そのあと中部国際空港セントレアへ。 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 日間賀島の散策を行った三日の水曜日。当初漠然と立てていた予定は、日間賀島を散策後、余った時間で半田の赤レンガ館を訪れようというものだった。事前にインターネットで仕入れた情報によれば、精々二時間ほどしか日間賀島では時間を過ごせない。下手すると午前中には散策し尽くして、再び帰りのフェリーに乗ることになる。それだと時間が随分まだ余ってしまう。その際もう一つの行き先として予定していたのが赤レンガ館だった。元々は明治時代のビール工場から始まった建物。当時のビールを再現した地ビールを飲むこともできる。ここを訪れて、冷えたビールで散策後の渇いた喉を潤すのも一興か……と。
 しかし思いのほか日間賀島で時間を過ごせてしまった。再び河和港へ戻って来たのが午後三時近く。赤レンガ館は午後五時に閉館してしまう。まだ間に合うことは間に合ったが、これから行くと見学が慌ただしくなるのは確かだ。落ち着いてビールも飲めない。そもそも以前に一度、同じ連れと訪れたことがある場所なので、断念自体はさほど、いや、まったく惜しくない。寧ろメインの日間賀島に予定より長く滞在ならぬ帯刀もとい滞島できたのは喜ばしく嬉しい誤算だった。しかしその後どこか行くに時間が少ない。といって、このまま名古屋へ帰るのは些か物足りない。河和港から河和駅へ向かう道すがら、困ったな、こりゃ中途半端な時間になっちゃったな……と考えあぐねた。その時ふと、隣を歩く連れが飛行機が好きだったことを思い出したのだ。
「これからセントレアでも行く?」
 名鉄の河和駅へ到着する手前で連れに確認した。彼女の方も異存なし。躊躇なく、「行く」と返ってきた。
 という次第で太田川駅で常滑線に乗り換えて中部国際空港セントレアへ。飛行機に乗るあてもないのに単に飛行機の離着陸を展望デッキから見るためだけに空港へ。僕は飛行機の離着陸を見てテンション上がる気質ではないが、連れは本当に好きみたいだ。以前もそこそこ長時間を展望デッキで付き合わされた記憶があるので、ある程度は覚悟していたが、今回も五時過ぎまで付き合わされた。正直、最後の方は少しばかりしんどかった。次から次へ立て続けに離陸する様を見られるならともかく、地上をゆっくり進んでゆく時間が長すぎて、妙にじれったい。気持ちが持て余し気味になってしまう。
 それでも行楽を一日共にした連れが喜んでいる様を見ることが出来て、それはそれで、こちらも幸せな気持ちになれてよかったけれどね。
 最も展望デッキで時間を過ごしている最中、隣で夢中で飛行機を見ているのが、同じ飛行機好きでも『舞いあがれ!』の舞ちゃんだったら……と若干そんなことも思いかけた。しかし僕とて短歌好きながら貴司くんではないので、お互い様である。いかんいかん……と失礼な邪念を慌てて脳裏から拭い去った。
 いずれにせよ、飛行機にさほど興味ない人間にも、徐々に滑走路へ進入していった大型機が、やがて加速をつけて舞い上がる様を眺めるのはたまには良いものだ。離陸するその瞬間の力強さになにがしか感じ取れるものがある。滑走路をあとに飛び去ってゆく姿には当て所ない寂寥も湧く。見ていると生の実感も舞い上がるのだ。
 沖縄の物産展が行われていたイベントプラザを覗けたのも楽しかった。物珍しさも手伝い、あれこれ買いたくなったが、日間賀島でそこそこ散財していたので、ここでは我慢。自分用にちんすこう一つ購入して切り上げた。お金を預けてある投資信託、および積み立て中の投資信託の含み益がもっとあがってくれていたら、少しは贅沢する余裕も生まれるのだろうけれどね……と若干の恨めしさを引きずりつつね。
 という次第で五月三日の日間賀島散策はおまけに空港見学も加わって、それなりに充実した一日として終わった。名古屋に戻ってから居酒屋に入り、「お疲れ様!」と締めの乾杯。散策疲れの身に沁み渡るビールも最高に旨かった。これで明後日に待つ仕事に出なくても良いなら尚更良いのに……とは思った。連れにも秘めた我が本音だ。しかし人並みに一日だけでもゴールデンウイーク気分を味わえたことを、とりあえず感謝する。あの頃を思えば、あるいはもっと酷い現状になっていてもおかしくなかったのだから。