終身刑(冤罪?)にされた男が南米の島の監獄に投獄されます。そこで出会った男と協力しながら,脱走を試みますが,そのたびに捕まり,厳しい処置を受けます。それでも自由を求め続け最後に脱走するというお話
ジョニーは戦場へ行った(1971)とはダルトン・トランボつながりです。
フランス領ギアナ① に向かう受刑者に向かい,「祖国フランスはお前らを見捨てた」と言っている人物を演じているのはこの映画の脚本担当ダルトン・トランボです。
この囚人の中に主人公のパピヨン(ポン引き殺しの罪?,スティーブ・マックイーン)やドガ(国債など有価証券の偽造罪,ダスティン・ホフマン)がいます。
町の中を行進(市中引き回しの刑か),船に乗って大西洋横断です。江戸時代で言えば遠島ですね。
船の中の居住も本当にひどそうです。食事も雨の中でスープとパンでしたね。
パピヨンが筒状ものに紙幣を詰め込んで,ケツの穴に大事なものを隠すのは人間だけだと言っていました。
現代でも金塊や麻薬をケツの穴にを隠して入国する事件は多いですね。
ドガは金持ち,それが狙われるのでパピヨンが用心棒になります。ドガから金銭的援助を受けて脱獄する腹づもり。
さっそく夜中にドガを守って一暴れ。
おかげで手足を拘束され犬食い状態
島に到着。島には普通に生活している人々がいますが,貧富の差は大きいようです。
刑期の終えた囚人たちがそのまま居着いているんでしょうか。
サンローラン刑務所
ドガが金持ちだと知られていて,楽な仕事に回すからと金を請求されました。
仕事を割り振りする係から,楽な清掃係を言いつけられましたが,そこに別の職員登場。
「身内が偽国債を買って破産した」と言い,ドガやパピヨンは 「キロ40」 という強制労働キャンプに配属されてしまいました。
泥沼に足を取られながらの大木運びは大変な重労働です。
1年で4割は死ぬと言っていたのはこういうことだったようです。
赤道直下のジャングルですからワニもいます。
パピヨンとドガがワニと格闘するシーンがありましたが,さすがにスタントでしょうね。
ワニに組み付くところは顔がはっきり映っていませんでした。
ブルーモルフォ蝶は貴重な蝶で金になるため,囚人らに採取させて看守が売って儲けていました。
パピヨンは蝶を売買している仲買人にボートの用立てを依頼し,値段交渉の上,4000フランで折り合い,前金2000フランを支払いました。
顔見知りの死体を片付けさせられたドガが気分が悪くなり吐いてしまったため,看守に痛めつけられました。
それを見ていたパピヨンが反撃し,そのために予想外の脱走することになりました。
約束したボート受け取りの場所にはハンターが待っていてパピヨンは独房入りです。
マックイーンは大脱走(1963)でも独房入りしていますね。
体力保持に腕立て伏せをして,まずい食事も無理してきっちり食べていました。
ひげそりをしてもらうため(?),ドアの小窓から首を出して,隣を見ると老人が自分の顔色はどうだと聞いてきました。
ひどい顔色でした。何日か後に顔を出した時には老人はいませんでした。
決められた食事以外にココナッツが届きました。栄養補給のためと,内緒でドガから届けられたものです。
しかし,これがばれて,出どころを言えと迫られました。
言わなかったため食事は半減,天井からのわずかの光も遮断されました。
パピヨンはチクりません。ゴキを食べてボロボロになりながらも耐えました。
ドアの小窓から首を出して,隣の囚人にオレの顔色はどうだと尋ねるパピヨン。
奥歯が抜け,一度はココナッツの出どころを白状しようとしましたが,やめています。
そして2年経過,生き延びて出所しました。すごいよ,パピヨン
出所後は入院です。
ドガが肉入スープを差し入れ,一口食べたら止まりません。さぞかしうまかったんだろうな。
窓辺に立ってバッタを捕まえますが,じっと見て食べずに逃がしました。
ドガとパピヨンの会話
「どうして出どころを言わなかったんだ」「言いかけた」「ヒトは誘惑に勝てるかどうかで人格が分るそうだ」
「何がほしい」「ボート」
パピヨンの脱獄の意志は変わりませんね。
そしてボートを調達して,脱走。逃げる気がなかったドガも予定外に逃げることになりました。
ジャングルクルーズのように移動し,ボートまで案内されましたが,ボートはボロボロ。またもだまされましたね。
しかし顔面に入れ墨を入れた男(ジョン・クエイド*)に助けられて島に渡りました。
*:クリント・イーストウッドが監督した荒野のストレンジャー(1973),アウトロー(1976)などに出演していました。
この男がどうしてパピヨンらを助けたのかは不明。
連れて行かれた島,そこはレプラの人たちの住む島
顔面のブツブツの結節が,レプラ(らい病)をあらわしているんでしょうけど,ここまで変形するのは相当重症でしょう。
監督のフランクリン・J・シャフナーは猿の惑星(1968)も特殊メイクで撮影しています。
誰が演じているのか見た目ではさっぱり分りませんが,アンソニー・ザーブです。
暴力脱獄(1967)で犬使いを演じた役者です。わからんわ。
レプラの男が吸った葉巻をパピヨンが吸ったことで気に入られてボートの提供を受け,ホンジュラスに向かいました。
途中,嵐に見舞われ,なんとか海岸に流れ着きました。
運悪く犯罪者の男を連行していた警官に遭遇し逃げます。
