評価:60点/作者:松原謙一/ジャンル:生命/出版:2002年

 

 『遺伝子とゲノム~何が見えてくるか』は、遺伝子及び、ゲノムについて、急速に話題の増えた、2002年に書かれた、分子生物学に関する、解説書である。

 本書は、2023年現在の21年前に執筆されているため、分子生物学は、更に、発展している。

 本書の作者である、松原謙一氏は、1961年に東京大学大学院化学系研究科博士課程修了。

 金沢大学医学部助手を経て、1964年、九州大学医学部助手。

 同年、米・ハーバード大学生物学教室研究員。

 1967年、米・スタンフォード大学医学部生化学研究員。

 1968年、九州大学医学部助教授。

 1975年、大阪大学医学部教授、1978年、同大学分子遺伝学研究施設長、1982年、同大学細胞工学センター教授、1987年、同大学センター長。

 1998年に、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科教授及び、財団法人国際高等研究所副所長。

 1989年には、国際ヒトゲノム機構の初代副会長に就任している。

 松原謙一氏は、ハーバード大学、スタンフォード大学等、国際的に活躍し、最終的に、国際組織の国際ヒトゲノム機構副会長に就任した、ヒトゲノムに関する、第一人者である。

 本書の他の単著は、1976年の『プラスミド』、1990年の『「ヒト」の分子生物学を提唱する』、2002年の『ゲノムの峠道』の三作品があり、2002年以降、著書はない。

 松原謙一氏は、遺伝子組み換え技術を使用して、型肝炎ウイルスのゲノム研究を進め、酵母を使い、ワクチンを大量生産する道を拓いた。

 更に、1999年には、ベンチャー企業の「DNAチップ研究所」を立ち上げ、日本国内のDNAチップの開発を積極的に行った。

 本作は、最初に「遺伝子・ゲノム・DNA」と題し、遺伝子とゲノムの研究を二つに分け、生命のしくみを理解すること、生命の関係とその歴史を理解することについて、解説する。

 遺伝子の本体は、DNAと呼ばれる、長い鎖状の化学物質で、DNAを作る、基本単位は、ヌクレチオドという、リンを含んだ物質で、AGCTの四種類しかない。

 次に「メンデルからゲノムまで」と題して、遺伝子研究を三期に分けて、解説している。

 1865年、メンデルが、論文を発表したことによって、遺伝子研究が、始まったのである。

 20世紀の終わりに、「組織やからだの分子生物学」の時代に入り、全部、調べ尽くそうと、「ヒトゲノムプロジェクト」が始まり、遺伝子から、ゲノム解析に変容したのである。

 「遺伝子・ゲノムから、生命のしくみを理解する」は、私達が、生まれ、育ち、生活し、子孫を残し、死ぬという、一生は、ヒトゲノムの四万程の遺伝子を統合した、システムに司られているとする。

 そして、遺伝病及び、遺伝子の変異と先祖、からだ作りを解説する。

 「ヒトゲノムを読む」「ゲノムからヒトの歴史を知る」「ゲノムから生命の関係を考える」「ゲノムの黙示」の四章では、ヒトゲノムの概要版のメッセージを読む、現代人類の起源、安定だが変化する、ゲノムDNA、進化、個人差について、解説している。

 本書は、2002年の出版のため、最新の情報ではないが、入門書としては、読み易いかもしれない。

 

[https://book.blogmura.com/bookreview/ranking_out.html" target="_blank にほんブログ村 書評・レビュー]