映画『毎日かあさん』 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 西原理恵子が漫画の世界に一つのスタイルを呈示した革新者である事は間違いないが、鴨志田穣の存在がなければ、ここまで表現の領域を広げ深める事が出来ていたか、と思う事がある。鴨志田穣にとって西原理恵子が、その魂の遍歴の果てに辿り着いた最後の港に成り得ていたのは間違いないが、西原理恵子にとっても鴨志田穣の強烈なキャラクターが、その仕事に相当活かされた、大切なパートナーだったのだろう。
 西原理恵子を小泉今日子。鴨志田穣を永瀬正敏。……これ、他の俳優のイメージが湧かない位ベストな組み合わせ。元夫婦の共演で話題を呼んだ映画だけれど、元夫婦の距離感と同時に漂う馴れ合いめいた空気感が、極く自然に気怠い日常を醸し出していて、やっぱりいいなぁ西原理恵子と鴨志田穣の関係は…と自然に思わせる出来映えになっていた。
「結局、この人は大きくなっても積み木も積めない駄目な子なのだ。クラスに一人はいた。机の中がゴミクズだらけで、勉強が出来なくて……」
 西原理恵子の鴨志田穣への人物評である。……先生、貴女が僕の日常から消え去ってしまった事に気づいた時、まず真っ先に思い浮かべたのは西原理恵子と鴨志田穣の関係でした。同じく、やはり大きくなっても積み木も積めない駄目なおいらは、願わくば貴女の港に受け入れて貰いたかった。貴女の港に心の故郷を築きたかった。
 鴨志田穣に他人事とは思えぬシンパシーを寄せてしまう僕は、先生、貴女に、僕にとっての西原理恵子のような存在になって貰いたかったのです。