CROWN PLUS Level3 Lesson 7 | どっかの大学生のブログ

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人が見えなくなる物語は多く存在する。しかし、目に見えなくなる事は本当に可能なのだろうか。それとも、虚構の中でのみ起こりうるのだろうか。
プラトンの「国家」の中でグラーコンと呼ばれる人物が、自分を見えなくする指輪を見つけた貧しい羊飼いのギュゲスの話をしている。ギュゲスは首都へ行き、王を殺し、そして自らが王になる。グラーコンは自分の姿を消す指輪を見つけてしまったら、誰であってもそれを盗みと殺人のために使うだろうといっている。彼は罰せられるのを恐れているので、人々はただ法を守る、と考えている。
最近の有名な目に見えなくなることについての物語では、趣旨がほんの少しだけ違っている。1897年、イギリス人作家のH・G・ウェルズは「透明人間」という小説を書いた。主人公は自分自身に新しい薬の実験をした若い科学者だ。彼は目に見えなくなり、人々を騙すのを楽しむ。徐々に、彼は精神的に乱れていく。彼は自分を助けてくれる古い友人を殺そうとする。二人は戦い、そして透明人間は殺される。ウェルズの伝えたいことは、ことわざを用いるならば、力は人を腐敗させ、絶対的な力は人を絶対的に腐敗させる、ということのように思われる。
H・G・ウェルズはまた、エイリアンの地球侵略についてや時間旅行についての有名な小説を書いていて、そして、目に見えないというようなそれらの発想は多くのSF小説の中で使われている。アメリカの人気シリーズの「スタートレック」にはロミュラン星人と呼ばれるエイリアンの種族が登場し、彼らは姿を隠す装置を持っていた。この装置を使いロミュラン星人は、彼らの宇宙船を隠し、予告なしに攻撃することが出来た。幸運なことに、彼らは少なくとも自分達の兵器を発射するためには、姿を隠す装置をしっかりと切らなくてはならなかった。
姿を隠す装置を持ったその他のエイリアンは、同名の映画の中のプレデターである。この生物は他の惑星から人間を狩るために南アフリカのジャングルにやってくる。彼の姿を隠す装置は、彼が姿を見られずに人を追う事と攻撃する事を可能にした。人間の主人公に対する最後の戦いで、水の中に落ち攻守の立場が逆転する。エイリアンの姿を隠す装置は故障し、一方で主人公は泥にまみれてエイリアンから見えなくなった。
SF以外でも目に見えないことはまた、魔法の話の中において一般的な発想である。シェイクスピアの「マクベス」のなかで、邪悪な魔女は自らを目に見えなくし、そして彼が晩年に書いた「テンペスト」で、善良な精のエアリアルも姿を隠す力を持っている。ハリーポッターの本の中で主人公は透明になれるマントを与えられるが、そのマントは見た目と感触は水のようで、彼が大きな危険を回避するのを助けるのだ。
プラトンからハリポタまで、目に見えなくなることは奇妙にも強力な発想である。しかし、近いうちにこのアイデアが実現することは可能なのだろうか。人間は自らを目に見えなくすることは本当に出来るのだろうか。
目に見えなくなるために、私達はメラニン(肌の黒色を濃くしたり、薄くしたりする)とヘモグロビンの2つの主要な人間の肌の色素をなくさなくてはならないだろう。メラニンは、太陽光の紫外線から私達を保護するのを助ける。もしあなたが休日日焼けして帰ってくるならば、それはより多くのメラニンを肌に持っているからである。もしあなたにしみ、そばかすがあるならば、それもまたメラニンである。
メラニンは色々な場合、私達にとって便利であるが、生命に関わるものではない。なくても私達は生存できるだろう。他方では、ヘモグロビンは私達がする全ての呼吸に不可欠である。血中のヘモグロビンは肺で酸素と結びついて(赤くなる)、そして体中に酸素を運ぶ。貴重な酸素がそれを必要とする細胞に届けられた時(酸素を失うにつれて青くなる)、ヘモグロビンはもっと酸素をとるために肺に戻る。このために、静脈(心臓へ向かう)は青く、もう一つの動脈(心臓から血液を運ぶ)は赤いのである。
確かに、多くの透き通った深海生物がいて、それどころかヘモグロビンを使わずに酸素を運ぶ、魚の一種「氷魚」さえいる。しかし、自分を透明にするのは私達人間には決して出来ないように思われる。私達はカラフルなヘモグロビン無しでは生きられないのだ。
それなら、もしウェルズのような化学的方法が不可能で、また魔法も認めないならば、何かの隠す装置が私達が見えなくなる唯一の手段のようだ。当然、軍隊はこの発想に大変興味を持っている。それは完璧な迷彩服だろう。アメリカの「透明兵士」と呼ばれる研究計画では、色を変えられる一種の毛布かポンチョのようなものを作ろうとしている。緑色の森では緑色になるだろう。砂だらけの砂漠では黄色になるだろう。センサーや携帯コンピュータを使いながら、この種の自発的な迷彩服は、兵士の動きに伴い、タコの表面のように色を変えるだろう。または、もしある兵士が見てもらいたいならば、自発的な迷彩服は逆に働くことが出来る。救出を待つ傷ついた兵士は、自分の迷彩服をまぶしいオレンジ色をぴかっと光らせるように設定することが出来るだろう、一例を挙げるならば。
自発的な迷彩服の一つの問題点は動力である。液晶画面のついた携帯コンピュータを考えてみなさい。さて、画面があなたの周りを全て包むのに十分な大きさのしなやかな毛布であると想像しよう。ある兵士が何ヶ月も、あるいは何週間もずっと戦場にいたとしても、今の時点ではバッテリーはほんの数分しか動力を供給できないだろう。
もう一つ別の問題は有効範囲である。あなたがレンガの壁から10mのところに立っているのを想像してみよう。その距離では、レンガの間の線はあまり人目を引かず、そうして単純な赤茶色のカモフラージュはたぶん成功するだろう。しかし5mなら、この単純なカモフラージュはおそらく失敗するだろう。そのカモフラージュが始まるところで、レンガの間の線が途切れるのはとても目立つだろう。
3つ目に、液晶画面は熱を発する。毛布大の画面は、それにいくつかの新たな表示技術を使わない限り、発する熱のせいで赤外線センサーによって着用者の姿を丸見えにさせてしまうだろう。
しかし、これらの問題は全て解決できるようにみえる。より良いバッテリー、小さくて処理が早いコンピューター、熱を発しないで作動するディスプレーはいつか全て解決できるだろう。30~50年後、その時、透明兵士―そして、目に見えない戦車や戦艦や戦闘機―は実現するのだろうか。目に見えない銀行強盗は、人々が家に帰るまで銀行の中で簡単に待っていられるだろうか。目に見えない暗殺者は、総理大臣官邸か大統領執務室にこっそり入れて、そしてまた、見られないでこっそり行ってしまうことが出来るのだろうか。
そんな発想は現実離れした世界のもののように思えるかも知れないが、しかし、アーサー・C・クラーク曰く「全ての十分に発達された技術は、魔術と見分けがつかない」。おそらく、私達は皆、透明人間を警戒した方がいいのかも知れない!