警官に捕まっていた男とともにサンタ・マルタに向かったと行っているのでコロンビアだと思います。
そのあとの場所は特定できません。
追跡者の吹き矢に当たり,崖から転落,気がつくと海辺で暮らすインディオの集落。
その集団は真珠を残して突然姿をくらましてしまいました。
バスで逃走。検問をかいくぐり,修道院にたどり着きました。
ハンセン病によって差別された人たちや文明とは一線を引いた人たちから助けられたのに修道院の院長が行ったのは「密告」です。
真珠に目がくらんだとしか思えない。罪人を救うキリスト教の精神はどこにあるんだ![]()
あわれパピヨンはまたもや独房入り。
また何年かここで過ごし,ボロボロになり出獄しました。本当にボロボロ,白髪になっていました。
次の行き先は悪魔島。悪魔島といっても風光明媚な島にしか見えませんけどね。
ドガは菜園でトマトを作ったり,豚を飼育して穏やかに暮らしていました。
「ドレフュス大尉の席に座るな」と石のベンチに座ったパピヨンに言い寄る老人がいました。
ドレフュス大尉とはフランス軍の情報漏洩の犯人とされ,この地に流された実在の人物です。
後に冤罪とわかり釈放されています。
パピヨンはドガに「本土まで39km。逃げよう」と誘います。
最初は一緒に行く気でしたが,最後に翻意。ドガはこの地に残りました。
確かに限られてはいますが,平穏に暮らしていましたからね。
最後の抱擁のあと,パピヨンは崖から海に飛び込みました。
マックイーン自身がスタントをやりたいと主張したようで,「人生で最も刺激的な体験の一つだった」と語っています。
ココナッツで作った筏の上でパピヨンが叫びます。
"Hey, you bastards, I'm still here" くそったれども,オレはまだ生きているぞ!
やりきったものだけが言える言葉ですね。
ラストシーンで海の中にパピヨンを支える潜水夫が見えるのは周知の事実です
パピヨンとドガの友情がすごくいいですね。
最初は脱獄のための金づるでしかなかったのにココナッツの出所を最後まで言わずにメモを食べてしまうところは涙腺がゆるみます。
そしてパピヨンの恐ろしい独房生活に耐えて何としてもあきらめない精神力には脱帽です。
夢の中で「人生を無駄にした事はGuilty(有罪)」この言葉がパピヨンの原動力になっているんでしょうね。
この映画で,スティーブ・マックイーンはパピヨンの若い頃から老人になるまで経年劣化していく様を演じており,マックイーンの中では最高の演技だったんじゃないでしょうか。
しかしアカデミー賞にはノミネートもされませんでした。
当時の映画配給会社パラマウントの幹部であったロバート・エヴァンスの妻アリ・マッグローと不倫関係にあったからはじかれたといううわさがあります。
ロバート・エヴァンスは,ある愛の詩(1970),ゴッドファーザー(1972),チャイナタウン(1974)などのプロデュースを行い,当時赤字続きだったパラマウント映画の業績を上げた実力者でした。そんな人の妻を略奪したので賞を取れなかったのかも。
実在のパピヨンことアンリ・シャリエールが仏領ギアナに流されたのは20代であり,演じるマックイーンは当時40代であったため,年を取りすぎていると感じた人もいたようです。そしてアンリ・シャリエールが現実にベネズエラで釈放されたのは40歳くらいなのでこの映画で描かれたパピヨンとはだいぶ違います。
一方のダスティン・ホフマンの演技は間違いないです。
厚い眼鏡越しに見えるように矯正コンタクトレンズを着用して演じたドガは最初から最後まではまり役でした。
ちなみに冒頭の囚人たちの行進でドガに手を振っていたドガの妻役は当時のダスティン・ホフマンの本当の奥さんだったようですが確証はないです。
この映画でアカデミー賞にからんだのは作曲賞のジェリー・ゴールドスミスだけでした。
パピヨンのメインテーマはイイですね。哀愁が漂っています。
ヒーローと悪役ベスト100 (2003)とかアメリカ映画の名セリフベスト100 (2005)"Hey, you bastards, I'm still here"とかに選ばれても良さそうですが,AFI(アメリカ映画協会)アメリカ映画100年シリーズにはいずれも選ばれていません。
近代映画社SCREEN誌の執筆者が選ぶベストテンでは13位と評価が高くありませんが,読者が選ぶベストテンでは2位でした。
ちなみに1位はスティング(1973)でした。
① フランス領ギアナ
南米,ブラジル,スリナムに接したフランスの海外県です。植民地化と思いきやれっきとした県のようです。
南米にありながら欧州連合(EU)の一部であり,通貨もユーロです。
アメリカの中のハワイのような関係のようです。
ちなみにお隣のスリナムは元オランダ植民地で現在は独立国家です。
フランス領ギアナ沖の島に監獄があります。
パピヨンはこの映画ではレプラの島からホンジュラスに向かい,嵐で流れ着いたところからサンタ・マルタに向かっています。
地図で確認すると陸路で仏領ギアナ,サンタ・マルタ間は5000kmもありました。
ちなみに悪魔島から本土まで39kmと言っていましたが,実際には10~15km(ChatGPT)です。
案外近いですが,サメが多い海域のようです。












