マーティン・スコセッシ1)監督

 

ノンフィクションの「Wiseguy」という本をもとに作られた実際にあったマフィアの物語です。

「フィールド・オブ・ドリームス」とのつながりはレイ・リオッタ2)です

 

1970年,ニューヨークから話は始まります

 

主人公ヘンリー(レイ・リオッタ)が運転している車のトランクに半死状態の男

 

トミー(ジョー・ペシ3))がいきなりナイフで滅多突きし,さらにジミー(ロバート・デ・ニーロ)が銃でとどめをさします

 

そこからトニー・ベネットのRags To Riches (1953)が流れる中,オープニングクレジットが始まり,1955年,ブルックリンに舞台が移ります

ヘンリーは大統領よりもギャングに憧れていました。

地元の顔役ポーリー(ポール・ソルビノ)の下で働き始め,ジミーやトミー達とつるんでタバコの横流しなど犯罪を重ねていきます。

大きなヤマとしてエアーフランスからの強奪で大金をゲットします。

羽振りの良くなったヘンリーは後に結婚するカレンをナイトクラブに連れだします。この時,ボビー・ヴィントンが”Roses are red”を歌う場面がありましたが,演じたのはヴィントンの息子だそうです。口パクをしたとのことです。

 

 

同じマフィアのバッツ(フランク・ヴィンセント)が出所し,同席したトミーをからかいますが,切れたトミーがジミーと2人で殴るけるの暴行を働いて,オープニングの話に戻ります。半死半生だった男はバッツでした。

 

そのあともカードを行なっていた時,注文した酒がこないと言ってバーテンの足を打ち,包帯姿で戻ってきたら,今度は命を奪ってしまうというトミーは恐ろしい人間でサイコパスです。

 

その後,暴力事件で刑務所に入ったヘンリーらはムショの主として,ステーキやオマール海老を料理していました。金を出せば何でも手にはいるって感じでした。

 

強盗事件の指示役とされる「ルフィ」らが拘束されていたフィリピンのビクータン収容所収容所と同じですね。

ビックリです。フィリピンの方がビックリ。

現実世界で50年前と同じことがまかり通っていることにビックリ

 

ポーリーは「ジミーは良く稼ぐが無茶をする,トミーはカッとすると見境なく人を殺す,2人には気をつけろ,そして麻薬には手を出すな」とヘンリーに言います。

よくわかっていますね

そんな助言に逆らってヘンリーは麻薬の取引を行ない,自分も麻薬を使用します。

 

麻薬取引を行ないながら,ルフトハンザからの600万ドル強奪

うまくいきましたが,みんな急に羽振りが良くなり,ばれることが心配になったジミーとトミーは次々に仲間の口封じを行なっていきます

 

生粋のイタリア系のトミーは組織内で幹部になり出世しましたが,バッツを殺った仕返しに最後は頭を打ち抜かれました。この時,手を下した側のヴィニーは刑務所で料理をする時にタマネギを入れすぎると言われていた男ですが,演じているのはスコセッシ監督の父です。

ついでにトミーの母親役はスコセッシ監督の母だそうです。

この一連の殺しの背景に流れる曲は「いとしのレイラ」

 

ヘンリーはその後も麻薬の取引を続けています。

ヘンリーの表情が変わっていくところは麻薬中毒なのでしょう,リアルです。

 

最後にはヘンリーは御用になります

刑務所に入ったら確実に殺されると考えて司法取引を行ない,仲間を裏切ります。

 

 

この映画は2008年,「AFIアメリカ映画100年シリーズ」のギャング映画のジャンルで「ゴッド・ファーザー」の次に選出されていました。しかし,「ゴッド・ファーザー」のようなかっこいいマフィアはいなかったなあ。

現実のマフィアはこの映画のように欲とか猜疑心から簡単に人を殺したり,裏切ったりするんだろうなと思います。

 

この映画はその過激な暴力シーンなどからスタジオ史上最悪の試写会の反応だったと伝えられています。

しかし映画はそのまま公開され,実際には圧倒的な批評家の称賛を受けたようです。

僕がこの映画で一番好きなところは音楽の使い方です。1950年代からいろんなジャンルの音楽が流れていて気持ちよかったです。古い年代の知らない曲もありましたが,サントラ盤に全部はおさまらないくらいの曲数のようです。

マーティン・スコセッシは「映画を撮る3年前から」すべての曲とその配置を考えていたそうです。

 

FBIから追いかけられる時に流れる曲はジョージ・ハリスンのWhat is Life,「美しき人生」(1971)。この曲もいい曲です。日本のヒットチャート All Japan Pop 20では1971年5月で最高位2位でした。この時の1位はポール・マッカートニーの「アナザー・デイ」でした。解散後もビートルズはすごかったですね。

 

エンドクレジットで流れる曲はシド・ヴィシャスの歌う「マイ・ウェイ」

本当はフランク・シナトラの曲を使いたかったようですが,シナトラから許可がおりませんでした。

シナトラはマフィアとつながりがあったと言われており,「ゴッド・ファーザー」でラスベガスに売り込みした歌手のモデルだとも言われています。許可しないでしょうね。

そしてまた「いとしのレイラ」が流れて終了します。

 

 

 

 

 

1)   マーティン・スコセッシ

非常にいい映画をたくさん監督しています。

明日に処刑を…(1972),ミーン・ストリート(1973),アリスの恋(1974)で独自のスタイルを確立し,タクシードライバー(1976),ニューヨーク・ニューヨーク(1977),レイジンブ・ブル(1980),キング・オブ・コメディ(1983),カジノ(1995)でもロバート・デ・ニーロと組んでいます。

21世紀になってからはギャング・オブ・ニューヨーク(2002),アビエーター(2004),ディパーテッド(2006),シャッターアイランド(2009),ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013)とレオナルド・ディカプリオとのコンビを組むことが多いです。

「ディパーテッド」ではアカデミー作品賞と監督賞を受賞しています。

 

マーティン・スコセッシはロック関連の音楽に造詣が深く,ザ・バンドの解散ライブを映画化したラスト・ワルツ(1978)の監督もしています。この映画も強く印象に残っていますし,エンドクレジッドで流れるテーマ曲は美しい

マイケル・ジャクソンのミュージック・クリップ“BAD”の演出も担当しています。

 

2)   レイ・リオッタ

サムシング・ワイルド(1986)と続く「フィールド・オブ・ドリームス」をみたマーティン・スコセッシ監督が「グッドフェローズ」の主役として視野に入れたそうです。

不法侵入(1992),乱気流/タービュランス(1997)では常軌を逸する役柄を熱演。

リドリー・スコット監督のハンニバル(2001)ではレクター(アンソニー・ホプキンス)に見事調理された姿が印象的です。

昨年(2022年)死去しています。

 

2)  ジョー・ペシ

とにかくこの映画でのトミーの切れっぷりは特筆に値します。台本通りに撮影されずにアドリブが多かったようです。すごいです。アカデミー賞助演男優賞受賞に値しますね。

演じられた実際の人物もこんな感じだったと言うことですがひとつだけ違うところは本物は巨漢だったそうです。

 

この映画ではトミーがバッツを殺していますが,カジノ(1995)ではフランク・ヴィンセントが演じるキャラクターがペシのキャラクターを殺しています。

この2人,一時お笑いコンビとして活動していて,実生活での友人です。

この暴力的な男がお笑い?って思うかもしれませんが,「グッドフェローズ」と同じ年に出演したホーム・アローン(1990)での間抜けな泥棒役もこの人です。