目を閉じて、そこにある道。 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 道のある風景ばかり描く画家の絵の数々を見ていた。その道の先にある風景に思いを馳せながら、画家が切り取った風景を、一枚、また一枚、時間を掛けてじっくり眺めていた。道の彼方にいる筈の、まだ出会ったことのない、恐らく、出会うこともない人たちにも思いを馳せた。
 だけど全ての道が何処かに繋がっているとは限らない。僕の歩んで来た道程は、残念ながら袋小路に辿り着いてしまった。
 だから僕はこの袋小路にしゃがみ込んで目を閉じる。そうして、道ばかり描く画家の、その風景を胸中に広げてみる。

 なんだよ。ちゃんと、ここに道があるじゃないか。

 僕は胸中の奥深くへ続く道を歩き始める。傍らでは、袋小路の壁を壊そうと足掻く奴がいる。僕のたった一人の友達だ。

 おい、いつまでもここで足掻いているつもりなら、置いていくぞ……

 僕はたった一人の友にそう告げながら、道を歩いてゆく。お願いだから僕の後ろをついて来てくれ……と願いながら。
 そう、僕はまだ生きていたい。だけど、お前がいなけりゃ生きてゆけないのだ、たった一人の友よ、我が影法師よ。