ハリーのピグとか小説とかいろいろブログ

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ハリ―が小説を書いたり、ピグでの思い出を記録するブログです。よかったら読んで下さい。


ハリーの新感覚アイドル系本格ミステリ「アイドル16」シリーズ、ついにスタート!


第1章「アイドルは雪密室の謎を解けるか?」

http://baseballgame.web.fc2.com/idle161st.html 改訂完全版2月14日脱稿!少し表現を直したり、書き足したりしたのでぜひ読んで下さい!


「少女探偵は雪密室の謎を解けるか?」

http://baseballgame.web.fc2.com/shoujotantei.html  アイドル16部分を消し、本格ミステリ部分だけで再構成、結末にさらなるどんでん返しを加筆した新バージョンです!


第2章は名門女子高連続殺人事件を予定!早ければ2月にも連載開始か?(多分)


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あき作。これ一体誰のこと言ってるんだろうね?(笑)

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こんにちは。自分でもこんなに何度も手直しした作品は今回が初めてです。先月に1回完成した「アイドル16~アイドルは雪密室の謎を解けるか?」を書き終えた時、ある程度いいものが出来たかなと思いつつも、どうにも違和感が拭いきれませんでした。そこで約1月後に加筆修正を試み、そこでもまた満足はしたもののどうにもそれでも違和感が拭いきれません。

そして、今回3度目の手直しとなったわけですが、今回は大胆にリメイクしました!アイドル16の部分をカットして、本格ミステリ部分だけ残しさらに納得のいかなかった真相も変えてもう一つどんでん返しを新たに加えました!これによって「本格ミステリ」としては前の作品よりも満足のいく出来に仕上がったと思いますo(^▽^)o


ただ、アイドル16としての作品も捨てずに残し、こちらは本格ミステリのみバージョンとして愉しんで頂けたら幸いです。

一つの小説で二つのバージョン。重複部分はあれど、どちらも読み味の違う作品に仕上がったと思うのでぜひ両作品を比べ読みしてみて下さい!


http://baseballgame.web.fc2.com/shoujotantei.html

というわけで、予定よりもかなり早く新シリーズ「アイドル16」の第1章を書き終えることができました。正確には土日の2日で書き終えてしまったので、いささか自分にしては早く書きすぎたという感はあるのですが(笑)しかし、2日で書いたにしては全部で中編小説1本ぐらいの長さにはなりましたし、完璧とはいえないまでも7~8割は満足できる書きたかった小説が短期間でよく書けたなという満足感は覚えています。それが読んで頂ける読者の皆さんの満足感につながるかどうかはわかりませんが、少しでもアイドルの成長物語あるいは本格ミステリとして愉しんで頂けたら幸いです。


それにしても、自分にしてはこれほど前半と後半の落差がある小説を書いたのは初めてでした。前半は完全にAKB48を題材としたアイドルの成長物語、後半は横溝正史の「本陣殺人事件」を意識した昭和風の本格ミステリ・・・と、最初はわりと若い読者でも愉しんで頂けるようなテイストなんですが、前半で面白いと思ってくれた読者も後半になると「なんじゃ、こりゃ」と読むのを諦めてしまいそうなストーリー展開になってしまったかもしれません。


そこも含めて第2作以降はどうするかというのが自分的に今悩んでるところで、このまま前半はアイドル成長物語を書き、後半は本格ミステリテイストに仕上がる2段階方式で続けるのか、あるいは成長物語を軸としてその中にミステリのテイストを入れて、最初から最後まで全体の雰囲気を壊さず物語を書き続けたほうがいいのか?

第2作は実は孤島もののミステリにしようかと少し頭に浮かんでいるんですが、いずれにせよすぐにはとりかからないつもりなので読者の皆さんの反応(があればですが)をみながら、第2作をどのように書いていくのか考えていきたいと思います。


最後に余りに早く第1章を書き終えてしまったたため、ブログにアップするのも4日かけたとはいえかなり早いものになってしまいました。なので、別サイトで最初から最後まで一気に読めるようにコピーしましたので、これから読みたいという読者の方はこの後の記事は読まずにこちらで最初から読んで頂けると幸いです。


http://baseballgame.web.fc2.com/idle16.html


では、第2作でまたお会いしましょう。

エピローグ



年は明けて、2006年1月2日。

その日はアイドル16の新春公演の日だった。

約束通り千鶴を東京に連れ戻すことに成功した碧依は勝田ら仲間たちに歓声をもって出迎えられた。




「おお!千鶴おかえりー!あおちゃん、よくやってくれたなあ。同じ仲間として誇らしいよ!」


勝田は満面の笑みである。


「皆さん、お騒がせして申し訳ありませんでした!もしよければ、また私を今日からお仲間に戻して頂けませんか?」


一方の千鶴はアイシクの皆に深々と頭を下げた。


「あったりめーだろが!私たち同じ釜の飯を食った仲間だろ?」




(勝田さん、あんたどこの時代の人だよ!)




