ジェームズ・キャメロン監督1)

 

1912年に実際に起こった豪華客船タイタニック号の沈没を描いたスペクタクル映画であり,その乗客だったジャック・ドーソン(レオナルド・ディカプリオ2))とローズ(ケイト・ウィンスレット3)のラブ・ストーリーを描いた映画でもあります。

 

 

「華麗なる賭け」とのつながりはアカデミー賞歌曲賞です。

The Windmills of Your Mind,風のささやき(ノエル・ハリソン)「華麗なる賭け」

My Heart Will Go On,マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン(セリーヌ・ディオン)「タイタニック」

 

本当はフェイ・ダナウェイつながりで違う映画を考えていましたが,タイタニック25周年3Dリマスターを見てきたばかりなのでこの映画につなげました。

 

 

この映画はアカデミー賞作品賞,監督賞を含む11部門を受賞し,ベン・ハー(1959) と並ぶ最多受賞作品です。後にロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(2003) も11部門受賞しました。

ただし演技部門ではだれも受賞していません。主演女優賞(ケイト・ウィンスレット),助演女優賞(キャシ-・ベイツ)のノミネートだけです。ディカプリオはノミネートさえされませんでした。

 

この映画は映画としての完成度が高いだけではなく商業的にも大成功を収めています。

どんどん膨らんでいく制作費にやきもきしながら完成された映画は2億ドルを費やしています。客船タイタニックの実際の製造費は1912年当時で750万ドルでした。1997年のドル換算で約1億2000万ドルから1億5000万ドルに相当になります。豪華客船タイタニック号よりもよりも映画の方が高額な制作費かかったようです。

しかし,大ヒットによりその10倍以上の興行収入があったのではないでしょうか。

今回の25周年3Dリマスター版でもさらなる収入を見込めそうです。映画館混んでいました。

 

 

ジャックがポーカーで最後の勝負でタイタニックの乗船券を手に入れた時,「これで誰かの運命が変わるぞ」と言います。

この時負けたスェーデン人の二人はものすごく悔しがっていましたが沈没船に乗らずにすんだので運命が変わりました。ラッキー

ちなみにこの二人の名前はオラフとスヴェンでアナと雪の女王(2013)の登場人物と同じです。

 

タイタニックの出航,傍らのイルカのジャンプ。

巨大な客船だと言うことがわかります。うまい具合に撮影するものですね。        

 

 

タイタニックの舳先でジャックが "I'm the king of the world!"と叫びます。このセリフはAFIの選ぶ「映画の名言100選」に入っていました。

またジェームズ・キャメロンがアカデミー賞監督賞に選ばれた時のスピーチで "I'm the king of the world!"と叫んでいます。

 

 

この映画ではいいセリフがたくさん出てきます

僕はその中でも次のシーンとセリフが大好きです。

ジャックがディナーに招かれ,ローズの母から「根無し草暮らしに満足なの?」と聞かれ次のように答えます。

 

人生は贈り物,ムダにはしたくない。 I figure life’s gift and I don’t intend on wasting it

どんなカードを配られてもそれも人生。You never know what hand you're gonna get dealt next you'll learn to take life as it comes at you oh you go count to make each day count

毎日を大切に。Make Each Day Count

いいねえ。親ガチャなんてみじんも思っていないこの前向きな姿勢

 

 

レオナルド・ディカプリオはジャックにぴったりの配役ですが,最初はリバー・フェニックスを考えていたようです。リバー・フェニックスが不慮の死を遂げ,ジョニー・デップもオファーされたようですが断ったようです。

 

ほかにもロバート・デ・ニーロはスミス船長役のオファーを受けたようですが,当時胃腸炎をわずらっていたためこの役を断ったみたいです。

船長はバーナード・ヒルになりました。この方は後にロード・オブ・ザ・リングシリーズでローハン国王のセオデンを演じています。

 

ジャックとローズの出逢いはローズの自殺未遂からです。

ローズは上流階級であるブケーター家の家名を守るため(金のため),身売りするような形で母親に結婚を強要されています。

先の人生が見えた。くる日もくる日もパーティ,そしてくだらないおしゃべり,断崖に立たされた気持ち。誰も引き戻してくれない。誰も気づいてくれない。

そうして自殺しようとしました。

 

