔の上に人がしがみついています。

「さて、助けてくれと言われても、どうしたらいいものやら」

和尚さんは、あれこれと考えました。

やがて、お寺にいる小僧たちみんな集めると、

「布団を持ってきなさい。その布団の端をお前たちが持って、そこに飛び降りてもらおう」

と言いました。

小僧たちは言われたとおりに布団を持ってくると、それを広げて四人の小僧が、それぞれ端を持ちました。

用意ができると、和尚さんは、オシャラコ善兵衛にむかって叫びました。

「おーい、おーい、聞こえるか。この布団の上に飛び降りろ。ここの布団の上に、飛び降りるんだ」

けれど、いくら下に布団があっても、目もくらむような高さから飛び降りなくってはならないから、恐ろしい。

オシャラコ善兵衛は勇気を振り絞って言いました。

「そんなら、飛び降りるぞ。用意はいいか。エエイ」

四人の小僧は、布団の端を確り握って足を踏ん張りました。

オシャラコ善兵衛が飛び降りたそのとき、布団にドシンと落ちた勢いで四人の小僧の頭がゴッンとぶつかり、パッと火花が散りました。

その火花の火が、オシャラコ善兵衛の頭に燃え移ったからたまりません。

頭はまるで火事のように、ボウボウと燃え出しました。

そのとき、カア、カアと鳴きながら空を飛んできたカラスが、ポトンと柿の種を一粒、オシャラコ善兵衛の頭に落としました。

頭の火は消えたが、しばらくするとオシャラコ善兵衛はだんだん頭が重くなってきました。

「どうして頭が重いのかな」

不思議に思って、頭に手をやると、何と頭の上に柿の木が生えていりのではないですか。

 

 

そのうちに柿の木には実がなりました。

オシャラコ善兵衛は、それから毎日、

「柿はいらんかな。柿はいらんかな」

と売って歩きました。

オシャラコ善兵衛の柿はとてもうまいと評判になったので、たんまりお金儲けができました。

けれども、しばらくすると大嵐が吹いてオシャラコ善兵衛の頭に生えていた柿の木は、根こそぎドドッと倒されて吹っ飛んでしまいました。

それからまたしばらくすると、柿の木が飛ばされて後の大きな窪(くぼ)みに雨水が溜まって池ができました。

 

 

そこに手を穴(つ)っ込んでみると、池の中にはたくさんの魚がいました。

それからというもの、オシャラコ善兵衛は毎日、

「魚はいらんかな。生きのいい生きた魚だよ」

と魚を売って歩いて、またたくさんのお金を儲けたそうです。

 

《 私の 感想 》

 

一度に、たくさんの鴨をかかる方法を考えて縄にかかった鴨を集めていたら朝になり鴨たちがi一斉に飛び立ちます。

オシャラコ善兵衛は、鴨の足につけた縄の端を自分の腹に巻き付けておいたので、空中に空高く舞い上がりさまざまな出来事がおきます。

私の感じたことは、余り欲張らずにほどほどにということだと思います。

とても面白い物語です。