2019年6月某日深夜、

私は医大の婦人科で内診を受けていました。

 


「器具が入りますね。力抜いて下さいね」


落ち着いた口調の男性医師に従い、

静かに深呼吸した。

(両手はもちろん神様お願いポーズ)




…………………………………………。

先生、無言。

ひらすら無言。

どこまでも無言。

あれ、これってデジャヴ??

婦人科の先生ってみんな無言なの?

婦人科学会で定められてるの?



なんて不審がってたら、

カーテンの向こうから先程の看護師さんがひょこっと顔を出した。

(神様お願いポーズ見られた……………)


「お名前教えてもらえますか?」

「あ、はい。晴日です」

「晴日さんですね、わかりました」


言ったかと思うと、すぐにカーテンの向こうへ姿を消した。



静まり返る診察室。

誰の声も、何の音もしない。



私は独り、内診椅子に座ったまま……………




って、あれー???!!


本当に誰もいないの?!!

なんかカーテンの向こうも人の気配無い?

私、こんな格好(恥)で放置?

いや、いくら誰もいないとはいえ何の罰ゲームですか?



ってか先生、どこにいるのー?!




もしかしたらカーテン越しに看護師さんがいたのかもしれないけれど、

余りにも長い沈黙で、

混乱と同時にちょっと笑えた。



そしてほんの数分後、(体感的には数十分だったけど)ようやく人の気配がして、

「じゃ、止血しますね」

と先生の声がして、

膣にガーゼを詰められて診察が終わった。


さっきの沈黙はなかったかのように。

この時も、私は医師から何も言われませんでした。
















実は。


私が内診を受けていた時、

遅れて到着した旦那が病室に通されたのだ。


その知らせを受けた先生が、

私をほっぽらかして(言い方悪っ)

旦那の元へ行ったんでした。


↓以下、旦那と先生の話。



救急車に遅れて到着した旦那は、

個室に通されて、

私の手荷物と一緒に診察が終わるのを待っていた。


すると男性医師が病室に入って来た。

先程の電話の相手と声が同じだった。


「晴日さんの旦那さんですね。

今、奥さんの診察をしているのですが、

子宮の入り口に腫瘍が見つかりました。

おそらく悪性だと思われます」

 


静かに、しかし淡々と、先生が告知した。



そう、私のガン告知は、

患者である私本人ではなく、

家族である旦那が最初なんでした。



辛かっただろうな……って未だに思う。



先生は、

すぐに手術が必要になる事、

そのためには患者本人の同意書が必要になるから、

今本人(私)に告知をしていいか確認したいと話したそうだ。



それを聞いた旦那の答えは、

聞いてびっくり

「やめてください」だった。



旦那の言い分としては、

今、本人(私)はいつもと違う出血でだいぶパニックになっている。

そこにガンの告知をしたら、更に取り乱してしまうと思う。

どうせいつ告知しても状況が一緒なら、

まず止血して、症状を落ち着かせて、

それからゆっくり説明してやって欲しい。

手術の同意書がすぐ必要なら自分が代わりに書くから。

との事でした。



気後れる事なくお医者さんに意見した旦那も旦那だけれど、

それを受け入れてくれた先生の懐の深さにも敬意があふれました。



私は自分がガン患者だとわかるまで、

色んな人に守られてきたんだと思う。

クリニックの先生も何も言わなかった。

医大の先生も何も言わなかった。


あと私が愚鈍だったのもあるかしら。




しかもこの時点ではまだ病名すらわかってないからね私。

止血しただけだからね。



私本人への

告知まではもう少し先の話なんでした。