一方ジャックは15歳の時に両親を亡くし故郷を捨てています。3等船客でしかも賭けで手に入れたチケットでの乗船。

 

破産寸前でも上流階級の令嬢と自由でも社会の底辺で生きている若者が恋に落ちていきます。

 

 

ジャックが持っていたスケッチブックをローズに見せますが,この中にありったけの宝石を身につけ,毎晩,酒場に座ってかえらぬ恋人を待っている,マダム宝石(ビジュー)が紹介されました。

最後にかえらぬジャックを待つローズを暗示している気がしましたが考えすぎでしょうか。

 

そのあと命を救ってもらったことに感謝するシーンは監督の要請で二人の俳優が即興で作ったものだということです。唾を吐くシーンもほとんどアドリブだったようです。

 

一度はジャックとの関わりを絶とうと思ったローズでしたが,上流階級の少女がマナーを躾けられるのを見て,言われるままにしている自分の立場と同じだと思ったのでしょうか,ここから抜け出さなくてはいけないと決心したようです。

 

 

舳先で両腕を広げて "I'm flying" と言う場面は有名ですね。この時の夕焼けはCGではなく本物。これを撮影するために何日も待ち,ようやく撮影されたと言うことです。この場面はロマンティックの極みですね。

 

ジャックが「ジョセフィーン空飛ぶマシーンで僕の所へ」とささやきますが,この時代の流行歌「おいでジョセフィーン,僕の空飛ぶマシーンに乗って」の一節です。

いくつかの未公開シーンの中にも二人でこの歌を歌う場面があったようです。

この歌はタイタニックの沈没後,ローズが空を見上げながら口ずさみます

 

その後,ローズがジャックにデッサンしてもらうシーンで,絵を描いている手はジェームズ・キャメロン監督のものです。でも左利きだったので左で書いて反転して右手に見せています。

絵のタッチもほかの絵とは違っているような気がしましたが描いた人が違うのではないでしょうか

 

 

そしてタイタニックと氷山の衝突からの沈没

 

救命ボートに乗ることを拒否したローズは婚約者のキャルから「あのドブネズミの情婦になるのか」と言われ,「あなたの妻になるよりマシよ」と答え,ジャックから教わったように唾を吐きます。カッコいい。

このシ-ンは台本ではヘアピンで殴るとなっていたのをウィンスレットが提案してこうなったようです。

 

 

大量の水が流れる中での撮影。けが人も多数でたようです。

こういう災害時のパニック映画につきものの自分だけ助かろうとする人間や苦境の中で助け合うヒューマニティーあふれる人物いろいろです。

自分はこんな時,冷静に行動できるかちょっと自信ありません。でも卑怯なことだけはしたくないですね。

 

 

タイタニックが2つに割れて傾くところはすごかったですね。

過酷な撮影スケジュールに加え,怪我人も多かったようでウィンスレットは「またキャメロンと監督と仕事をすることがあるなら出演料を奮発してもらわないと行けないわ」と言ったそうですが,アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022)でまたキャメロン監督の映画に出演しました。

 

 

助かりたいという願望は人の本能なのでしょうがないかもしれませんがボートの席を巡る争いは醜いものでした

 

弦楽四重奏のメンバーやベッドに二人で横たわる老夫婦は潔く感じました。

弦楽四重奏が最後の音楽を奏でる時に子供たちに絵本を読み聞かせる女性はジェニット・ゴールドスタイン4)といってジェームズ・キャメロンの映画に良く出てきます。

 

ジェームズ・キャメロン自身も通行人的な役で出演しているという話でしたがどうしても見つけられません。ヒッチコックのようにわかりやすい出演ではないのでしょう。

 

 

船の沈没後の海に漂いながら死んでいく人たちはなんとも切ないですね。

マーガレット・ブラウン(キャシー・ベイツ)が,ボートの席は空いている,助けに行くべきだと主張しますが誰も同意しません。やるせないなぁ。

 

 

ジャックが息絶え,海に沈んだ後,ローズがあきらめないわと言って弱々しくホイッスルと吹くところは涙が止まりませんでした。

1500人の人間が海に投げ出されて救命ボートで救出されたのはたった6名だったと言っていますが実際には40名以上が救出されたようです。

 

