「宮部みゆき」という作家は、時代劇・怪奇小説だが、「宮部みゆき」の作家は力量が凄い!
 

箱根湯湯治の旅を終えた帰途、小間物商の伊勢屋の若夫婦、入り婿佐一郎とお志津は「戸塚宿」で雨に降られて足止めに合う。

我が儘な妻、お志津に頭の上がらない入り婿、佐一郎は宿のおかみから同じく足止めを食った、老女・お松との相部屋を頼まれるが、我がまま放題に育てられた、お志津はふてくされて全くみとめない。
入り婿の佐一郎が何とかお志津をなだめて、老女・お松との相部屋を共にする事になった。
わがまま放題に育った、お志津は老女お松に、何かと酷く当たるが、入り婿の佐一郎は心を砕いて気を遣う。

 

老女・お松は、この夜、風の音に混じってすすり泣いている声を、入り婿の佐一郎が気が付く。

老女・お松は増井屋の隠居と名乗り、入り婿の佐一郎に50年前の忌まわしい出来事を語りだした。

 

土地の言葉で【ばんば憑き】と申します。

「(ばんば)というのは、強い恨みの念を抱いた亡者のことでございます・・・・・・」
 

魂を入れ替える事が出来る【ばんば憑き】の手順は,とても怖く私は悪寒が体中走った。

又、《死者を甦る≫こんな事があり得るのだろうか、老女・お松の身に起きた。

老女・お松が、支えていた商家の娘、八重という女性が夫に横恋慕するお由により殺されてしまう。
 

【ばんば憑き】とは、地方の異様な風習と江戸時代は外部からは隔絶され、その中でしか生きられないという過酷の運命もあると思う。

小さな世界に閉じ込められ、現実的ではない出来事。
それ、事態も怖いが、それを知る事も怖い。

もっとも、怖いのは「人間が一番怖い」と思ってしまった。

 

老女・お松は、八重だったのかお由だったのか?
ことの真相・事実は何だったのか?
何もかも,入り婿佐一郎の憶測で終わっているので、読み手の私の方は、背筋がゾクゾクくするほど怖く想像も果てしなく広がってしまう。

何よりも、入り婿佐一郎が今までお志津を愛し、とても気の付く優しい夫だったのが、老女・お松の話を聞くうちに、徐々にお志津を見る目が違ってきた事と、入り婿の佐一郎の心の変化と入り婿佐一郎の本心に驚かせられた。

 

お志津は人も羨む美人で器量良しで、遣りたい放題、入り婿佐一郎を見下したり、付け上がったりし好き気ままに生きてるが、いつかは入り婿佐一郎に【ばんば憑き】をされるような気がしてくる。