監督  フランシス・フォード・コッポラ

 

「ナチュラル」との共通点はロバート・デュヴァル1)が脇を固めていること

 

「ゴッドファーザー」はアカデミー賞作品賞受賞しており,AFIアメリカ映画ベスト100では1998年版で第3位,2007年10周年エディションでは第2位にランクインしています。評論家選定のいろいろな映画ベスト100でも必ず上位に名前が挙がる秀作です。

 

イタリア(シチリア)からアメリカに移住しマフィアとしてのし上がりドンとなったヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド2))と2代目ドンの息子マイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ3))の家族愛と権力闘争の物語です。

 

                                     

マフィアとは何なのか

13世紀フランスの占領下にあったイタリアのシチリア島で女性がフランス兵に暴行を受け,怒った住民がフランス兵を殺害しました。

その時の住民の叫びが “Morte alla Francia Italia anela!”

フランス人に死を、これはイタリアの叫びだ!

この頭文字がMafiaと言われています。

でも現代のマフィアは結局シチリア島を起源とする組織犯罪集団です。

 

この映画は長時間(177分)だけあって登場人物が多いです。これは誰でこっちが誰でと覚えるのが大変です。一回見ただけで全ての人間関係を把握できる人はすごい。

コルレオーネ家には三男マイケルのほかに

長男ソニー(ジェームズ・カーン)

次男フレド(ジョン・カザール)

娘コニー(タリア・シャイア)がいます。

トム・ヘイゲン(ロバート・デュヴァル1))は養子であり組織の相談役という役回りです。

 

ヴィトー・コルレオーネは自分に忠誠を誓った者には救いの手を差し伸べ,信頼や絆といったものを大事にしています。

冒頭,コルレオーネの1人娘の結婚式に客が集まります。客と言ってもヴィトーにもめ事の解決をお願いするために来た人間も多い。

 

そのうちの1人,葬儀屋ボナセラがヴィトー・コルレオーネに訴えます。自分の娘が男たちに暴行を受け,警察に届けたが執行猶予になり,納得できない,復讐してくれ,金は払うと。

ヴィトーはおまえが友人として来たのなら何とかしてあげたいがずっと音沙汰なしで自分を避けていたと言います。葬儀屋は手を取りキスをして”Be my friend?, Godfarher?”と忠誠を誓います。

 

 

また,ヴィトーが名付け親である歌手が干されそうになり,泣きついてきた時のセリフ

“I’m gonna make him an offer he can’t refuse.”

「あいつが決して断れない申し出をする。」

そう言ってプロデューサーのベッドに馬の頭部を投げこむ。残虐性MAXです。これは断れないでしょう。

このセリフはこの映画,また「ゴッドファーザーPartⅡ」などいろいろなところで使われています。

 

後に長男ソニーがマシンガンで襲撃された時,バラバラ屍体を前に葬儀屋ボナセラに言うセリフ

“I want you to use all your powers and all your skills.”

お前の持つ力と技術の全てを使ってきれいにしてほしい

葬儀屋はたぶん全力できれいにしたのだと思います。

 

マーロン・ブランドは役作りのために口の中にティッシュペーパーを詰めたと言われていますが,そのためにモゴモゴしてセリフが聞き取りにくいです。そもそも普通の英会話も9割がた理解できてはいないのですが。

マーロン・ブランドはこの映画でアカデミー賞主演男優賞を受賞しています。ただし授賞式では映画におけるネイティブ・アメリカンの描かれ方に対しての抗議のために受賞を拒否しています。


 

もう1人のドン,マイケルはマフィアとしてのコルレオーネファミリーから最も遠いところにいたはずでした。

そのマイケルが,凶弾に倒れ,弱り果てた父親と対面してから変わっていきます。父親の仇をとったことにより非情で冷酷なマフィアのドンへと成長していきます。

 

脚本家三谷幸喜は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の主人公北条義時のモデルはほとんどマイケル・コルレオーネと言っています。確かに「鎌倉殿の13人」の北条義時も最初とは違って非情の男になっています。