と、心の中で碧依はつっこみながらも、千鶴の復帰をメンバーの誰よりも喜んでいたのだった。



そして、公演前。

青砥プロデューサーが姿を現し、碧依の労を労いながらも千鶴、そしてアイシクのメンバー全員に叱咤激励を送った。




「まずは碧依君、今回の件ほんとうにごくろうだった。やはり君に目をかけた私の判断に間違いはなかったようですね。そして、千鶴君。よく戻ってきてくれました。正直私は本当は君をここにはもう戻さないつもりでいた。やるきのないメンバーをいつまでも置いていても、君は勿論グループ全体に悪影響を与えかねないからね。しかし、そんな私の気持ちとは裏腹に碧依君をはじめとしたメンバーの全員が君の帰りを心待ちにしていたということも知った。君はあの時おそらく壁にぶつかっていたのだろう。だが、今の君のその表情をみると迷いはすっかりふっきれたと見える。それはあるいは碧依君の励ましによるものかもしれないし、なにより君自身が変わりたいと強く願った結果なのかもしれない。いずれにせよ、失敗は誰にでも必ずある。かくいう私も若い頃はこれでも失敗の連続だったのだからね。今だって私がやってることが必ずしも正しいことかどうかはわからない。ただ、我々は失敗を恐れていては何も始まらない。何事もチャレンジすることだ。今日から新生アイドルシックスティーンの始まりだと思って、全力でやってみなさい。今はまだ暗闇の中にいる最中かもしれないが、必ず光は見えてくるものだから」




(相変わらず先生はいいこというよな。でも、先生の若い頃の失敗の一つってあれだよな。担任の先生に美人の幼馴染を取られたっていう)




それを思うとぷぷっと噴き出してしまいそうになった碧依だったが、そこは必死にこらえて前を向く。




(そうだ。私たちにはまだまだこの先の未来がある。これから、アイシクがどんな風になっていくのかそれはわからない。でも、その未来を少しでも明るいものにできるとしたらそれは私たちの今の精いっぱいの努力の中でしか生まれないんだ。千鶴も帰ってきてくれたことだし、今日から私たちのアイシクが再スタートするんだ)




碧依は強く決意し、仲間の顔を見回す。



千鶴、勝田さん、優美子さん、そしてみんな―。

今日は一段とみんなの顔が生き生きしているように碧依にはみえた。




そして、2006年新年一発目の公演が幕を開けた。




「アイドルシックスティーン、今年も全力全開で行くぞー!」




勝田の声が劇場内に響き渡ると、碧依も含めた全員がそれに応えた。




「おー!」




その日の劇場公演は大成功。

客席も60~70は埋まり、まだまだ満員御礼とまではいかないもののこれまでの最高記録を更新したのであった。




アイドル16。

2006年1月2日。

名もなき少女たちの伝説はまだ始まったばかり。

これから待ち受ける幾多の荒波を彼女たちはいかに乗り越え、成長していくのか?

皆さんもよかったらどうぞこの少女たちを応援して欲しい。

推理オタクの一風変わった少女、横溝碧依。

一度はアイシクを離れたが、再び戻ってきた不死鳥の少女、岩山千鶴。

誰よりも熱いグループのリーダー格の少女、勝田茜。

時に厳しく、時に優しい、グループ最年長の少女、赤村優美子。

そして、まだみぬ仲間たち―。




「まだみぬ仲間たち扱いなのね、私は!くーっ、絶対2期オーディションがあったら受かってセンターとってやるんだから!」




そうそう、ひょっとしたらこの冒頭で登場した碧依の親友深田風果も今後メンバー入りするかもしれないので、どうか心の片隅にでも置いておいてもらうと幸いである。




「なにが心の片隅にでもよ!絶対みんなの心のどセンターとってやる!覚えときなさい!」

事の真実を確かめるため、東京に戻る前に碧依は千鶴とともに村長の許を訪れた。

すると、村長はあっけらかんと事実を認めたのだ。



「お主の言うとおり、わしの息子は青砥紀人。つまり、今のお主らの恩師じゃな。実はこれは紀人から固く口止めされておったんだが、最初からわしは碧依君。君がこの村にやってくることを聞いておったんだ。同時にもしなにかあれば、お主らの助けになってくれるようにとも言付かっておった。そうそう、お主は覚えとるかの?あの夜のことを」


「あの夜のことですか?」


「そう、わしはあの夜おぬしをひそかに試しておったんだよ。わしは確かあの夜こんなことをお主にいったのお」



『お、あんたが東京からきなすったというお客人か。なんでも鍵屋んとこのちずちゃんのお友達だとか。今日は無礼講じゃ。さ、酒でも一杯ぐいっとやっておくれ』



(あっ!)


碧依はその夜のことを思い出した。

あの時は単なる酔っ払いの絡み酒だと思っていたのだが。



「まあ、でもおぬしがそのあとすぐ昌太郎の席に酒を置いたのをみてわしは安心したがの。

アイドルたるもの若いうちから酒の味を覚えておるようでは、先が見えてるからの。はっはっは」



碧依はこの老人に一杯食わされたという思いで悔しかったので、一つ老人のいたいところをついてやった。



「じゃあ、あれもわざとですか?わざと時計の針を見間違えたフリをして、私たちに謎を解かせようと?」


「ぐっ、それはだな・・・」


「まあまあ、あおちゃん。そんなに村長さんをいじめないの。それより、村長さんて青砥先生のお父様なんでしょ?ここは一つ、先生が幼い頃どんな子供だったのか聞かせて下さい!お願いします」


