何気ない日常を書いてみました。
ラブコメにトライするも、やはりオイラには難しかった。(^-^;)
題名は「後ろ姿」かな?
藤村康太は図書館で自習していたが、一時間ほどで飽きてしまった。このまま帰るかどうか迷った。
少しだけ、やっていくか。
重い鞄を肩にかけ、グラウンド沿いの道を歩く。いつの間にか、空が灰色の雲に覆われている。授業が終わったときは晴れてたのに。
あ。やべ。傘持ってないぞ。
そのうち弓道場に着く。道場の扉を開けて、中を見ると、杉山莉奈がいた。莉奈は背を向けていて、ちょうど矢を放ったところだった。康太は彼女の後ろ姿を見た。
何度か目にしたことがある。杉山の残心は綺麗だった。
何故だろう。腕の位置? 背筋が良いから? 袴のせい?
康太は道場に上がると、日章旗に向って頭を下げた。
「おっす。お疲れ」
「藤村くん。お疲れ」
同じ二年生だが、康太と莉奈はあまり会話をしたことがない。特に理由はなく、たまたま交友関係が近くないだけだった。
「全然人がいないな。他のみんなは帰ったの?」
「うん。なんか、雨が降りそうだから、みんな急いで帰ったよ。私もそろそろ帰る」
「そう言うことか」
莉奈は矢を取りに行った。
「藤村くーん! これから練習するのー? やらないなら的を片付けちゃうけどー」
的場から莉奈が声を張り上げた。
康太は一瞬迷った。
「俺も止めとくわー」
「りょー」
矢取道を戻ってくる莉奈は空を見上げた。
「なんか、雲が黒いよ。やばい感じ。私、着替えるね」
莉奈は更衣室に入っていった。
康太は射場から空を見た。
「あーあ。降ってきやがった」
大粒の雨だった。すぐに土砂降りになり、雨音が大きく響いた。辺りは薄暗かった。
康太は入口の土間にある傘立てを見た。空だった。
どうするかな。
制服に着替え終えた莉奈が更衣室から出てきた。
「えー。マジか。土砂降りじゃん。私、傘持ってないよ。置き傘あったよね」
「いや、ないよ」
「なんで? あ。みんな、持っていったんだ」
「だな」
「光った……」
間もなく、大きな雷鳴が響き渡った。莉奈は体を強張らせた。
「藤村くん、家は遠いの?」
「いや。近いよ」
何でそんなことを聞くんだろう。
「どうかした?」
「えっ? あ。いや。雨が止むまで、ここにいたりしないかなって……」
「家が近くても遠くても、ここで雨宿りするしかないよ」
「ああ。そうだね」
「杉山さん、やっぱり雷が怖い?」
「こ、怖いに決まってるじゃん!」
「ゴメン。でも、そんなに怒らなくても……」
「……」
莉奈は恥ずかしそうにした。
「あ。そうそう。雨雲レーダーは、と」
康太はスマホを取り出して調べた。
「あと15分くらいで止みそうだよ。ほら。赤いのは東に行くよ」
康太はスマホを莉奈に見せ、莉奈が覗き込む。
「ホントだ。良かった」
二人は、しばらく、ぼんやりと外を眺めていた。会話がなかったが、激しい雨が気まずい空気を消していた。時折、雷鳴がすると、莉奈がわずかに反応した。
「なんか、明るくなってきたよ」
「だね」
そのうち、雨が止むと、辺りが黄色くなってきた。
「じゃあ、帰るか」
「うん。帰ろ、帰ろ」
「急に元気になったね」
康太は笑顔で莉奈に言った。
「あ。バカにしてるでしょ。怖いものは怖いの」
「いや。そんなつもりは……」
莉奈は笑っていた。
康太はほっとした。
道場の戸締りを終えて、二人はグラウンド沿いの道を歩いた。西の空に浮かんだ雲が橙色に染まっていた。
「綺麗」
「そうだね」
街中の交差点の手前で康太の乗る自転車が停まった。その隣に莉奈も自転車を停めた。
「俺、こっちだから」
「私、あっち」
「そうか。じゃあ、また」
「うん。じゃあね」
康太は信号待ちだったので、莉奈の後ろ姿を見送った。赤く染まった夕暮れを背景に、自転車に乗った莉奈が遠ざかっていく。
残心だけじゃないな。
(終わり)




























