スティーヴン・スピルバーグ監督
「007/ロシアより愛をこめて」とのつながりはショーン・コネリー1)そしてベニス
インディ・ジョーンズ シリーズはジョージ・ルーカスが原案を作り出しました。
ルーカスは製作には関わってはいますが,監督はスピルバーグが行なっています。
インディアナ・ジョーンズ,通称インディは考古学者ですが,遺跡や秘宝を巡って数々の冒険をしていきます。
レイダース/失われたアーク《聖櫃》(1981)
インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説(1984)
インディ・ジョーンズ/最後の聖戦(1989)
インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国(2008年)
インディ・ジョーンズと運命のダイヤル が2023/06に公開予定になっています。
この映画「最後の聖戦」は3作目で少年時代のインディ・ジョーンズ(リヴァー・フェニックス)が洞窟探検を行なうシーンから始まります。舞台は1912年のユタ州
盗掘している輩からコロナドの十字架を取り返し保安官に届けますが保安官はグルでした。保安官は白服の男に十字架を渡します。
盗掘集団のリーダーからおまえの負けだ,Kid。だがめげるなよと言って自分のフェドラハット2)(中折れ帽)をインディに被せます。これが後のインディのフェドラハット姿につながります。
ついでに十字架を取り戻す過程のムチでライオンを撃退したことからムチ使いになったようです。
次の画面は26年後の1938年,ポルトガル沖の船の中。成長したインディは因縁深い白服の男から十字架を取り戻します。
場面変わって大学での考古学の講義。インディが講義しています。
考古学が求めるものは FACT(事実)であって TRUE(真実)ではない
失われた都市とか埋もれた宝は存在しない
地図のX印を掘って宝が出たためしはない
考古学の研究の場は7割がた図書館,文献を読み,調べる
このセリフが後々蘇ってきます
ドノヴァン(ジュリアン・グローヴァー3))という人物にアンカラ北の鉱山から発掘された石板の一部を見せられ,そこにはHoly Grail (聖杯)4)のありかが記載されていました。
この伝説の杯に関する謎解きはインディの父ヘンリー・ジョーンズ(ショーン・コネリー)がライフワークとしている分野でした。
調査隊長が行方不明であり,それがインディの父だと言われ,父を救うべく,Holy Grailを探す冒険に出かけます
ベニスで美人のシュナイダー博士(アリソン・ドゥーディ)と合流
インディの父が残したメモを見て,図書館でローマ数字のⅢ,Ⅶ,Ⅹを探します
床にデザインされたXを見つけ,講義では地図のX印を掘って宝が出たためしはないと言っていたインディはここから地下道に入ります
墓の埋葬された盾に石版と同じ文字が記載されており,そこから目的地がアレクサンドレッタだと知ります。
目的地に行く前に監禁されているヘンリーを助けるべくザルツブルグの城に行きます。そこはナチの基地になっていました。
親子の再会。父 ” Junior”「ジュニア」,子 ”Don't call me junior”「ジュニアはやめてください」この会話の訳は最後にわかります。
一度は捕まり,二人とも始末されるところでしたが,バイクで逃げ,手帳を取り戻すためベルリンへと向かいます。
何とか手帳を取り戻し,飛行船ヒンデンブルグに装着された複葉機で脱出します。
インディは飛行機を飛ばすことはできても着陸させることはできないと言っていましたが,ハリソン・フォードは実生活でも飛行機を操縦しますが2度の墜落事故を起こしているようです。
その後,戦車の攻撃を凌いで目的地に着き,3つの試練をクリアしてHoly Grail (聖杯)を手に入れます。
インディ・ジョーンズは超人的な働きをして,何でも間一髪のところで危険をすり抜けます。
最後に「ジュニア」「ジュニアはやめてください」の会話
彼らの協力者サラー(ジョン・リス=デイヴィス)が「何でジュニア?」と聞くとヘンリーは「ジュニアとはインディの本名,ヘンリー・ジョーンズ・ジュニア」,そして「インディアナは飼っていた犬の名前」と答えます。
そしていつものテーマ曲に乗って馬で夕日に向かって行きます。
ジョージ・ルーカスが以前,飼っていた犬が実際にインディアナという名前で,犬種はアラスカンマラミュートでした。
ちなみにルーカスの奥さんが運転する車の助手席に乗っている犬のインディアナを見て「スター・ウォーズ」のチューバッカを思いついたそうです。
スピルバーグは007シリーズの生涯のファンです。本当は007シリーズの監督をやってみたいと思っていました。若い頃,007シリーズのプロデューサーだったアルバート・R・ブロッコリに監督したいと売り込んだようですが断られています。