「ほっほっほ。では一つ紀人に関して面白いことを教えてあげようじゃないか。ああみえて、紀人には昔大層べっぴんな幼馴染がおってな。確か京子だか洋子だか、そんな名前だったか。紀人は学生時代ずっとその子に片思いよ。それを知っていたわしはある日、紀人を呼び出してこういったものだ。『男なら男らしく告白してみい。当たって砕けるぐらいの気持ちがなくてどうする』とな。すると、あいつはその翌日にはその子を校舎裏かどっか忘れたが呼び出して、とうとう想いの丈をぶつけたそうだ。そしたらの・・・」


「そしたら?どうなったんですか?成功?失敗?」


「・・・なんことはない。その子には既に交際している殿方がいたのじゃ。しかも、その殿方というのが・・・」


「殿方というのが?」


「あやつのクラスの担任の先生だったそうだ」


「ぷっ!」


「それ、めっちゃうけますね!」



碧依と千鶴の二人は若かりし頃の恩師の失敗談を聞いて、笑いに笑ったのだった。

ちなみに千鶴はあの名探偵役という大役を無事成し遂げた後、まるで憑き物が落ちたように「私、なんか自信がついたようなきがする。私、東京に戻る」と自ら言ってくれたのだから碧依は大いに喜んだ。

そして、最後に千鶴はこう一言付け加えるのも忘れなかった。



「それにしても、あおちゃん。あれ、なに?私が昌太郎お兄ちゃんの妹だってあれよ。あおちゃんがあんまり真面目くさっていうもんだから思わず乗ってあげちゃったんだけど、あの話ありえないって」


「・・・なんだ。ばれてたのか。いやあ、ああでもいわないと名探偵なんて引き受けてくれないんじゃないかって思って」


「馬鹿ねえ。第一、いくら同じ岩山でおばちゃんが流産したよりこちゃんて子と生きてれば齢も同じだからって、そんな偶然ありえないって。おばちゃんにも後で誤解をといておくけど、少し悪いことしちゃったかもね」



碧依は自分のついた嘘に気がとがめたが、結果的には昌子の加納に対する暴走を止められたということもあったのでいいかと、自分に言い聞かせたのだった。




こうして、2005年の年末に起きた雪密室殺人事件は静かにその幕を下ろし、碧依は千鶴を無事東京に連れ戻すことに成功したのであった。

その台詞を聞いた加納はもはやなんの言葉も発しなくなり、ただ茫然と立ち尽くしていた。

そんな加納に千鶴はさらに、




「加納さん、たとえどんな理由があろうと私はあなたのことを許すことはできません。私の小さいころから可愛がってくれた昌太郎お兄ちゃんの命を奪った貴方を!それに私にとってあのお兄ちゃんは・・・」




と、その時だった。

これまでだんまりを決め込んでいた昌太郎の父雄太郎が千鶴に急に駆け寄り、




「おお!みつこ、みつこじゃないか!お前、どうしてこんなところに!会いたかったぞ!」




その呆けた旦那の様子をみて加納に怒りをぶつける直前まできていた昌子ははっとなり、




「お、おとうさん。みつこは20年前に・・・」




すると、千鶴は昌子に最後まで言わせまいとするように、




「おばちゃん、いいんです。おじさんが私をみつこさんと見間違えるのも無理はないんですから。これは私の想像なんですけど、ひょっとしたらみつこさんは私の本当のお姉さんなんじゃないでしょうか?」




(ついに言ってしまったか)



できればこの言葉を千鶴には言ってほしくない碧依であったが、こうなってしまったものはもうどうしようもない。




「え?あ、あなたまさかよ、よりこ?よりこなの?でも、よりこは流産したはずじゃ」




これは、村長から聞いた話である。

雄太郎、昌子夫妻には長男の昌太郎、長女の美津子の下に実は3番目の子供頼子という女の子が生まれるはずだったのだという。

しかし、頼子は無事生まれることなく流産。

だが、頼子が生きていれば現在14歳。つまり、今の千鶴と同い年であったことを知った

碧依はこれをうまく利用できないかと妙案を思い付いたのである。

つまり、この事実を千鶴に信じ込ませることができれば、昌太郎は近所のお兄ちゃんではなく実の兄ということになる。

そうすれば、さらなる怒りに燃えた千鶴が名探偵役を引き受けてくれるのではないか、と打算したのである。




(まあ、いかに信じやすい千鶴といえどもあのぼけ老人の『みつこ』発言がなければ、ここまで簡単に丸めこめたかどうかはわかんないけどね)




「おばちゃん、いやお母さん。私お兄ちゃんの敵をとったよ。後は警察の人に任せて、変な真似しようとしないでね」




千鶴の最後の一言は、皆に感動を与えたが、その様子をみて一人複雑な心情の碧依であった。




「あ、ありがとうね。頼子、本当にありがとう」




これは、後で松本警部に聞いた話である。

加納は警察署で素直に洗いざらい昌太郎を殺害した動機を話したという。

碧依の想像通り、昌太郎と加納は以前から恋仲だった。

というより、そもそも昌太郎が美青年加納を見染めて書生として傍に置いていたらしい。

そんな二人の歯車が合わなくなったのは、昌太郎が私ももうすぐ30になるのだからそろそろ嫁の一つももらわねば周りが訝しく思うであろう、だが私はこの通りお前以外の者を愛するなどということはたとえ表面上のものであってもできん性分だ。そこで、妙案がある。この年末お主を女装させ、架空の女性を作り上げ、周囲も納得させた上でお前と事実上婚姻しようと思うのだ。いいアイデアだと思わないか?と、持ちかけられ正直加納はこの人にはついていけないと思ったそうだ。ただ、なにもそれだけでは加納もまさか昌太郎を殺害しようとまでは思わなかっただろう、と語っている。決定的だったのはあの婚姻の夜、二人で離れに行った時昌太郎から言われたたった一言だったというのだ。




