日間賀島のゴールデンウイーク散策。 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 あいだの一日月曜日と二日の火曜日も休めた人は九連休の中日に当たるだろうが、暦通りの休みならばゴールデンウイーク初日に当たった三日の水曜日、僕も休日を一日利用して行楽に出かけた。
 仕事柄ゴールデンウイークもへったくれもなくて、たまたま三日と四日の木曜日がシフトで連休に当たっていただけ。一人でどこか出かけるなら平日に勤務明けや公休を利用して出かけた方が、どこも空いていて有り難い。いつも実際そうしている。今回はせっかくのゴールデンウイークに何も予定がなく暇を持て余す連れを憐れんで一日付き合う形となった。先日、東山動植物園で共に過ごした同じ連れ。付き合いも二十年近くになる。既に気を使う必要がない相手なので、共に散策するには打ってつけだ。
 出向いた場所は日間賀島。地元.名古屋から一番近い島でもあるそこは、今までに一度くらいは訪れていても良さそうなものだが、今回これが初めての訪島だ。事前にインターネットで情報を集めたところ、タコとフグの名物以外なにもなく、食事休憩も含めて精々二時間もあれば全て回れてしまう小さな島と紹介されていたので、島以外にもう一つ訪れる予定を立てていたが、結果そっちは行く時間が無くなってしまった。河和港から九時五分発のフェリーに乗り日間賀島に到着したのは九時三十分。帰りは十四時二十分発のフェリーに乗り再び河和港へ戻って来たので、五時間近くは滞在ならぬ帯刀もとい滞島が出来た。スカイタワーとの共通券六百四十円で八時間みっちり過ごしても回りきれなかった先日の東山動植物園のコストパフォーマンスには比ぶべくもないが、あまり期待せず出向いたのが良かったか、案外これが寛いだ楽しい時間を過ごせた。ゴールデンウイーク初日で確かに家族連れやカップルらで賑わってはいたが、京都を筆頭とする人気観光地のように鬱陶しいほど、人、人、人、というわけでもない。寧ろこれくらいの賑わいがあった方が、ゴールデンウイークの観光気分が味わえて、却っていいよねって感じ。天気に恵まれたのも有り難かった。
 島の感想は「タコとフグと海」それに尽きる。しかし名物だけあってそのタコとフグが絶品。今回は串焼きと揚げ物で食べたが、いずれも採れたての魚介の旨みが口いっぱいに広がってゆく。当然、僕は麦酒の摘みとして楽しんだ。海は波の少ない穏やかな海。磯の香りと共に風景に癒される。小さい島ゆえに、あれも見なくちゃここも訪れなくちゃと気持ちが焦ることなく、のんびりまったりとした散策の細部に良さと発見を得られる。ぴーひょろろ……と島の空を旋回するトンビの群れ。防波堤で釣りを楽しむ客。原チャリを主に利用して狭い島を行き交う島民たち。船着場で網を直す爺ちゃんとそれを手伝うマイルドヤンキー風の若い兄ちゃん。基本、漁師を商いとしている島の雰囲気や、島民のいかにも漁師町の男たち女たちといった雰囲気。地元の人間の行きつけの場となっているのであろう、如何にもな佇まいのスナックもあり、見るもの聞くもの何もかも新鮮に時間を過ごせた。朝ドラ舞いあがれ!ばんばの五島の雰囲気や、おかえりモネのモネちゃんの故郷の島をふと思い出し、この風景に重ねもした。予定していたもう一つの場所は既に一度訪れている場所なので特に惜しいとは思わず。最初に立てた計算より長く滞在ならぬ帯刀もとい滞島できたのは嬉しい誤算だった。
 最も日差しは春ではなく既に初夏のそれになっていて、半日の島の散策ですっかり日に焼けた顔が、あとで鏡に確認すれば真っ赤。みっともないことこの上ない顔になってしまったが、これもしばらくしたら黒く馴染んでくるだろう。
 年に一回くらいは海を見にゆくのも良い。やがて自分が還ってゆく場所を確認するために。帰りのフェリーの船内で、そんなこともしみじみ思った。