いろいろなところに007を意識したシーンが見てとれます。この映画ではショーン・コネリーをインディの父ヘンリー役に選んだのも007を意識してのことだと思います。
図書館の床を壊して入った地下道のネズミの大群は「007/ロシアより愛をこめて」でロシア大使館から脱出するシーンを思い出させます。これを知っていると「オヤジはネズミが嫌い」だというセリフにも笑いがこみ上げます。
そのあとのモーターボートでの追跡シーンや複葉機で逃げたあとドイツ機に攻撃されるところも「007/ロシアより愛をこめて」へのオマージュだと思います。
出演者も007に出ている役者が多く,エルザ・シュナイダー博士を演じたアリソン・ドゥーディは007/美しき獲物たち(1985)に出演していますし,サラー役のジョン・リス=デイヴィスもリビング・デイライツ(1987)に出演していました。
そもそも友人のジョージ・ルーカスに007のような映画を作りたいといったらこんな冒険劇はどうだということからこのシリーズは始まったと聞いています。
「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」の公開が楽しみです。でも監督はスピルバーグではなく,LOGAN/ローガン(2017),フォードvsフェラーリ(2019)を監督したジェームズ・マンゴールドです。
1) ショーン・コネリー
やはり007シリ-ズ第一作,007は殺しの番号/ドクターノオ(1962)が出世作でしょう。
その後,ロシアより愛をこめて(1963),ゴールドフィンガー(1964),サンダーボール作戦(1965),007は二度死ぬ(1967),ダイヤモンドは永遠に(1971)とボンド役を務めます。
型にはめられることを嫌い,ボンド役はこれで一旦卒業し,未来惑星ザルドス(1974),オリエント急行殺人事件(1974),風とライオン(1975),ロビンとマリアン(1976),遠すぎた橋(1977)などに出演しましたが,ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)で再度ボンド役に復帰しています。
ジャン=ジャック・アノー監督の 薔薇の名前(1986)もいい映画でした。
ブライアン・デ・パルマ監督,ケビン・コスナー主演の アンタッチャブル(1987)ではアカデミー賞助演男優賞を受賞しています。
「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」後,ファミリー・ビジネス(1989),レッド・オクトーバーを追え(1990),ロビン・フッド(1991),に出演し,ザ・ロック(1996),エントラップメント(1999),小説家を見つけたら(2000)では製作も兼任しています。
2006年,AFIの生涯功労賞を受賞しました。
2) フェドラハット
中折れ帽を「FEDORA」と呼びます。1889年にアメリカで上演された演劇「FEDORA」で主人公フェドーラ役の女優サラ・ベルナールがかぶった帽子がこの名の由来です。
劇中でかぶっているものはロンドンの帽子店「ハーバート・ジョンソン」の「ポエット」モデルと呼ばれるものです。
ホームページ(https://herbertjohnson.co.uk/)を見るとINDIANA JONES COLLECTIONのコーナーもあります。
ちなみにハリソン・フォードが履いているブーツはオールデン社のモデル405ワークブーツです。現在も「インディ」ブーツとして宣伝・販売されています。
けっこうイイお値段です。
3) ジュリアン・グローヴァー
スター・ウォーズ/帝国の逆襲(1980)に帝国側の将軍の役で出演していました。
そしてロジャー・ムーアがボンドを演じた 007/ユア・アイズ・オンリー(1981)にも出演しています。
スター・ウォーズ,007,インディ・ジョーンズのシリーズすべてに出演した唯一の俳優です。しかもすべて悪役です。
ロジャー・ムーアが最初にボンド役を演じた007/死ぬのは奴らだ(1973)ではボンド役として候補にも挙がっていました。
4) Holy Grail (聖杯)
イエス・キリストが最後の晩餐のとき使った杯であり,アリマタヤのヨセフが十字架上でイエスの血を受けたものだとされています。
中世を舞台にしたアーサー王物語でも円卓に騎士がこれを探す物語があります。
アーサー王物語はいくつもの映画に取り上げられており,「エクスカリバー」,「キング・アーサー」といった題名の映画も複数あります。僕が一番好きなものはディズニーのアニメ,王様の剣(1963)です。もっともこのアニメにはHoly Grail は出てきません。
聖杯の効能は奇跡的。ゆえに人々は聖杯を探し求めますが容易には見つかりません。
そう言ったものなので,望んでも決して得られない物と言った比喩的な意味合いでも用いられます。