「なあ、清一。このまま私と一緒に夜逃げしないか?よくよく考えたんだが、今日のこのお芝居いかに私が考えたこととはいえいかにも馬鹿馬鹿しくなってしまってなあ」




馬鹿馬鹿しい、とその一言を聞いた加納はその時初めて目の前にいるこの傲慢な男に殺意を覚えたという。

自分はあんなに恥ずかしい思いをしながら女のふりまでして、着たくもなかった花嫁衣装に身をつつんで・・・なのに、この男は自分のいたましいまでの努力を馬鹿馬鹿しいというたった一言で一笑に付したのだ。

なにが一緒に夜逃げしようだ、もうあんたの許にいるのはうんざりだ。

オレはあんたのおもちゃなんかじゃない!




と、そんな動機だったのだという。

碧依はそれを警部から聞いた時、聞くんじゃなかったと激しく後悔した。




それと、最後に碧依は警部に気になっていたことを聞いた。




「なに?なぜ私が村長に頭があがらなかったのか?だと!」




警部は苦虫をかみつぶした表情になり、碧依が知らなかった衝撃の事実を告げた。




「ああ、あのじいさんはな。今でこそただの酔っ払いの小さな村の村長として楽隠居してはいるがその昔、長野県警では知らぬもののいない鬼警部として有名だったんだ。私も若いころあの人にはずいぶん世話になったもんだ、青砥兼人警部にはな」

「あ、青砥?村長さんてそういう苗字なんですか?あの、村長さんには息子さんとかいらっしゃいませんでしたか?」

「じゃ、じゃあうちの昌太郎は、まさかこの男と?」




それはこの事実を知った時から誰もが聞きたくて、でも聞くことが憚れた質問であった。

千鶴は昌子の問いかけに頷き、




「はい、私もこれまでずっと気がつかなかったんですが、昌太郎お兄ちゃんは男の人が好きだったんですね。そして、そのお兄ちゃんのお眼鏡にかなったのがかくいう加納さんだったんです。つまり、あの婚礼の儀の本当の目的は、蘭さんという架空の女性をでっちあげることによって皆の前で堂々と加納さん、あなたと婚姻するためだったんです。そうですよね?」




皆が瞠目して加納をみている。

その視線をうっとおしげに振り払うように加納はしかし、




「はっ!馬鹿馬鹿しい!全部この小娘の推論ですよ。そういうことも可能だったという机上の空論に過ぎない!僕が昌太郎さんと恋仲だったて?どっからそんな想像が出てくるんだか、最近の小娘の考えそうなことだよ」




その言葉を聞いた碧依は少々むっとした。




(最近の小娘が別にいつもいつもそんなこと考えてるわけじゃないんだからね!)




「それに、ちずちゃん。君は何か忘れてないかい?昨夜の僕の行動をよく思い出してごらん。確かに僕は理屈上ではあの新婦に化けることは可能だろう。しかし、僕は11時半ごろに確かにそこにいる村長と話をしているんだぜ。予定とは30分ずれたが、ふもとの村からようやく帰ってこれたのが大体それぐらいの時間だったからな。勿論11時半といえば、昌太郎さんと蘭さんもまだこの場にいた時間だ。この矛盾をどう説明するつもりだ?」




しかし、千鶴はそんな加納の悪あがきにも全く屈せず、




「簡単なことですよ。あなたが村長に話しかけたのは11時半ではなく、12時にお兄ちゃんがあなたと離れに引き上げた後、つまりお兄ちゃんをあの離れで殺した後、つまり12時半ごろだったんです!」




さすがにこれには村長も千鶴の推理に異論があるようで、




「別に加納君を擁護するわけではないが、わしは確かに11時半頃この男と短い会話を交わしたぞ。それは、腕時計できちんと時刻を確認したから間違いないことだ」




千鶴はしかしその村長の言葉に表情一つ変えず、




「本当にそれは確かな記憶でしょうか?失礼ですが、村長さんあなたはあの夜あおちゃんに絡み酒を無理やり強いるほど酔っぱらっていましたよね?そんな状況での記憶が本当にすべて正しいのかどうか私には疑問なんですが」


「ま、まあ確かにそう言われるとわしも自信がもてんが。しかし、わしはあの夜この座敷で加納君と話した時確かに腕時計で11時半をさしているところをこの目で見たんだ。それだけは間違いのない記憶・・・だと思うんだが」




最後のほうはいかにも自信なさげである。

千鶴は、村長のその言葉を聞くと満足そうに頷き、




「真実はおそらくこうだったんです。あの夜、泥酔していた村長さんは確かに腕時計で今が11時半だということを知った。そこまでは真実でしょう。ですが、その時計の針に示されていた11時半という時刻は本当に正しい時刻だったのかどうか。ひょっとすると、1時間遅れた時計の針をみていたのではないか」


「つまり、わしの時計に加納君がこっそり細工をしていたと?」


「その可能性もありますが、私が思うに真実はもっと簡単なところにあると思うんです。即ち1時間遅れの細工を施した腕時計をはめていたのは、村長さんではなく実は犯人の加納さんだったんじゃないでしょうか?つまり、加納さんは泥酔している村長さんに自分の腕時計を見せ、時間を故意に誤認させるよう仕向けたのではないか、と」



