ぬいぐるみになりたい | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 そっか、先生はぬいぐるみが好きなのか。独り暮らしの部屋に十数体のぬいぐるみって、そこそこの数だよな……
 いや、先生が匿名ブログの方の記事でぬいぐるみを話題にしていたのだけれど、いいなぁ、先生に選ばれたぬいぐるみ。小学生の頃に観ていたタイムボカンシリーズのどれかの作品で、『人間やめて何になる?』というコーナーがあって、それに嵌まって以来三十数年、人間やめて何になる?……と夢想まじりに自問自答するのが僕の秘めたる楽しみの一つになっているけれど、今なら惑わず、「先生に選んでもらえるぬいぐるみ!」って答えるね。
 その記事の中では、独立後に利用する事務所に置く猫のぬいぐるみを購入した事が綴られていたけれど、一匹で事務所を守ってもらうのはさみしかろうから、そのうちもう一匹……と綴られていた。それならば是非、僕がぬいぐるみになって選んでもらいたいものだ……と、かなり大真面目にそう思う。
 先生の事務所に置いてもらえるのなら、先輩の、あまり見た目は可愛くないという猫のぬいぐるみとも仲良くやってゆく自信はあるのだけれどな。そして日々颯爽と働く先生の姿を見守りながら歳月を過ごす事が出来たなら、どんなに幸せだろう。
 だけど欲を言えば、やっぱり先生に選ばれた十数体に交って、先生の自宅に置いてもらえたら、もっと幸せだ。先生の一番密度の濃いプライベートを見守りつつ、「行ってきます」「ただいま」と毎日先生に声をかけられて過ごす穏やかで静謐な時間……
 そうして時は流れて、やがて先生が年老いてこの世を去る時が訪れたなら、僕も一緒に先生の棺の中に入れてもらい、共に灰となり、先生と一緒くたになりあの世へと昇天してゆくのだ。
 残り余生が、そんな夢のような毎日として過ぎてゆけば、どんなに素晴らしい事だろう。
 先生の自宅に置いてもらえるのなら、この先もう二度と酒が飲めなくても構わないな。
 そう、願わくば僕は先生に選んでもらえるぬいぐるみになりたい。
 猫バスのぬいぐるみになりたい。