6年前の畑荒し事件に関する渡直人の感情や態度、そしてこの件に関しての館花紗月への対応はなかなか複雑です。彼自身がこれをどう自分の中で処理すればいいのか、未だに戸惑っている感すらあります。

今回は畑荒しに関する渡直人の言動について検証し、彼がどう考えているのか?何故、畑荒しに関して館花紗月に酷とも言える対応をするのかについて考察したいと思います。



↓↓リンク先↓↓

「渡くんの××が崩壊寸前」作品紹介

考察項目・計画


畑荒しに関する言動の推移

最初に、畑荒しに関する渡直人の言動について整理してみます。

1巻第1話において、下校時に後をつけ、執拗に呼び掛ける館花紗月に対し、怒ったような表情で「何だよ、畑荒し」と答える。

「1」の後、後をつけてたとかの話をし、「6年前、うちの畑荒らしたこと、オレはまだ許してねーから」と言い、顔を背ける。

「2」の後、構ってくれないことに抗議する館花紗月に対し、「でもお前、最後は裏切ったじゃん」と背中を向けて言う。

渡家に館花紗月が現れ、鍬を持って近づいて来た時に、「出ていけ!!やっと、やっとここで鈴と普通に暮らせそうなんだよ。お前にそう簡単に壊されてたまるか!!」、「おまえがオレになんの恨みがあるのかしらないけど」と言う。

1巻第2話において、屋上で館花紗月から「気が済むまで殴ってみる?いいよ」と怒ったような態度で言われたので弱気になって「そそういうんじゃなくて、オレはただ、なんであんなことしたのか理由が知りたいだけで」とゴニョゴニョと言う。

下校時に館花紗月に助けてもらい、彼女のことを思い出した渡鈴白に、館花紗月のことを「ウチの畑メチャクチャにした、オレらの天敵」と言う。

1巻第3話において、ホームセンターから帰った渡直人に対し、館花紗月が「直くん、お帰り」と言われた時に昔の彼女を思い出しビックリする。

また、館花紗月から「私も直くんとデートしたいな」と言われ、一瞬ハッとするものの、気を取り直し、「危ない  妙な感傷に引きずられるところだった。そうだ、紗月に何言われても何されても絶対踊らされるものか。もう二度とあんな思いはごめんだ」と心に誓う。

1巻第3話において、渡家の庭の雑草を館花紗月が始末してくれたことに対し、「本当にちゃんと手伝う気なのか?」、「でもこいつは畑荒しで」とモヤモヤとした気持ちになりつつお礼を言おうとする。

1巻第5話において、「正直、畑に関しては、紗月がいてくれてすごく助かっている。元農家の娘っていうのは本当みたいだ。」、「でも、元畑荒しであるやつと一緒に畑作りって」とモヤモヤする。

10 2巻第6話での電車の中で話している時、館花紗月の「直くんのことよく見て、直くんが困ってたら助けてあげる」という台詞に対し、「それって罪滅ぼしのつもりかよ?」と何故か焦りながら聞き返す。

11 3巻第3話において、昔はもっと積極的だったと言う館花紗月に対して「勘違い拗らせて痛い目見んのは、もう懲り懲りなんだよ」と答える。

12 3巻第6話において、「直くんは自分が勝手に勘違いして、私に裏切られたと思ってるみたいだけど、あの時先に期待させたのはどっち」と館花紗月から言われる。

13 4巻第1話において、畑荒しの前日に逃避行ごっこをしたことを思い出す。

14 4巻第2話において、館花紗月がキスの話の時、落ち込んだ様子で「私のこと、ずっとイヤなやつだと思ってるのに」「ずっと」と言ったことに対し、ハッとして「お前 誤解してるよ」「6年前、お前が家の畑を荒らしたこと、オレは別に怒ってない」「実際、うちの家族だって誰も怒ってなかった。紗月にも何か理由があるんだって」「オレがむかついたのは、つーか納得いかなかったのは、お前があの後いきなり消えたことのほうだよ。」「突然お前に会えなくなったことのほうが嫌だった」と言う。

