ジョン・スタージェス監督

 

「戦場にかける橋」とのつながりは

①    捕虜収容所を舞台にしていること

②    主題歌のマーチが印象的なこと

③    ジェームズ・ドナルドつながり(「戦場にかける橋」では軍医,この映画では連合軍捕虜の空軍将校)

 

第二次世界大戦下,脱走は極めて困難として作られたドイツの捕虜収容所から集団で脱走する物語

オールスターキャストで撮影されました

 

 

映画の始まり,エルマー・バーンスタイン1)のマーチにのってトラックが進んで行きます

行き先は捕虜収容所

降りてきたのは捕虜の面々。さっそく周囲を点検し始めます

 

 

開始早々,ダニー(チャールズ・ブロンソン2))らはロシアの捕虜に混じって逃げようとして未遂に終わります

 

アメリカ兵ヒルツ大尉(スティーブ・マックイーン)は野球のボールを境界に投げてみて死角があるか確かめます

とがめられて,所長に毒づき,1回目の独房(Cooler)行き

 

バートレット少佐 Big X(リチャード・アッテンボロー3))がゲシュタポ,親衛隊4)に連行され収容所入りします

「Big Xの任務として敵の撹乱に全力を尽くし第三帝国(ドイツ)に大混乱を起こします。そのために大規模脱走をやります」

こう宣言します

 

「脱走して敵軍を混乱させるのは将兵の義務である」というのは捕虜としての理念です

脱走した捕虜を捜索するためには時間と人員を割かねばなりません。敵側の体力を削るという目的です。さっさと処刑すればいいだろうと思いますがジュネーブ条約(「戦場にかける橋」でも再三出てきました)で捕虜の保護が義務付けられています。

こういった点ではゲシュタポ,親衛隊とは違い,ドイツ空軍はまあまあ人道的に捕虜を扱っていると思います。

捕虜の捜索をしなくてすむようにドイツ側としては,腐った卵(札付きの脱走兵)を1つのカゴ(捕虜収容所)に入れて厳重に見張りたいという考えです。

 

さて脱走は綿密な計画立案を行い,得意技を持った曲者たちの連係プレーでことが進んでいきます。

脱走までの準備が本当にすごい

「トム」,「ディック」,「ハリー」と名付けられたトンネルが3つ同時に掘られていきます。

 

まずリーダーのバートレット,収容所の情報を集める情報屋,森までの距離を測定する測量屋,トンネル掘りに使用する道具を作る製造屋セジウィック(ジェームズ・コバーン),トンネル掘りのスペシャリスト ダニー,ドイツ兵を牽制する役,トンネル掘りで出た土を何とかする土処理屋,服を作る仕立屋,身分証明書を作る偽造屋ブライス(ドナルド・プレザンス),それに必要なカメラなどを調達する調達屋などなど

 

それぞれの役割はエンドクレジットで紹介されていました。

デヴィッド・マッカラムが演じたアシュレイは字幕では土処理屋となっていましたが,英語では“Dispersal”でした。

“Dispersal”とは分散とか拡散といった意味で映画を見るとなるほどなぁと思います。

またジェームズ・ガーナー演じるヘンドリーは字幕で調達屋と紹介されていましたが,“The Scrounger”とはおねだりする人,せびる人,はては「たかり屋」という意味です。まさにその通りでした。

 

一方,独自に脱走を試みるヒルツと独房仲間のアイブス

モグラ方式で脱出を試みるも早々に捕まり2回目の独房行き

Big X バートレットに,脱出して近くの街の様子や駅の位置関係などの情報を提供してほしいと依頼されましたが,いったんは断っています。

 

アメリカ独立記念日を祝してアメリカ兵のヒルツ,ヘンドリーらはyankee doodleを演奏しながらイモ焼酎を振る舞います。屋外で皆酒盛りをしている中,空になった屋内でドイツ兵がトンネル「トム」を見つけます。それに悲観したアイブスが鉄条網を超えようとして射殺されます。

ヒルツはそれを目の当たりにし,情報収集のための脱走を決行し,捕まります。そして3回目の独房

 

「ハリー」を掘り続け,脱走が始まります。

思ったより距離が6m足りなくてハラハラドキドキの脱走劇になります

250人脱走の予定が76人になりました。

それぞれ列車だったり,飛行機,自転車,ボートと,バラバラに逃げるのがいいですねぇ

 

 

ヒルツがドイツ兵を蹴飛ばしてバイクで逃げるシーンはやっぱり一番の見所です。マックイーンは絵になります。。

一つ目の柵は越えたけれど捕まってしまい残念でした。

 