自由の女神の傍らを通りニューヨークに到着し,入国に当たりローズが名前を聞かれた時,ローズ・ドーソンと力強く答えます。ここもグッときます。

 

オールド・ローズが若い時の写真を飾りベッドに横たわっていますが,この写真のローズは釣りをしたり馬にまたがったり上流階級のお嬢様とは違う活動的なものばかりです。ジャックと出会えたからの変貌なのでしょう。

 

 

ラストシーンで深海のタイタニック号からの本物のタイタニックに画面が変わり,亡くなった人たちが迎えてくれる中,階段をのぼった先にはジャックがいます。

手を取り合ってキスシーン。みんなの拍手で終わります。また涙腺崩壊ですね。

この時,階段の踊り場の時計は2:20を指していますがこれは実際に船が沈んだ時間です。

 

 

エンドクレジットではセリーヌ・ディオンのMy Heart Will Go On

完璧です

この曲を聴くだけで泣けてくる時があります。

 

 

1) ジェームズ・キャメロン

ジョージ・ルーカス同様,案外,監督作品は少ないです。

ターミネーター(1984),エイリアン2(1986),アビス(1989),ターミネーター2(1991),トゥルーライズ(1994)の監督後,この映画にたどり着きました。

その後はしばらく監督という仕事から遠ざかっていたと思いきや,アバター(2009)が大ヒットし,この映画はタイタニックの興業収入を超えています。アバター: ウェイ・オブ・ウォーター(2022)やその後の続編も公開予定になっています。

ジェームズ・キャメロンが監督した映画はみな強い女性が描かれています。「ターミネーター」のサラ・コナー,「エイリアン2」のリプリーなどです。「タイタニック」のローズも上流階級のお嬢様だったのが婚約者に唾を吐き,自立していく姿は力強く感じました。

ちなみに「ターミネーター」の主演女優リンダ・ハミルトンと一時結婚していました。

 

2) レオナルド・ディカプリオ

ギルバート・グレイプ(1993)で主人公(ジョニー・デップ)の知的障害のある弟役でいきなりアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。ほかにもロミオ+ジュリエット(1996),仮面の男(1998),ギャング・オブ・ニューヨーク(2002),キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002),ディパーテッド(2006),ワールド・オブ・ライズ(2008)インセプション(2010),華麗なるギャツビー(2013)とコンスタントに映画出演しています。

アビエイター(2004),ブラック・ダイヤモンド(2006),ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013),ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019)でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされており,レヴェナント: 蘇えりし者(2015)でアカデミー賞主演男優賞を受賞しました。「レヴェナント: 蘇えりし者」はきれいな映像が印象的な映画で,ディカプリオ演じる主人公は不死身の体力で生還し題名通りの映画でした。

レオ様と呼ばれ女性にすごく人気があります。

環境保護などの社会活動にも力を入れています。

 

3) ケイト・ウィンスレット

いつか晴れた日に(1995)の次女役でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされています。この映画もかなり良かった。

以来,「タイタニック」,エターナル・サンシャイン(2004)などでの主演女優賞のノミネート歴があります。

愛を読むひと(2008)ではアカデミー賞主演女優賞を受賞しました。この映画は未見なのでコメントは控えます。

 

4) ジェニット・ゴールドスタイン

映画を見ていると「あれ,この俳優は前にも見たことがある」といった俳優に出会います。

この俳優もそうでした。ジェームズ・キャメロンの映画に良く出ています。 

「ターミネーター2」でサラ・コナーの逮捕の後,ジョンを引き取った里親です。殺害され,彼女に変身した新型ターミネーターが刀になった腕で旦那を殺害する役でした。

ここまではわかっていましたが,なんと「エイリアン2」にも出演していました。

 

左から「タイタニック」「ターミネーター2」「エイリアン2」

 

海兵隊で男勝りのバスケス役。銃器を持つところも,エイリアンに襲われゴーマン中尉と一緒に自爆するところもカッコ良かった。全然気づきませんでした。まさかこの俳優が「タイタニック」ではこんな役をやっているとは思いませんでした。