ビリー・ワイルダー1)監督

 

「アパートの鍵貸します」とのつながりはビリー・ワイルダーとジャック・レモンですね

 

 

ギャング達の虐殺を目撃したため追われる2人のバンドマンが女装して女性の楽団に紛れ込みます。そこで出会った楽団の一員に恋をしてしまい,騒動を起こすコメディ映画

 

 

 

 

冬のシカゴ。禁酒時代の1929年

ギャング,通称スパッツが開設している酒場(この時代は違法)が警察に踏み込まれます。

それをチクった男がガレージでスパッツ一家に蜂の巣にされます。

そこにたまたま居合わせたのが主人公の二人。


シカゴを離れるために,女装してサックス奏者ジョー(トニー・カーティス)がジョセフィン,ベース奏者ジェリー(ジャック・レモン)がダフネとして女性楽団に紛れ込みフロリダに向かいます。その楽団の女性歌手がシュガー(マリリン・モンロー2))です。

 

 

 

フロリダへの交通手段は鉄道。ここでの寝台車のくだりが笑わせてくれます。

ジャック・レモンがすばらしい

 

 

フロリダでジョーはシェル石油の御曹司と偽りシュガーをモノにしようとします。

一方ダフネは本物の大富豪(ジョー・E・ブラウン)から求婚されます。

 

ホテルのステージで歌うシュガーことマリリン・モンロー。イイですねぇ

 

 

 

 

なんと言ってもジャック・レモンの演じたダフネは抱腹絶倒です。

この映画,アカデミー監督賞(ビリー・ワイルダー),脚色賞(ビリー・ワイルダー,I・A・L・ダイアモンド),撮影賞(チャールズ・ラング)とともに主演男優賞(ジャック・レモン)がノミネートされています。受賞は衣装デザイン賞白黒部門(オリー・ケリー)のみでした。受賞はこれだけなのかと思いましたが,この年の対抗馬は ベン・ハー(1959)だったのでしょうがないかな。

前のブログ「アパートの鍵貸します」で紹介したとおり,ジャック・レモンはセイブ・ザ・タイガー(1973)でアカデミー主演男優賞を受賞していますが,一番の代表作はこの「お熱いのがお好き」であると個人的には思っています。

 

この映画,最初のリリース時,カンザス州では「女装はカンザス人にとって問題」であるとして映画上映が禁止されました。

1950年代はアメリカではマッカーシズムの嵐が吹き荒れ,LGBTQ3),性的マイノリティの人々とって非常に厳しい時代でした。ほとんどの州でまだソドミー法4) が残っており,ゲイバーは日常的に警察の手入れの対象でした。女装した男はゲイとみなされ逮捕されることも少なくありませんでした。

 

ラストシーン,富豪じいさんの “Well, Nobody’s perfect”

これは当時の感覚ではLGBTQとは関係なかったのかもしれませんが,今,そういう目で見てみると意味深な発言ですね。確かに完全な人間はいませんし,愛情に関しては男女というカテゴリーは意味はないのかもしれません。

ダフネも楽しいかもしれませんが僕はシュガーがいいです

 

 

1)   ビリー・ワイルダー

コメディが得意な監督ですが,失われた週末(1945),サンセット大通り(1950)などのシリアスな作品も多く,前者ではアカデミー賞作品賞,監督賞,脚色賞を受賞しています。AFIが選ぶ最も偉大な映画100本(2007)のうち以下の映画を監督しています

 16位,サンセット大通り(1950)

 22位,お熱いのがお好き(1959)

 29位,深夜の告白(1944)

 80位,アパートの鍵貸します(1960)

 

ワイルダーはユダヤ系で母や祖母はホロコーストで亡くなっています。シンドラーのリスト(1993)の監督候補の一人でしたが高齢のため断念し,脚本でスティーブン・スピルバーグに協力したようです。スピルバーグにこの映画を監督するように勧めたと言われています。

 

 

2)  マリリン・モンロー

AFIで選ぶ映画スターベスト100(男女50人ずつ伝説の50人という感じ)で女優の部で6位に入っています。

マリリン・モンローを一言で表現するなら「エロかわいい」でしょう。20世紀最大のセックスシンボルで,いろんな逸話が残されています。

雑誌「プレーボーイ」の創刊号のセンターフォールド(中綴じ)は彼女のヌード写真でした。もともと50ドルの報酬でカレンダーに匿名として掲載されたものですが,「プレーボーイ」誌の発行人のヒュー・へフナーが500ドルで使用権を買い取り,その後雑誌は何万ドルも売り上げたようです。モンローの収入は最初の50ドルだけです。

ナイアガラ(1953),紳士は金髪がお好き(1953),百万長者と結婚する方法(1953),帰らざる河(1954),ショウほど素敵な商売はない(1954)に出演し,七年目の浮気(1955)ではビリー・ワイルダー監督と組んでいます。この映画もおもしろかったです。地下鉄の風が吹き上がるスカートがめくり上がる有名なシーンは,ロケで何度も撮影されましたが結局,スタジオでやり直したようです。また「七年目の浮気」撮影の時,うつ状態にあり,セリフを忘れたりしたため何度ものテイクを重ねといわれています。「お熱いのがお好き」でも度重なる遅刻や問題行動があったようでかなりビリー・ワイルダーの怒りを買ったようです。撮影終了後,キャストらを自宅に招いていわゆる打ち上げの食事会を開きましたが彼女にはお呼びがかかりませんでした。

でもこの映画はマリリン・モンローがあっての映画でしょう。

 

 

3)  LGBTQ

Lesbian(女性同性愛者),Gay(男性同性愛者),Bisexual(両性愛者),Transgender(性の自認が戸籍上の性別とは異なる人), Questioning(自らの性のあり方について定の枠に属さない人またはわからない人)の頭文字をとった言葉で性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称です

LGBT理解増進法(性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律)も国会に提出される見とおしになったようです

 

 

4)  ソドミー法

特定の性行為を性犯罪とする法律ですが,具体的な性行為には触れられていません。「自然に反する」と見なされる性行動を指すとされています。旧約聖書に記載されている「不自然な肉の欲」によって罰されたソドムが語源になっています

同性愛行為が主に「自然に反する」行為とされていますが,現在では成人間の合意のもとでの規制は多くは撤廃されています。ただ,イスラム教国ではイスラム法の規定によるソドミー罪があり,現在でも死罪になる国もあるようです。