歌.305 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 今年の桜は例年のようにただ虚けて見惚れているわけにはいかない。世知辛い世間に食い殺されないように気をつけろよ……
 という自戒を込めて一首。

さくらばな咲けども掟きびしくて鳩食(は)むカラスに曇るなかれ空。

 十五年前、結局長く続かず終える事になった職場の近所で見た桜を思い出す。河川敷に見た桜花爛漫な光景はあまりにも美しくて、それ故、世をあげて春を祝う幸せから一人つま弾かれたかのような孤立感ばかりが侘しく身に募り、あの年あの場所で見た桜の切ない美しさは、ある意味とても忘れ難い。
 今年の桜が、そういう悪い意味で忘れ難い美しさとして記憶に結びつかぬよう、出来る限りの事はやる。いま決意できる事は只それだけだ。
 ……そう言えば、おのれが紡いだ幻影に弄ばれるように見た去年の桜も、あれはあれで忘れ難い美しさだったな。