評価:075点/連続ドラマ/TBS/火曜日21時/全十壱回/脚本:清水曙美

 出演:米倉涼子・高島礼子・瀬戸朝香・香椎由宇・高橋克典/平均視聴率:6.1%
 放映期間:2005年7月7日~9月15日

 

 1963年に単行本が、刊行された、山崎豊子の同名原作小説の実写ドラマ化。

 本作の実写化は、1963年の映画及び、1963年のテレビ朝日、1970年のフジテレビ、1984年の日本テレビ、1991年のTBS、1975年のTBS、1994年のテレビ東京に続き、八回目となる。

 女系家族の老舗、「矢島商事」の社長の死に伴い、社長の子供を妊娠中の愛人及び、社長の三人の娘達の遺産相続争いの物語である。

 原作は、戦後間もない、大阪の船場を舞台とするが、2005年版の本作は、時代設定を2005年に変更している。

 筆者は、2020年のBSの再放送によって、本作を見た。

 時代設定を、2005年に変更したため、矢島家の三人の娘達の価値観は、時代錯誤が、甚だしく、2020年時点では、最早、尋常でない。

 山崎豊子の原作は、『不毛地帯』『華麗なる一族』の様に時代設定を変更すべきでないと思える。

 第一話の冒頭で、死去する、矢島商事の社長、矢島嘉蔵を演じるのは、森本レオ。

 嘉蔵の愛人、本作の主人公、浜田文乃を演じるのは、米倉涼子。

 二人は、31歳の差に関わらず、真剣に互いを愛し合っており、文乃は、自分の命を賭け、嘉蔵の残した、お腹の子供を産むことを決意する。

 矢島家の長女、矢島藤代を演じるのは、高島礼子。

 女系家族の惣領娘として、育てられたため、傲慢で、我儘な性格。

 一度は、両親の反対を押し切り、強引に他家へ結婚したが、三年で、離婚し、矢島家に出戻った。

 彼女が、遺産相続に異議を唱えたため、骨肉の争いとなる。

 矢島家の次女、千寿を演じるのは、瀬戸朝香。

 長女の藤代に子供がいないために、千寿の夫、沢村一樹の演じる、婿養子の良吉が、矢島商事の次期社長になる。

 千寿は、不妊治療に通うが、子供ができないため、一時は、文乃の子供を養子にしようと企む。

 矢島家の三女、大学生の雛子を演じるのは、香椎由宇。三

 姉妹の母、松子の妹であり、三姉妹の叔母の芳子を演じるのは、浅田美代子。

 雛子は、財産に興味がないが、芳子は、自分の分家の会社が、倒産寸前のため、雛子を養子とし、その相続財産を手に入れようとする。

 矢島商事の専務、大野宇市を演じるのは、橋爪功。

 矢島嘉蔵の遺言の執行人。矢島家には、先々代から、真面目に仕えていたが、矢島家の財産及び、会社の金を横領していた。

 遺産相続に当たっては、矢島家の財産の一部を横領しようとする。

 日本舞踏、梅村流の家元の庶子、梅村芳三郎を演じるのは、高橋克典。

 紳士的に振る舞うが、実際は、冷酷非情な金の亡者。

 藤代の相談に乗る振りをして、不動産財産の一部を掠めようとし、更に、文乃に近づき、利用して、矢島家の財産を狙う、ある意味、本作、最大の悪役。

 本作は、宝くじの当選の数倍の数億円の遺産を相続できるにも関わらず、なお、満足できず、遺産相続争いをする、醜い、物語である。

 そして、三姉妹に、虐められた、文乃が、最後に勝利し、三姉妹が、女系家族の呪縛から、解放される点が、救いであった。