敬愛する先生が、匿名ブログの方で利用しているハンドルネームを使って、小説投稿サイトに自作の小説を発表している。
400字詰め原稿用紙にして15枚ほどの短編小説なのだけれど、いや、さすが先生、とてもよく書けている。
中学卒業間際の少女の、いつも利用する貸レコード屋でばったり出くわした同級生の男子への淡いときめきが主に描かれているのだけれど、原稿用紙15枚分の中で起承転結がしっかり構築されていて、思春期まっただ中の聡明な少女の、群れるのは真っ平だけれど独りはやっぱり少しさみしい……と揺れ動く心模様も巧みに表現されていて、まさに短編のお手本のような出来映え。ラストの落とし処も上手いと思う。特に眉間に皺を寄せて推敲を重ねた印象はなく、手すさびでさらっと書き上げて、これだけのクオリティに仕上げてしまったみたいだ(それが証拠に誤字や脱字が結構散見されるのは、ま、ご愛敬である)。
先生の文章って、今回の小説に限らず、へたに推敲を重ねると逆にその良さが損なわれてしまいそうな、持って生まれた躍動感と瑞々しさが感じられて、内容うんぬん以前に読んでいて凄く心地よい。
この小説も先生のテンポよい文体に乗せられて、途中だれることなく一気に読みきってしまった。~青春のひとコマをライトポップに切り取った佳品だと思う。
だけど時は80年代で雪ふる景色で…って事は、この小説の少女は、札幌で少女時代を過ごされた先生の実像も幾分なりとも反映されているのかな? この小説の少女よりも、先生の方が社交的で友達にも恵まれていたように想像するのだけれど……
それにしても、何だか不思議だな。いや、まさか先生が、こんなにも親しみを感じられる存在になるなんてね。
しかも今更……、
そう、先生が三年間滞在した我が味噌色の街を離れられて、もう二度と会うことも叶わぬ存在になってしまったその後に、まさか、こんなにも逆にその存在が身近に感じられるようになるなんて……
味噌色の街で、高嶺の花よ……と遠くから溜め息まじりに崇め見惚れていた頃の先生の面影も、もちろん自分にとって、とても大切だ。しかし遠くからどころか、既にその姿を見ることも叶わなくなってしまったけれど、ネットを通してその息づかいばかりは身近に、そして親しみをより一層感じられるようになった先生のことも、とても愛しく思える。
小説のなかで取り上げられていたオフコースと大江千里、今度YouTubeでも漁って聴いてみよっと。