~第5巻「ドラゴンフライ」~
第4巻「帰還」から、さらに約10年後、再び作者はアースシーを描き始めました。
それがこの第5巻と最終巻「アースシーの風」です。
この第5巻は日本語訳の発売当初は「ゲド戦記外伝」と名付けられました。
5つの短中編の物語からなり、まさに外伝の位置付けです。
しかし、ごく最近、発行元の岩波書店は「外伝」から「ドラゴンフライ」に改題して第5巻とし、「アースシーの風」を第6巻にしています。
私もこれに賛同しますので、このブログでも、この順番で紹介します。
本書の中で、ゲドが登場する物語はひとつだけです。
それも主人公ではありません。
表題となっている物語「ドラゴンフライ(トンボ)」は、ゲド戦記の時間軸において、第4巻と第6巻の橋渡しになる物語です。
第6巻の大きな布石になっています。
「カワウソ」はゲドの時代から何百年も昔の暗黒時代の話で、魔法学院の誕生に至る物語。
「地の骨」はゲドの師匠オジオンが登場する物語。
などの短中編からなります。
最後に「アースシー解説」として、作者による物語世界の歴史や習慣などが簡単に書かれており、ゲド戦記の舞台が理解し易くなります。
この巻は、主役級が登場せず、つまらないと思う人もいるかも知れません。
この巻を飛ばして、先に最終巻「アースシーの風」を読んでも特に支障はありません。
しかしながら、この巻は、物語世界と作者の思想をより深く理解できますから、最後にでも是非読んでもらえたらと思います。
では、次回は、いよいよ最終巻の紹介です。