監督 ロバート・ゼメキス1)
ジョン・レノンがこの映画に出演しています
「イマジン」に関連した発言をしています。
フォレスト “ In the land of China, people hardly got nothin’ at all. “
レノン “ No possessions? “
フォレスト “ And in China, they never go to church. “
レノン “ No religions, too? “
司会者Dick “ Hard to imagine. “
レノン “ Well, it’s easy if you try, Dick. “
空中を漂う一本の羽がバスを待ってベンチに座っている主人公フォレスト・ガンプ(トム・ハンクス)の足下に舞い降ります。これを拾って絵本に挟むシーンから物語が始まります。
フォレストがバスを待つ人達に昔のことを話しかけるというかたちで進行していきます。
まず最初にフォレストがバス停のベンチでとなりの女性に話しかける言葉
ママ(サリー・フィールド1))が言っていた言葉でした。
Mama always said life was like a box of chocolates. You never know what you're gonna get.
ママはいつも言っていた。「人生はチョコレートの箱みたい。食べるまで中身は分からない。」
人生は実際に生きてみないと何が起こるかわからない,ワクワク,ドキドキだってことでしょうか。
この言葉はAFIアメリカ映画の選ぶ名セリフベスト100にも選ばれていました。
フォレストの人生にもいろいろなことが起こります。
同時にこの映画ではエルビス・プレスリーがメジャーデビューする以前の1950年代からレーガン大統領が狙撃された1980年代までのアメリカの歴史を綴っています。
プレスリーの「骨盤ダンス」,ケネディー大統領,ベトナム戦争,ジョンソン大統領,ベトナム反戦運動,ヒッピーそのいずれにもフォレストが関わっていたという寓話なのですが良くできています。
アラバマ大学への黒人学生入学やそれに対するウォレス知事の抗議,狙撃されたこと,フォレストがアメリカ横断で走っていた時のエピソード「SHIT HAPPENS」は何のことなのかわかりませんがアメリカでは有名なことなのでしょう。
幼少児のフォレストは脚も悪く,知能指数も75だったため,いじめの対象になっていました。
そんなフォレストを受け入れてくれたのがジェニーです。
いじめっ子に追いかけられ,ジェニーから” Run, Forrest, Run “と叫ばれ,夢中で逃げたら装具が自然に取れて風のように走れるようになりました。その後,フォレストは走り続ける人生を送ります。
アメリカンフットボールで走り,ベトナム戦争では戦友みんなを助けるために走りました。
その一人が両足を負傷したダン小隊長でした。
名誉の戦死を遂げる運命だったのに両脚切断されたと絶望し,ダン小隊長はフォレストをなじります。
I had a destiny. I was supposed to die in the field with honor!
That was my destiny, and you…cheated me out of it!
おれは戦場で名誉の戦死を遂げるはずだった。そういう運命を貴様がぶち壊したんだ!
そんなダン小隊長がフォレストとエビ取りの船に乗り,苦難の末,成功します。
フォレストに言う。“ I never thanked you for saving my life. ”
直訳すると「今まで命を救ってくれた礼を言っていなかった」でも字幕は「命を救ってくれた礼を言うよ」になっていました。
感動的です。
この映画ではその年代に会わせて当時の曲が流れます。
エルビス・プレスリーの「ハウンド・ドッグ」
ジェニーが劇場で歌う「風に吹かれて」ボブ・ディラン
フォレストがベトナムに到着時には「フォーチュネイト・サン」クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル (CCR) 3)
戦場で雨の中ジェニーに手紙を書く場面では「夢のカルフォルニア」ママス&パパス
栄誉勲章をもらった時に流れていたのはサイモンとガーファンクルの「ミセス・ロビンソン」
クリスマスに酒浸りのダン小隊長が車いすを押してもらい道路を横断する場面。タクシーのボンネットをたたき毒づく。この時流れていたのは,ニルソンの「うわさの男」。
さらにホワイトハウスに招待されたフォレストがニクソン大統領と会うシーンでは「雨にぬれても」B.J.トーマス
卓球を練習しているフォレストが上官から軍の除隊書類をもらうシーンでは「幸せの黄色いリボン」ドーンなどなど
みんな名曲ばかりです。
最後にフォレストJr.を見送ったあと,また羽が風に漂って映画が終わります。
人生は風に乗ってさまようようなもの,いろいろな人に巡り会い,いろいろな出来事に関わっていくものってことでしょうか。
1) ロバート・ゼメキス
ロマンシング・ストーン 秘宝の谷(1984)の監督で成功しています。続くバック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)は全世界興行収入ランキングで一位になるという記録的ヒットとなり,シリーズ化されました。フォレスト・ガンプではアカデミー監督賞を受賞しています。その後,コンタクト(1997年),ホワット・ライズ・ビニース(2000)などの監督をしています。トム・ハンクスとはフォレスト・ガンプ以外にキャスト・アウェイ(2000),ポーラー・エクスプレス(2004),最近の実写版ビノキオ(2022)で組んでいます。
2) サリー・フィールド
ノーマ・レイ(1979),プレイス・イン・ザ・ハート(1984)でアカデミー主演女優賞を2回受賞しています。プレイス・イン・ザ・ハートでは夫を亡くしたシングルマザーが当時差別されていた黒人や身体障害者と力を合わせて大恐慌時代のテキサス州の小さな田舎町で奮闘する役で,風と共に去りぬ(1939)のスカーレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー)を思い出しました。
3) クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル (CCR)
この長ったらしい名前のグループは1970年前後に活躍したロックバンドです。1970年前後といえばベトナム戦争真っ直中。
映画のベトナム戦争の場面っていうとよく使われるのが彼らの曲です。
代表作であり名曲の一つ「雨を見たかい(Have You Ever Seen The Rain)」。
この歌詞の中の「雨」は戦争中に多用された無差別大量殺戮兵器「ナパーム弾」を指しているのではないかとまことしやかに言われていました。
後に作者のジョン・フォガティーはこれを否定し,バンドの状態が不安定でそんな状態を「晴れているように見えても雨が降ってくることがある」と表現したと言っていました。この曲のあとまもなくCCRは解散しました。
映画で使用された「フォーチュネイト・サン」は反戦歌と言われています。この当時のロックは“反戦”が一つのテーマでした。ただ,この曲の題名は「幸運な息子」という意味であり,若者たちが次々と徴兵された中,有力政治家の息子たちが徴兵を免れていることに対する批判です。