村長はそれでも納得がいかないような顔をしたが、なにもこの加納を擁護することもないと思いなおしたのか渋々ながら千鶴の推理に頷いていた。

当の加納もまるで堪忍したような様子もなく、




「はっ!またなんの証拠もないただの推論じゃないか!そんなことで僕を犯人に仕立てるなんて、お粗末にも程がある。そんなに僕を犯人にしたいなら、ちゃんとした証拠をみせてもらおうか?」




碧依はこれは困ったことになったといまさらながら思う。

なにせ、現場をいっぺんしか見ていないのだ。

すべての状況証拠は加納が犯人だということを示しているものの、決定的な証拠といわれると何もないのだからこのままでは加納に言い逃れされてお終いなのである。




(ここからは、名探偵岩山千鶴の腕のみせどころだな。さあ、この大ピンチにどう出る?)




千鶴はまたふっとため息をつき、




「証拠ならあります!」




これには真相を吹き込んだ碧依本人ですら驚いた。

これもなにかのハッタリだろうかと碧依が千鶴をひやひやと見守っていると、その視線に気付いた千鶴は一瞬こちらを向いて瞬きをしたのだった。

それを見た碧依は、ここは思い切って千鶴に任せてみようと心を決める。

そして。




「加納さん、あなたは一つだけ大きなミスをしました。そのミスとは、現場に花嫁衣装を置いていったことです!」



(ああ!)


碧依は自らも見落としていた決定的証拠にその時ようやく気付いた。


(これは、千鶴に一本取られたな。名探偵を彼女に任せたのは、どうやら大正解だったようだ)


その意味に気がついたのかみるみるうちに加納の顔は青ざめていった。




「あなたはあの場に花嫁衣装を置いておくことで、現場から新婦が消えたという状況をより鮮明に皆に印象づけようとしたんでしょうね。しかし、それは少々演出が過剰すぎたようです。なぜなら、あの花嫁衣装を昨夜まとっていたのは架空の人物蘭さんなどではなく、加納さんあなた自身だったからです。つまり、あの花嫁衣装に付着しているであろう汗の成分などを鑑識に回し、あなたのものと照合して万が一一致するようなことがあればその時はもう言い逃れはできないでしょうね」




決定的だった。

名探偵岩山千鶴、見事なり。

碧依はこの即興の名探偵に心から拍手を送った。

(こんなもったいぶった演技をするなんて、ちずちゃんなかなかやるなあ)



確かに事件の真相をくまなく話したのは碧依だったが、こんな風にもったいぶってやれとは一度も言っていなかったので、この千鶴の役者ぶりにはひやひやしたものを多少感じながらも見事な度胸だと感心したのだった。



「なに?話が終わってないだと?今、君が犯人は蘭とかいう新婦で間違いないといったばかりじゃあないか」



「確かに犯人は状況から考えて蘭さんしかありえません。なぜなら、あの離れに続く道に足跡は昌太郎お兄ちゃんと蘭さんの二つしかなかったとおばちゃんが話してくれましたから。そうだよね、おばちゃん?」



まだ激昂が収まりきらない昌子だったが、その千鶴の問いかけには黙って頷いてみせたのだった。



「ふん!その女の証言が正しければだけどな。なんでもそこのガキが今朝勝手に現場に足を踏み入れようとした時、現場には足跡が3つあったというじゃないか?そうだよな?」



黙って聞いているつもりでいた碧依に警部が確認してきたので、これには少々面食らった。



「確かにそれはそうでしたけど。でも、おばさんの足跡は調べればわかると思いますが明らかに今朝ついた新しいものでだからおばさんが犯人のわけないですよ」



「ふん!別にそんなことは一言も言った覚えはないがな。犯人は蘭とかいう得体のしれない女だ。あれ以上怪しい人物はいないからな。そうだろ、名探偵さん?」



名探偵と呼ばれた千鶴はその言葉に対する返事ではなく、事件の核心をさらに掘り下げていった。



「ここで皆さんに一つお聞きしたいことがあります。そもそも、皆さんは蘭さんという女の人のことをどれだけ御存じでしたか?ひょっとすると、噂には聞いていたものの直接有ったのはあのお披露目の時が初めてではありませんでしたか?」



それに応えたのは村の噂に一番詳しいと思われる村長だった。



「そういわれてみれば、少なくともわしにとってはあの夜が蘭君というべっぴんさんを見たのは初めてだったな。しかし、他の者はかねてより蘭君がべっぴんだぺっぴんだと騒ぎ立てておったから、どこかで一度か二度あの夜以前にみたことのある村人はいるんじゃないかな?」



しかし、その曖昧な村長の答えに満足したのか千鶴は、



「ちなみに私は最近この村に帰ってきたとはいえ、あの夜まで蘭さんという方をこの目でみたことはありません。後これも他の村人の方たちに聞けばわかると思うんですが、おそらくあの夜まで蘭さんという女性をみたことのある方はただの一人もいなかったと思うんです。事実昨日この家にあおちゃんと再会する少し前に家の前で村の人が蘭さんに対してこんな噂話を立てていたのを偶然耳にしてしまったのです」



