ロベール・アンリコ監督

 

それぞれが夢を追いかけ,そして挫折した人生を持つ男女3人がアフリカの海底に眠る財宝を引き上げます。この財宝をめぐってギャングに襲われます。3人の愛と友情を描いた物お話。

 

 

またフランス映画です。

主な登場人物は3人

マヌー(アランドロン1))はパイロットでインストラクターをやっています。

ローラン(リノ・ヴァンチュラ2))は新型レーシングエンジンの開発を行なっているエンジニアです。

レティシア(ジョアンナ・シムカス)は廃材を使った造形を行なう前衛アーティストです。

 

マヌーは凱旋門を飛行機でくぐり抜ける仕事を請け負いますが,これがガセ。

危険飛行をしたとして免許停止になります。

 

練習でうまくいった時にローランが「これで2500万フランが転がり込む!」と叫んでいました。

1967年の2500万フラン(フランス)は現在の円に換算するといくら?とChatGPTに問いあわせると2500万フランは現在の円換算で35億5000万円らしいです。

ちょっと考えても凱旋門を飛行機でくぐり抜けるだけでこの金額はあり得ないですね。

 

ローランはレーシングカーのエンジン開発に心血を注いでいます。

「6500/minの回転だ」とレティシアに説明していましたが,今や軽自動車でも6500/minは問題なく回ります。

 

ローランはレース用のエンジンを試しますが,不調に終わります

このレース用のバラクラバ(目出し帽)鼻がとがってとても奇っ怪な感じですね。

何のために鼻がこんなに長いの?

 

一方,個展を開いたレティシア

「刺激的だが個性がない」,「ありきたりな美学」,さんざんな評価を受け落ち込みます。

 

 

アクロバット飛行をさらりと行なう熟練のパイロット,新型レーシングエンジンの開発に情熱を燃やすエンジニア,廃材を使った前衛アーティスト

映画前半のこの3人の夢を追いかける姿が気持ちいいです。

失敗して夢が破れても次の冒険に向かうところが若者の特権です。

 

リノ・ヴァンチュラ演じるローランは若者ではなく,老眼鏡を使っているオヤジだってところが,特にいいところです

サムエル・ウルマンの詩を思い出します

年を重ねただけで人は老いない。理想を失うときはじめて老いる。・・・・・・

頭を高く上げ希望の波をとらえるかぎり80歳であろうと人は青春の中にいる。

 

映画後半,彼らが次に目指したところはアフリカ,コンゴ沖に眠るお宝です。

コンゴ動乱3)の際,財産を持って逃げようとした富豪が乗った飛行機が墜落していました。

 

出発の前にドラム缶を叩いて踊るところはちょっとバカバカしいけれど気持ちは分ります。

この踊りはアフリカ,コンゴ沖に行っても続いていましたね。

 

無精ひげの男たち,くびれた腰のレティシア,天使のようです。

 

レティシアが語る夢

海に浮かぶ家を買う。家というより海に囲まれた古い要塞。嵐が来ても平気

 

墜落した飛行機は簡単に見つかってしまいますし,引き上げるところをギャングが見ていたなんて偶然にもほどがあるって感じです。

でもここに時間をかけられても飽きますのでしょうがないですね。

 

飛行機を墜落場所の情報を持ってきた男と4人で財宝を分配します。

俺たちは一緒でいいと言ってマヌーがローランの分け前と自分の分け前をひとくくりにします。

レティシアも無言で,自分の分を混ぜ合わせます。

3人の確かな絆を感じるイイこの場面です。

 

しかしそのあとギャングとの銃撃戦,そしてレティシアの死

潜水服で海に沈んでいく姿,手がマネキンですね,でも美しく撮影されていました

 

レティシアの住んでいた家を見つけて遺産を届けるまでもおもしろかった

ナポレオンが乗ったラクダとか小さな田舎の博物館の案内をしてくれた男の子とか,一見意味のなさそうなこともレティシアの出生にかかわっていると思うと感慨深いものがあります。

 

レティシアが買いたいと言っていた「家というより海に囲まれた古い要塞」もこの町にありました。

Fort Boyard

 

グーーグルマップでも探せました

 

