◆第007位 『いちばんすきな花』

 評価:80点/脚本:生方美久/フジ/木曜22時/出演:多部未華子・松下洸平・今田美桜・神尾楓珠/全11話/平均視聴率:5.1%

 

 多部未華子・松下洸平・今田美桜・神尾楓珠のクワトロ主演の社会派ドラマ。

 クワトロ主演とは、四人全員が、主演との意味で、「クワトロ」は、イタリア語で、「四つ」、「四種類」等を意味している。

 筆者は、W主演、トリプル主演を聞いたことがあるが、クワトロ主演は、初めてである。

 本作は、様々な生きづらさを抱えた、四人の主人公達が、偶然に出会い、男性の自宅に集まり、友情を育む、社会派ドラマである。

 四人は、特に、予定を決めずに、男性の自宅に遊びに来ては、話をしたり、ゲームをしたり等、特別なことはしないが、自分の居場所になっている。

 本作の主人公の一人、潮ゆくえを演じるのは、多部未華子。

 新潟から上京し、東京において、妹と二人暮らしをしている。

 幼少期から、相手の話に共感を示すことが、苦手であり、学校では、気を読んで周囲の雰囲気にそれとなく歩調を合わせることで、毎日をやり過ごしていた。

 そのため、そのため、人間関係を教える場所である、学校の教員にはなれないと思い、塾講師となった。

 第一話で、ゆくえは、なんでも話せる、男友達の赤田から、「もう会えない」と言われ疎遠になり、救いを失ってしまう。

 赤田は、峰子と結婚することになり、峰子が、「男女の友情は成立しない」との考えの持ち主であった。

 ゆくえは、花屋で、息子の椿の結婚祝いを届けて欲しいと頼まれると、椿の自宅に行った際に、偶然、夜々と出会い、紅葉と再会する。

 主人公の一人、春木椿を演じるのは、松下洸平。

 白波出版に勤める会社員。

 実家は、花屋の「フラワーショップはるき」。

 彼女の純恋と結婚間近になった際、彼女の男友達の森永に取られて、結婚が、白紙になる。

 本来は、純恋と暮らすはずであった、住宅に住んでいた。

 ゆくえが、椿の母の鈴子に椿に花を届けるように頼まれ、ゆくえ、夜々、紅葉と出会う。

 主人公の一人、深雪夜々を演じるのは、今田美桜。

 表参道の美容院「スネイル」で働く、美容師。

 見た目が、非常に綺麗なため、異性には、友情ではなく、勝手に恋愛に勘違いされ、同性からは、妬まれるため、「1対1で、人と向き合うのが怖い」との思いを抱えている。

 「スネイル」を利用した、椿が、社員証を落としたため、椿の住宅を訪れた際、ゆくえ、椿、紅葉と知り合うようになる。

 主人公の一人、佐藤紅葉を演じるのは、神尾楓珠。

 新潟から上京して、イラストレーターの夢を追いかけるが、現在は、コンビニのアルバイトをしている。

 ゆくえの幼なじみ。幼少期から、楽しく、薄っぺらい、話をするだけの友人は、大勢いたが、便利な時だけ、使われていた。

 高校三年生時の数学の非常勤教師、「先生」に会うため、年賀状で、住所のみが分かっていた、住宅に会いに行ったが、その家には、椿が住んでおり、先生は、既に引っ越していた。

 その際に、住宅を訪れた、ゆくえと再会し、椿や夜々と知り合い、四人で、友情を育むことになる。

 物語の終盤、椿の前に住んでいた、「先生」が、ゆくえの中学時代の塾の講師、椿の同級生、夜々の従姉妹であり、四人の共通の知り合いであったことが、判明する。

 共通の知人、志木美鳥を演じるのは、田中麗奈。美鳥もまた、生きづらさを感じていた。

 本作は、様々な生きづらさを抱え、大多数側ではなく、少数派で、生きることを引き受ける、素晴らしい作品であった。