これは、勿論碧依の体験談である。

碧依が千鶴の住んでいる岩山家と間違えてこの屋敷に入ろうとしたときのことだ。

老人の一人が新婦の蘭について次のような噂話をしていたのである。



『なんでも聞くところによると、お相手の方っちゅうのが大変なべっぴんさんだっていうぜ』



「そう言っていたのです。つまり少なくともその老人は誰かから蘭さんがぺっぴんさんらしいと聞いただけで実際に見たことがあったわけじゃないです。、では。この噂は一体誰から聞いたんでしょうか?おそらくは同じ村人の誰かから聞いたのでしょうが、ではその村人も蘭さんを見たことがあるのかどうかというと、怪しいところがありますよね。勿論村人全員に裏を取らないことには本当に誰もあの夜以前に蘭さんをみたことがある人が一人もいないかどうかはわかりませんが、私が思うにそういう『蘭さんがぺっぴんらしい』と噂を立てるように誰かに吹き込んだのは、おそらく当の昌太郎さん自身だったのではないでしょうか?」



碧依以外の全員にとって、それは衝撃的な事実だったに違いない。

誰もがその事実の意味するところを、考えあぐねているような悩ましげな表情をみせている。



「どういうことだ!なぜ、昌太郎がそんな噂を流す必要がある?そんなに村人に嫁さんがべっぴんだというのを自慢したいなら、村中を連れまわして見せびらかせばいいじゃないか!」



碧依の思った通り、この警部の脳細胞は相当固いらしい。

千鶴はさらに話を続ける。



「それは、見せびらかしたくても見せびらかせなかった理由があったからですよ!なぜなら、そもそも蘭さんという女性自体が昌太郎お兄ちゃんが創った架空の人物だったからです!蘭さんはあの夜忽然と姿をわけではなく、そもそも最初から蘭さんなんて女性は存在しなかったんです!」



「な、なんだと!蘭ていう女は最初からいなかっただあ?じゃあ、あの夜ここにいるやつらがみたべっぴんの女てのは一体誰だったていうんだ!」



蘭という女性が実は最初から存在していなかった―。

松本警部、村長、昌子、加納ら関係者のほぼ全員がその事実に瞠目した表情をみせた。

千鶴の話は続く。



「では、あの夜私も含めた村の人たちみんながみた蘭さんという女性は一体誰だったんでしょう?いや、言い方を変えましょう。あの夜、蘭さんに化けることのできた村の人は一体誰なら可能だったのでしょうか?それを考えると私にはそれが可能だった人物は一人しか思いつきません。あの夜はある人物をのぞいて村の人たちみんながあの婚礼の席にいました。そのある人物とはすなわち―」



碧依はあの夜のことを思い出す。

あの夜、あの婚礼の儀の前にこんな理由で最初からその席に居なかった人物がいた。



『おっといけない、そろそろ時間だ。お嬢さん、私はこれからふもとの村まで行ってこなくちゃなりません。なので、残念ながら婚礼の儀に間に合うかどうかわかりませんが・・・』



「そう、あの夜の婚礼の儀の夜になぜかふもとの村に行くと用事で出て行ったあなた以外蘭さんの身代わりを務められる人物はいないのですよ。そうですよね?加納清一さん!」



真実を千鶴に話した碧依以外の全員がこの一言にショックを感じたようだった。

まさか、蘭と名乗るべっぴんの正体が昌太郎の書生である加納という男だったとは。

松本警部は信じられないという顔をして、加納を指さし、



「はっ、何をばかなことを。この優男があの夜蘭という女に化けてただって?そんなことがあるもんか」



加納も松本警部の発言に付随するようにおどおどとした顔で、



「そ、そうですよ。ちずちゃん、それ本気でいってるの?僕はこうみえても男だぜ?男の僕が村人全員を女として騙し通すなんて不可能だよ!」



千鶴はしかしふうっとため息をつくと、



「現にそれが可能だったんですよ。みてのとおり、あなたは男性にしては女性的な顔立ちちをしています。さらにあの夜私たちが初めてみた蘭さんという女性は、白粉を塗って化粧をしていた。歌舞伎にも女形というものがあるように、元々美しい顔立ちをしているあなたが厚化粧で塗り固め紅を引いてしまいさえすれば、これまで一度も蘭さんをみたことのない村人たちを騙すことがさほど難しいことだったとは私には思えません。事実あの夜私も含めた村人全員が見事になんの疑いをもつことなく、あの初めてみた女性が蘭さんであると完全に信じ切っていましたからね」

第7章 名探偵岩山千鶴



12月31日正午を回った頃だった。



昨夜婚礼の儀が執り行われた座敷には、長野県警の松本警部を始めとして事件の関係者が一堂に会していた。


「一体こんなところで何をする気だ?横溝の孫だかなんだか知らんが茶番もいい加減にしたまえ」



松本警部は早速激昂していた。

それに対し、皆を村長を説き伏せ呼び集めた碧依は開口一番。



「警部さん、先程はお騒がせして申し訳ありませんでした。それともう一つ二つ謝りたいことがあります」


「ふん!詰らない話ならすぐにでも引き返しさせてもらうよ。いかに村長の頼みとはいえね」


当の村長は二日酔いからまだ覚めていないのか、どこか上の空で松本警部を凝視し、



「まあまあ、少しこのお穣ちゃんの話を聞いてはもらえんかね?わしの一世一代の頼みじゃ」


「・・・ふん、少しだけですよ。こちらもガキの遊びに付き合ってるほど暇ではないんでね。で、謝りたいこととは一体なんだというんだ」



碧依はふうっと息を吐き、隣でおどおどと伏せ目がちの千鶴をちらっと横目でみやると、



「実は先程警部さんと話した時なんですが、たまたま警部さんの手元にあった捜査資料が見えてしまいまして」


「なんだと!このガキが!」


「まあまあ。そのことは謝ります。それともう一つ謝りたいことは、あれほど横溝の孫などといきりたって警部さんにつめよったのはいいんですが、やっぱり私の脳細胞ではこの事件は解けませんでした」