ギャングとのバトルで撃たれたマヌーにかけたローランの言葉

「マヌー,レティシアは言ったぞ。おまえと暮らすって」

それに対してマヌー「この嘘つきめ」

 

夢の代償はあまりにも大きい

死んでいったレティシア,マヌー,そしてひとり残されたローランの胸中を思うと胸が締め付けられます。

 

最後にカメラが螺旋状にローランを撮影してズームアウトしてエンドクレジットに入ります

ここで流れる曲もゆったりしたテーマ曲です

とってもイイ曲です。

作曲者のフランソワ・ド・ルーベは36歳という若さで急逝しています。

 

この映画はこれといった賞を受賞したわけでもなくつまらないという意見も多い作品です。

一方圧倒的に支持する人もいる映画です。

ボクは後者です。何と表現していいか難しいのですが「夢」とか「友情」,「冒険」があふれ出ているPositiveな要素が心の奥底をズンズン刺激してくる感じです。この感じは最初に,とある名画座で見た高校2年の時感じた時と今でも変わっていません。

数あるヨーロッパ映画の中では一番好きな映画かもしれません。

 

 

 

1)  アラン・ドロン

二枚目,美男子の称号を欲しいままにしてきた大スターです。1960~1970年代での人気は絶大で近代映画社の「スクリーン」誌では読者が選ぶスターベストテンでは常に上位にランクインしていました。

 

出世作はもちろん 太陽がいっぱい(1960)です

ルキノ・ヴィスコンティ監督の 若者のすべて(1960),山猫(1963),ジャン・ギャバンと共演した 地下室のメロディー (1963),シシリアン(1969),冒険者たち(1967),さらば友よ(1968)と多くの名作に出演しています。

 

1970年代に入って,ジャン=ポール・ベルモンドと共演した ボルサリーノ(1970),チャールズ・ブロンソン,三船俊郎と共演したレッド・サン(1971),カトリーヌ・ドヌーヴと共演したリスボン特急(1972)などに出演しています。アラン・ドロンのゾロ(1975)は息子のために主演を引き受けたそうです。

 

1968年に自身のボディガードが射殺された事件で容疑者となるといったブラックな歴史もあります。ドロンは幼少の頃,いろんな学校で数回,退学処分となっています。またフランス軍兵士としてインドシナ戦争に参加していますが,4年間の兵役のうち11カ月を刑務所で過ごしたらしいので,素行は芳しいものではなかったようです。

 

2)  リノ・ヴァンチュラ

1950年代から1980年代を含め、フランスで最も愛されたキャラクタースターのひとりです。

8歳で学校を中退し,職を転々としましたがグレコローマンスタイルのレスラーとしてプロのヨーロッパ・チャンピオンになりました。しかし怪我のため,やめています。首が太くがっちりした体型はこの時培われたものでしょう

 

現金に手を出すな(1954)の監督,ジャック・ベッカーがギャング役を探している時,主演のジャン・ギャバンのサポート役として初めての演技指導をしたそうです。ギャバンがヴァンチュラを気に入り俳優になることを勧めています。その後もギャバンと共演しギャングの役を数多く演じました。

軽妙なコメディーとダークエッジなドラマの両方に精通し,フランス映画の古典とされる数多くの作品に出演しています。

 

手塚治虫のキャラクターにひとりである丸首ブーンはリノ・ヴァンチュラをモデルにしたと言われています

 

雰囲気はすごく似ていると思います。

 

 

ついでに手塚治虫のキャラ,スカンク草井はリチャード・ウィドマークがモデルといううわさです

こっちは似てないかなぁ

 

3)  コンゴ動乱

もともとコンゴはコンゴ王国として現地人が統轄する国家でした。

15世紀にポルトガル人が来航するようになり国交が結ばれました。

しかし16世紀,奴隷貿易が始まり,いつの間にかポルトガルの属国に成り下がりました。

その後,フランス,ポルトガル,ベルギーによってコンゴ王国は分割されました。このうち南部のカタンガ地方(シャバ州)では銅やコバルト,ダイヤモンドなどの資源が豊富な地域です

この地域で起こったベルギーからの独立運動がコンゴ動乱です。

この映画で財産を持って逃げようとしたのもベルギー人でした。持っていた財宝はダイヤなんでしょうね。