デヴィッド・リーン1)監督

 

「スター・ウォーズ」とはアレックス・ギネス2)つながりです

 

第二次世界大戦期,ビルマ・タイ国境付近の日本軍の捕虜収容所が舞台。

収容所を管理する斉藤大佐(早川雪洲)と捕虜である英軍大佐ニコルソン(アレックス・ギネス)らイギリス兵がクワイ河に橋をかける姿を描いた戦争ドラマ。脱走した米軍捕虜の自称中佐シアーズ(ウィリアム・ホールデン3))がイギリスのウォーデン少佐(ジャック・ホーキンス4))の決死隊とともにこの橋を爆破すべく戻ってくるという筋書きです

 

 

 

上からの命令を何とか遂げようとする斉藤,プライドと主義を譲らないニコルソン,二人は最初,相容れない関係でした。

途中から橋を完成させるという共通の目的で反発しあうことはなくなりました。

斉藤大佐は橋が完成することで目的を達成,ニコルソンは橋の建設という目的を持たせることで無秩序な集団になった英国軍の規律を正すことができました。

心が通じ合うようになったというよりは妥協点を見つけたようです。

ニコルソンを夕食に招き入れイギリスのコンビーフを分け与える時,ジョニ赤5)が出てきます。

さすがイギリス人の監督って感じ

 

一方,脱走したシアーズは現地人やイギリス軍に助けられて将校待遇のまま英国基地で看護師相手に楽しい生活を送っていました。

しかし本当は二等水兵だったのに中佐と語った階級詐称がばれて橋まで戻る道案内をすることになります。

ウォーデン少佐,ジョイス中尉らとジャングルを進んでいき,途中日本兵と遭遇します。

手榴弾の音でコウモリの大群が飛び立つところが東南アジアのジャングルっぽいですね。

逃げた日本兵を追うと,ジョイスは少年のような兵と鉢合わせし,一瞬怯んでしまいましたが,ウォーデンが殺害しました。日本兵の足下にはたぶん彼の妻だと思われる写真が落ちていました。戦争っていうのはこういうことだと頭に冷水をかけられたような気持ちになりました。

 

ニコルソン大佐は橋工事の人手不足で,作業をさせないといっていた将校まで動員し,さらに負傷者まで加えようやく橋を完成させます。看板を掲げます。

 

この橋はデザインと建築は英国軍兵士によるもの,ニコルソンの指揮下で完成したものだよ,という内容です。

LT.Col. L. Nicholson D.S.O. Commanding

LT.Col. は Lieutenant colonelの略で中佐を意味しているではないかと思います。

ニコルソンは大佐だったはずなのにどうしてでしょうか。

それとD.S.O.の略語は何なのか不明です。

Distinguished Service Order(イギリスの軍事勲章)のことなのでしょうか。

 

完成した橋を渡り,下流に沈む夕日を見ているニコルソン大佐に,斉藤大佐が”Beautiful”と声を掛けます。斉藤大佐は夕日のことを”Beautiful”といったのだと思いますがニコルソンは橋が”Beautiful”とほめられたと思い気を許してこんなことを言います

 

人生の終わりに近づいていることに気づく

そして私は自分に聞く

私の人生はなんだったのか

私の存在が何かにとって少しでも意義があったのか

 

このシーンは好きなシーンです。

自分の存在が何かに少しでも意義があったのか。これを考え始めたら哲学の世界に入ります。

フェリーニ監督の道 (1954)でジェルソミーナが「キ印」に「世の中のすべては何かの役に立っている。それは神さまだけがご存じだ。」といわれるシーンがあります。このシーンを思い出します。

 

 

日本軍の列車が橋を通る当日

橋を英国兵がクワイ河マーチの口笛を吹きながら行進します

日本兵が直立不動で立っている中をニコルソンが歩き,ゴミを拾います。やり遂げたという満足感なのでしょうね。

汽笛が鳴り,何気なく橋脚を見ると不審物発見。その後に起きる銃撃戦

 

 

 

 

シアーズや同じイギリス兵のウォーデン少佐までもがジョイス中尉に向かい,Kill him, Kill himと叫びます。himとはニコルソン大佐のことです。

ニコルソン大佐は ” What have I done? “と言いながら爆破装置に倒れ込んで橋は爆破されます。

 

残された軍医が言った "Madness" がこの物語を語ってくれました。

ニコルソンが掲げた看板が流されていきます

最後にカメラは川と破壊された橋を映しながら引いていきます。ここはドローンで撮影したかったなぁ

 

 

1)   デヴィッド・リーン

旅情(1955),戦場にかける橋 (1957),アラビアのロレンス(1962),ドクトル・ジバゴ (1965),ライアンの娘(1970),インドへの道 (1984)の監督で,「戦場にかける橋 」,「アラビアのロレンス」ではアカデミー賞作品賞,監督賞を受賞しています。「ドクトル・ジバゴ」もアカデミー賞の有力候補だったのですがこの年はサウンド・オブ・ミュージック(1965)が受賞になりノミネートにとどまったようです。後期の作品は大河ドラマ的な大作が多いですが,キャサリン・ヘップバーン主演の「旅情」も大好きな映画です。同じ監督とは思えない感じです。

スピルバーグ監督は映画監督を目指すことになった映画が高校生の頃にみた「アラビアのロレンス」だったと言っています。

 

2)  アレックス・ギネス

デヴィッド・リーンの映画に欠かせないのはこの役者です。大いなる遺産(1946),オリヴァ・ツイスト(1948)からのつきあいで「戦場にかける橋」,「アラビアのロレンス」,「ドクトル・ジバゴ」にももちろん出演しています。「戦場にかける橋」でオープニングタイトルでは3番目に名前が出てきましたが,アカデミー主演男優賞を受賞しています。

このように大作に出演しているという自負からでしょうか,「スター・ウォーズ」に出演したことは後悔していると言っていたようです。この話が本当だとすれば当時の映画評論家と同じように「スター・ウォーズ」の後世に残す影響の大きさを予測できていなかったのかなぁと思います。

 

3)  ウィリアム・ホールデン

ビリー・ワイルダー監督のサンセット大通り(1950)で人気が出て第十七捕虜収容所(1953)でアカデミー主演男優賞を受賞しています。やはりビリー・ワイルダー監督でハンフリー・ボガート,オードリー・ヘプバーンと共演した麗しのサブリナ(1954),慕情(1955)も印象的でした。ワイルドバンチ(1969),タワーリング・インフェルノ(1974),ネットワーク(1976),オーメン2/ダミアン(1978)などにも出演していました。

 

4)  ジャック・ホーキンス

この人も戦争・歴史映画などの大作に出演していますね。

ベン・ハー(1959)でローマ海軍の総司令官アリウスを演じ,ベン・ハーから命を救われ後にベン・ハーを養子にする役でした。

 

5)  ジョニ赤

ジョニー・ウォーカー赤ラベル,世界で一番飲まれているウィスキーだと言われています。現在は酒税法の改正でジョニ赤が1200~1400円くらいの値段で手に入ります。ジョニ黒はその倍くらいです。

Wikipediaによれば1957年においてのジョニ黒(12年以上の熟成)の実売価格は1万円だそうでジョニ赤はその半分くらいなのでしょう。ジョニ黒は当時の大卒初任給二ヶ月分に相当したとも記載がありますがもう少し初任給は良かったと思います。でもどちらにしろ当時は“ごちそう”ですね。

もっとも戦時中はどうだったかわかりませんし,正規ルートで手に入れた訳じゃないのでしょう