「言わんこっちゃない。しょせんはハッタリだったてことか」


「まあ、あの時はつい勢いで大きなことを言ってしまい申し訳ありませんでした。でも」


「でも?」


「でも、こちらにいらっしゃる千鶴さんの捜査資料のことを詳しく話してみたところ、なんとそれを聞いた彼女は一瞬にしてこの事件の全貌がわかったというものですから、さすがの私も驚きました!」



勿論、これもハッタリである。


本当は事件の全貌を閃いたのはかくいう碧依自身なのだが、松本警部に横溝の孫云々のハッタリが全く通用しなかったので、急遽村長にも信頼の厚い千鶴を探偵役に仕立てることにしたのである。

千鶴にはあの後すべての真実を語り、自分がいったままを女優になったつもりで皆の前で話して欲しいと説き伏せたのだ。

最初千鶴はこの提案に首を振らなかったが、碧依はとっておきの禁じ手を使うことによってこれを納得させたのだ。



(まあ、さすがにあれはやりすぎたけどね。さて、名探偵岩山千鶴の名推理をこれからたっぷり聞かせてもらおうか)



「なに!捜査資料を盗みみただけでなく、今度はそのガキにもしゃべっただと!どういつもりだ、貴様。ガキだからといって許されることじゃないぞ」


ますます憤る松本警部。

すると、これまでだんまりを決めていた千鶴がおずおずと喋り出し、


「あ、あの。ほ、本当にすみませんでした。でも、あおちゃんが話してくれたおかげで私には事件のすべてがわかったんです。今からお話しさせていただいても構いませんでしょうか?この事件は私にとってもお世話になったお兄ちゃんの敵討でもあるので」


「おお、お兄ちゃんの敵討とな!なんとも泣かせる話じゃあないか。警部殿、ここはわしに免じて少しばかりこの娘の話を聞いてもらえないだろうか?」



ここでも助け船を出してくれたのは村長だった。

松本警部は村長をちらとまた窺うと、ちっと舌打ちをし、



「わかりましたよ。おい、小娘。その代わり少しでも間違った推理を聞かせようもんなら、あとでただじゃおかないと思え!」



松本警部の大人げない発言に千鶴はびくっしたが、すぐに碧依のほうに目をやると安心したのか、


「では、警部さんの貴重なお時間を割いてしまい申し訳ありませんが私の話に少しばかり付き合ってもらいます。まず、この事件は昨夜昌太郎お兄ちゃんが新婦の蘭さんが引き揚げた12時以降に起こったと思われます。残念ながら死亡推定時刻までは聞いていないので、正確な時刻はわからないんですが私の推理によりますとおそらく昌太郎お兄ちゃんと蘭さんが離れに引き下がってすぐ事件は起きたと思うんですがこれは間違っているでしょうか?」


自信なさげに松本警部の顔をちらと窺い、訊ねる千鶴。

それに対して警部は、



「ふん、死亡推定時刻はおおよそ昨夜12時~1時までの間だそうだ。穣ちゃんの言うとおりだな」


悔しそうに事実を認める松本警部。



「そうですか。ならば、私の推理にほぼ間違いはなさそうです。まず、単刀直入にこの事件の犯人の名前を言わせて頂きます」



その場にいた誰もが息をのんだ。

この場に集められた関係者は、昌太郎の母昌子、昌太郎の父で痴ほう症の雄太郎、昌太郎の書生加納、そして村長の4人である。



「だ、誰なの?しょ、昌太郎を殺したのは?教えてちずちゃん」


事件の第1発見者であり、被害者の母昌子が掠れた声で千鶴問い掛ける。

千鶴はそこでふうっ、とため息をつき、また碧依のほうにちらと視線をやった後、一気にその人物の名を告げた。



「それは、警部さんがお疑いの通りあの離れで昌太郎お兄ちゃんと一緒にいて、事件後姿を消してしまった新婦の蘭さんです!」



その言葉を聞いた誰もが茫然としていた。

なんだ、それじゃあ警部殿と同じ結論じゃあないかというように、村長は千鶴のほうをいぶかしげにみた。

しかし、そんな中でただ一人、被害者の母の反応だけは違った。



「やっぱりあの女なのね!よくもうちの昌太郎を・・・」


それは、息子を奪われた母の怒りであった。


「警部さん、こんなところでこれ以上話を聞くのは無駄だわ!もういっぺん、あの女を探し出してちょうだい。今ならまだそう遠くには逃げていないはず」


警部もその母の怒りに気押されたのか、


「あ、は、はい。おい、お前らもう一度この付近を徹底的に洗い出すんだ!」


「ちょっと待って下さい!私の話はまだ終わっていません!」


それを止めたのはかくいう千鶴であった。

ただ、目ざといことだけが取り柄の碧依にはそれでも事件に関するいくらかの収穫はあった。

警部の手元の捜査資料によると、昨夜の碧依が寝てしまった後の各人の行動は以上の通り。


一、十一半過ぎに書生加納清一が座敷に現れる。証人は村長。腕時計で一一時半を回っていたから、間違いないという。

一、十二時に新朗新婦が席を外し、離れへ。

一、さらに三〇分後新朗の母昌子が自室へ引き上げる。

一、一時前に書生の加納清一がいつのまにか消えていることに村長が気付く。

一、一時ごろ千鶴が床へ入る(後で本人にも確信)