脱走に成功した76名のうち50名は途中でゲシュタポに捕獲,処刑され,最終的に逃げおおせたのは3名だけでした。

 

この映画は第二次世界大戦中にドイツ空軍が運営していた捕虜収容所,スタラグ・ルフト III(第三航空兵基幹収容所)で実際に起こった英国の空軍軍人捕虜(航空機搭乗員)の脱走事件をもとに創作されています。実際にはここにアメリカ兵はいなかったようです。

 

最後に捕らえられたヒルツはまた独房に入ります。4回目

それでも壁にボールを投げグラブでキャッチして,またやってやるという不屈の闘志を感じました。

マックイーンに着ているイイ感じに色あせて袖を切ったスエットがカッコいいです。

まねしてみましたが僕が着るととても貧乏くさいのでやめました。

エンドクレジットで紹介されていたヒルツの役割は "The Cooler King" 独房王でした。

 

この映画は劇作家,脚本家,映画監督の三谷幸喜絶賛の映画です。朝日新聞に現在連載中の「三谷幸喜のありふれた生活」にも最初に手に入れたビデオの映画は「大脱走」だったと書いてありました。当時で2万円くらいだったと。高嶺の花ですね

 

 

1)   エルマー・バーンスタイン

十戒 (1956),荒野の七人 (1960),アラバマ物語 (1962),アニマル・ハウス(1978),ゴーストバスターズ (1984)など200以上の映画・テレビで音楽を提供していますが,モダン・ミリー (1967)でアカデミー賞作曲賞を受賞しています。

「大脱走」のマーチは1963年アカデミー賞にはノミネートもされていません。不思議ですねぇ。ちなみにこの年の作曲賞は「トム・ジョーンズの華麗な冒険」ジョン・アディソンでした。聞いたことあります?

 

2)  チャールズ・ブロンソン

最近見たロバート・アルドリッチ監督,ゲーリー・クーパー,バート・ランカスター出演のベラクルス(1954)に脇役で出演していました。

荒野の七人(1960),バルジ大作戦(1965),特攻大作戦(1967)に出演し,ヨーロッパ映画のさらば友よ(1968),雨の訪問者(1970),狼の挽歌(1970),夜の訪問者(1970)などにも出演しています。「さらば友よ」はアラン・ドロンとの共演でこの映画からブロンソンの人気が急上昇したかもしれません。この映画もいい映画です。

 

 

 

 

不細工だが男臭い風貌で日本の男性用化粧品メーカーのCMに出演しました。

「う~ん,マンダム」できめるCMは印象的でした。

CMで使われたジェリー・ウォレスの「男の世界」もヒットし,オールジャパンポップ20では1970/11から第一位を4週連続で獲得しています。

化粧品メーカーも社名を「マンダム」に変更し一躍ブランド化しました。僕もマンダム社のスキンケアアクアクリームを使っています。

ちなみに「う~ん,マンダム」のセリフを考案し,CMを監督したのは,さびしんぼう(1985),青春デンデケデケデ(1992)の監督,故 大林宣彦氏です。

 

3)リチャード・アッテンボロー

ロバート・ワイズ監督の砲艦サンパブロ(1966)ではまたスティーブ・マックィーンと共演しています。そのほか,ドリトル先生不思議な旅(1967)などに出演していましたが,1970年代からは監督業に力を入れています。

遠すぎた橋(1977),コーラスライン(1985)などを監督し,ガンジー(1982)ではアカデミー賞作品賞,監督賞を受賞しています。俳優としてはしばらくぶりでスティーブン・スピルバーグ監督のジュラシック・パーク(1993)に出演しました。

ナイトの称号を受けています。

 

4)親衛隊

親衛隊(Schutzstaffel De-Schutzstaffel.ogg ,通称SS)とは、ドイツの政党,国民社会主義ドイツ労働者党の組織です。

元はヒトラーを護衛する党内組織でしたがヒムラーが指導者に就任し,党内警察組織として勢力を拡大し政府の警察組織と一体化していきました。

ゲシュタポ(Geheime Staatspolizei)はもともとドイツ警察の中にあった秘密警察部門ですが,SS支配下の国家保安本部に組み込まれました。

ナチ支配を維持するため,反ナチ勢力の弾圧,また徹底したユダヤ人迫害など非人道的行為を行ないました。

ジュネーブ条約(捕虜の保護)を守る気はない組織ですね。

 軍服にはSSのワッペン