 

 

終盤,コニーの子の名付け親になり洗礼を受ける時,同時に数々の殺戮を行なうところはすさまじい。神を信じるか? I do,悪魔を退けるか? I do,と言っておきながら当然のように殺戮を繰り返していきます。コニーの夫にまで容赦なく手をかける徹底ぶりはすごいです。

 

ラストシーンで奥さんのケイ(ダイアン・キートン)がマイケルの部屋を出たところでドアを閉められるところは完全にファミリーのドンになっていました。

 

 

 

1)  ロバート・デュヴァル

アラバマ物語(1962)にBoo役で出演。M★A★S★H マッシュ(1970)では敬虔なクリスチャンでありながら“ホットリップス”とのベッドシーンを放送されてしまう少佐役,THX1138(1971)では主人公役,そのほかブリット(1968),ネットワーク(1976),シビル・アクション(1999),ジャッジ 裁かれる判事(2014)と出演は多数あり,アカデミー賞助演男優賞に4回ノミネートされています。テンダー・マーシー(1982)では主演男優賞を獲得していますが,一番強烈な印象を残しているのは,地獄の黙示録(1979)のキルゴア中佐です。サーフィンをするためにナパーム攻撃を行ない,朝のナパームににおいは格別だと言うとんでもない男を演じています。

 

2)  マーロン・ブランド

アメリカの有名な俳優養成所「アクターズ・スタジオ4)」出身。欲望という名の電車(1941)でアカデミー主演男優賞にノミネートされ,乱暴者(1953)で演じた反抗的な若者では革ジャンとジーンズでオートバイにまたがる姿に当時の若者からは熱い支持を受けたようです。波止場(1954)ではボクサーへの夢を絶たれた港湾労働者を演じ一度目のアカデミー主演男優賞を受賞しています。この映画も相当良かったです。

 

3)  アル・パチーノ

ニューヨーク,ブロンクス生まれですが両親はシチリア島からの移民であり,「ゴッドファーザー」のマイケル役はぴったりだったかも。実際にはこの役の候補にはマイケル役にはジャック・ニコルソン,ロバート・レッドフォード,ウォーレン・ベイティ,ロバート・デ・ニーロなどが候補に上がっていたようです。

スケアクロウ(1973),セルピコ(1973),ゴッドファーザーPartⅡ(1974),狼たちの午後(1975),ジャスティス(1979),スカーフェイス(1983),ゴッドファーザーPartⅢ(1990)と主だった出演作は数知れません。セント・オブ・ウーマン/夢の香り(1992)でアカデミー主演男優賞を受賞していますが,やっぱり一番の代表作はゴッドファーザーPartⅡではないでしょうか。ゴッドファーザーPartⅡはアカデミー賞作品賞を受賞しています。アル・パチーノは主演男優賞にノミネートされていますが受賞は「ハリーとトント」のアート・カーニーでした。「ハリーとトント」もいい映画でしたが,個人的にはこの年のアカデミー主演男優賞はアル・パチーノであるべきだったと思います。

 

4)  アクターズ・スタジオ

エリア・カザン(波止場(1941),エデンの東(1955)の監督)やリー・ストラスバーグらによる俳優養成所。演技者の実生活での体験や役の人物の内面心理を重視するメソッド演技法で俳優を育成したよう。アクターズ・スタジオの出身者はゴッドファーザーに出演したマーロン・ブランド,アル・パチーノ,ロバート・デュヴァル以外にもジェームズ・ディーン,ポール・ニューマンをはじめアン・バンクロフト,アンソニー・ホプキンス,サリー・フィールド,ジーン・ハックマン,ジャック・ニコルソン,ダスティン・ホフマン,メリル・ストリープ,ロビン・ウィリアムズといったそうそうたる演技派俳優がずらりと肩を並べています。ゴッドファーザーPartⅡで若き日のヴィトー・コルレオーネを演じたロバート・デ・ニーロも出身者でした。