◆第010位 『家庭教師のトラコ』

 評価:080点/脚本:遊川和彦/日テレ/水曜22時/出演:橋本愛・中村蒼/全10話/平均視聴率:5.8%

 

 志望校合格率100%を誇る、「家庭教師のトラコ」が、小学受験、中学受験、東大受験の三つの家庭において、勉強を教えるのではなく、家族を再生させる、ホームドラマ。

 しかし、物語後半は、トラコの真の目的が、明かされる、サスペンスドラマである。

 本作の主人公、根津寅子を演じるのは、橋本愛。

 家庭教師の相手によって、コスプレ、キャラの設定を行っている。

 教育方針に口を出さない、授業中は、部屋を除かない、授業の日は、その家に泊めてもらうとの三つの条件を守れば、相手の決めた、授業料で、家庭教師を引き受ける。

 寅子は、七歳の時に、母親に捨てられ、児童養護施設にて、育てられた。

 非常に頭が良いが、孤児の寅子は、大学に進学できず、高卒である。

 貧乏なために、世の中の不公平、辛い思いを、数多く、経験しているため、世の中への深い憎しみを抱いている。

 寅子の秘書、福田福多を演じるのは、中村蒼。

 寅子と同じ、養護施設の出身で、十二歳の時、裕福な里親に引き取られ、東大に進学し、財務省の官僚になっていた。

 三年前に、寅子と再会し、財務省を辞めて、寅子の秘書になる。

 十二歳の時の里子選びの際、寅子の自転車に細工して、寅子に怪我をさせ、自分が、里子になったため、寅子に後ろめたい気持ちを抱いていた。

 娘の知恵を小学受験させる、新聞記者の中村真希を演じるのは、美村里江。

 正義感が、非常に強いため、不正を暴くために、会社の指示に従わず、新聞社を辞めてしまう。

 自分が正しいと思い、寅子に周りに助けを求めないことを怒られ、夫と娘の助けを得て、フリーライターになる。

 定食屋「万福亭」を一人で、切り盛りする、シングルマザーの下山智代を演じるのは、板谷由夏。

 父の死後、名物の「角煮定食」を守るため、夫と離婚し、シングルマザーになった。

 胃がんになり、息子の高志に残せる、お金がないため、追い詰められるが、無事に手術は、成功する。

 メガバンクの頭取の妻、上原里美を演じるのは、鈴木保奈美。

 元銀座のクラブのママで、現在の夫の愛人であったが、前妻の死後、正式に結婚した。

 しかし、前妻の息子、娘達には、家族として、認められず、自身の息子の守と共に、馬鹿にされ続けている。

 寅子は、授業の際に、勉強を教えるのではなく、お金の正しい使い方を考えさせることによって、思考能力を引き出し、勉強をやる気にさせる。

 最初に、子供の心を捉え、家庭の問題を解決して、母親の心を捉えると、家庭教師を辞めると言い出し、復帰の条件を突き付ける。

 寅子の真の目的は、税金の無駄遣い、貧困格差等を無くすため、正しくお金を使うことである。

 そのために、寅子は、真希、智代、里美を利用して、里美の夫、利明の秘密を奪き、利明を脅迫し、十億を奪うと、慈善団体に寄付したのである。

 以前、知事から、同様にお金を強請り取っている。

 脅迫、詐欺によって、不正な金を奪い、正しく使うことによって、世界を変えるとの寅子の目的は、遊川和彦らしい、作品と言える。

 六話まで、家族再生の「ホームドラマ」を強調し、最終四話にて、寅子の目的を明かすのは、面白い、設定であった。

 最終的に、寅子は、母を見つけるが、死に目に間に合わなかったが、イイ教師になって、終了したのが、救いと言える。