一、二時すぎに場がお開きに。村長ら老人たち就寝

一、七時五十分頃昌子が起床し、離れへ続く二つの足跡を発見。何か胸騒ぎを覚え離れへ向かうと、息子昌太郎の無残な死体を発見。その時にも既に新婦の姿はなかったという。

以上である。

これを見た刹那、碧依ははっと閃いた。


(こ、これはまさか・・・・)


事件の全貌が彼女の脳細胞の中で徐々に姿を現してくる。


(でも、証拠がない。あの人が犯人だという決定的証拠が・・・)


碧依は犯人に接触してみようかとも一瞬考えたが、もし逆上でもされたら身の危険が危ないと感じ、それは踏みとどまった。


(でもこの状況からみてあの人が犯人なのは間違いない。いや、あの人以外考えられない。ようし、こうなったら)


碧依はそこで覚悟を決め、妙案を閃く。

そして、いまだショックで寝込んでいる千鶴の許へ駆けつける。

「あら、あおちゃん。さっきから姿がみえないと思ってたけど、どこへ行ってたの?」


「事件の謎が解けたんだ!」


碧依は千鶴にそこでさらに勢いこんで、


「お願いがある。警察のやつら、私の言うことなんてどうせ聞いちゃくれないんだ。だから、そのちずちゃん」


「なあに?私でできることならなんでもいってね」


「なんでも?本当に?」


「うん。だってあおちゃんにはずいぶん迷惑かけちゃったし、だから」


「じゃあ、一生のお願いだ」


「うん」


「私の代わりにその・・・」


「あおちゃんの代わりに?」


「名探偵になって欲しいんだ!」

「むむっ、なんじゃこりゃあ」


気がつくと、隣には見覚えのある男の顔。

それは昨日酒をあれほど進めてきた好色酒乱の老人、すなわちこの村の村長氏であった。

「おぬし、東京から来た娘っ子じゃったな?これは、子供がみるもんじゃない!いいから表で出なさい。さあ、早く」


老人に急かされるように仕方なく表へ出る碧依。

外には既に昨夜から村のしきたりによりこの家に泊まっている多くの老人が顔をみせており、一体何事があったのかと注意深くこちらを見守っている。

その中に碧依は千鶴の不安げな顔を見つけ、急いでそちらへ駆け寄る。

「あっ、あおちゃん。これは一体何の騒ぎ?なんか朝におばさまの物凄い悲鳴が聞こえて、それでみんな驚いて起きてきたみたいなんだけど・・・」


ただでさえメンタルの弱い千鶴に真実をここで告げていいものか一瞬迷った碧依ではあったが、迷った末にどうせ警察がきたら嫌でも知ることになるんだからと思い、今自分の目で見てきたありのままを話した。


「え?お兄ちゃんが中で日本刀で刺されて・・・・いやあああ」


案の定、そのまま気を失ってしまった。



それからのことは正直わずらわしいことばかりだった。

警察(といっても地元の駐在)が到着し、現場の観るも無残な光景をみるや長野県警本部にすぐに連絡。

数時間後、長野県警が到着するともはやただの中学生にすぎない碧依の出番はなく、さしたる確証もないまま現場から消えた新婦が第一の容疑者となり、付近の大捜索が行われた。

しかし、それにも関らず新婦岩山蘭(旧姓は金子というらしい)はまるで雲隠れしてまったかのように、その姿は杳として知れなかった。

このまま事件が解かれぬまま長引けば、新年公演に帰れるかどうかも危ういと危機感を感じた碧依はそこで長野県警の松本警部にとっておきのハッタリをかけることにした。

これが果たして通じるかどうか不明だが、もう碧依にはこの手しか残されていなかったのだ。


「警部さん、ちょっといいですか?」


強面の松本警部はああん、とやくざのような凄みをきかせ、


「なんだ、穣ちゃん。あんた、東京からきたっていうがもう帰りたくなったのか?悪いがあんたにはとばっちりな事件かもしれんが、念のためもう少しここに残ってもらうよ。

いいね?」


と、まるで子供扱い。事件の容疑者にされないだけまだいいが、これではこの警部を攻略するのにはかなり手こずりそうである。


「あの、うちのひいおじいちゃんが実はかの有名な探偵作家横溝正史なんですけど」


切り札とはようするにこれである。


しかし、松本警部はそれがどうしたと言いたげに眉を潜め、


「ああん?おじいちゃんが横溝なんだって?有名な探偵作家?だからどうしたってんだ。これは紙の上で起きた事件と違うんだ。現実に起きた凄惨な殺人事件なんだ。悪いがおじいさんが誰だか知らないが、ひっこんでいてもらおうか。おい、高木。このお穣ちゃんに飴でもやって、とっととお引き取り願ってもらえ。はっはっは」


結局、碧依の切り札もまったく相手にされず、高木というラグビーでもやっていたんじゃないかと思われる大男の若い刑事に無理やり捜査本部の外へ追いやられたのだった。

現実は漫画のようにうまくはいかないものである。