(告白みたいなノリだけど本人はそう思ってない)

館花紗月が驚き、そして「なんだ、そっちか」と言ったところ、渡直人は顔を赤らめながら「なんだってなんだよ!当時は子供心に結構なダメージだったんだよ」「この6年間、ずっと喉の小骨が引っかかってるような感じで」「オレに原因があるのかもしれないけど」と言う。


考察

渡直人は畑荒しのことを問題にしている訳でなく、6年前、館花紗月にいきなり振られたことに傷つき、怒りを感じ、そしてもうこんな辛い思いはしたくないと館花紗月を警戒しているんだと思います。彼の気持ち的には、「畑荒し事件」と言うよりも「ある日突然初恋の相手・館花紗月に振られて立ち去られた事件」なのでしょう。

結局、本音は「14」だった訳であり、それまでは単に強がって見せていたということなのでしょう。「5」において、館花紗月に凄まれて急に追求がトーンダウンしてるのも、結局はそれまでの強硬な態度も好意の裏返しであったためでしょう。

例えばですが、仮に「1」において、「何だよ、畑荒し」でなく、「何だよ、いきなりオレを振って居なくなった初恋の人!」みたいに言っても、格好は付かないでしょう。言い方は悪いかも知れませんが、格好付けのために畑荒しに対して怒って見せていたんだと思います。

14」において、いわゆる格好付けスタンスを放棄したのは、3巻ラストからの館花紗月の態度に混乱していたのと、あと目の前で館花紗月が見る影まなく落ち込んでいる様子を見せ、そして渡直人から嫌われてると発言したためでしょう。結局のところ渡直人は館花紗月に好意を抱いているので、目の前で落ち込まれたらフォローしなきゃと例によって焦るのでしょうし、嫌ってもないのにそんな認識を持たれても困ると思ってしまったのでしょう(好意を抱いているのは、この直後のやり取りでモロバレです。館花紗月の誘導尋問に完全に引っかかってます。参照➡︎ 4巻第2話考察)。また、「この6年間、ずっと喉の小骨が引っかかってるような感じで」という発言からも、ずっと振られたことが気になっていた、すなわち彼女への想いを引きずり続けていたことが分かります)。

なお、「オレに原因があるのかもしれないけど」の発言の理由ですが、3巻ラストの館花紗月の「あのとき先に期待させたのはどっち?」の発言が気になってきたのでしょう。顔を赤らめつつ、息も絶え絶え、吐き出すような感じで言っていることから、相当に気になっていたのでしょう。

渡直人が館花紗月に強硬な態度を取っているのは、彼女への警戒心もありますでしょうし、また、突然いなくなってしまった彼女への抗議の意もあるのでしょう。そして、館花紗月をまた好きになってはいけないという彼自身への歯止めでもあると思います。好きになったのに裏切られ、悲しい思いをするくらいなら、最初から好きにならないほうがマシだという考えです。その気持ちは「7」で述べられています。畑荒しに怒っているように見せているのはスタイルに過ぎないのだと思います。

(渡直人の決意、ただし誰も幸せにはなれない)

渡直人は館花紗月を畑荒しをした裏切り者として自分自身に言い聞かせ続けなければならなかったのだと思います。好きにならない努力をしないと、彼女への好意はどんどん膨らみ、それに飲み込まれていくのでしょう。と言うよりも、意識しないだけで本音では好きで好きで仕方ないのでしょう。それを意識しないように努力していると言ったほうが適切なのかもしれません。石原紫との交際自体も結果的には一種のストッパーとなっているのでしょう。

正直、誰も幸せにしない努力だと思います。しかし、彼なりの必然性はあるのでしょう。その考察については次回に譲りたいと思います。


以上、渡直人の畑荒しに関する言動の考察を終わります。


最後まで読んで頂きありがとうございました。