その面構えが見るも不快だった。
願わくは唾を吐きかけてやりたかった。
お前にささくれ立つ神経が耐え難かった。
二度とその面を見なくても済むように
背後に回って蹴りを入れてやりたかった。
目の前が断崖ならば。
お前がそのまま海の藻屑と消えれば。
実際はだけどお前の顔を日々見なければ。
あろうことか挨拶をして、
あまつさえ笑顔を浮かべねば。
終わりなくこれが続くかと絶望した二十歳の夏。
愛想笑いに卑屈さが滲まぬよう、
お前の前では心を道化に置き換えていた。
自分を取り戻すために
お前との縁が切れた世界で海が見たかった。