評価:85点/作者:村上春樹/ジャンル:文学/出版:2002年
『海辺のカフカ』は、村上春樹の長編小説の第十作。
村上春樹の作品としては、珍しく、十五歳の少年が、主人公である。
村上春樹の作品は、基本的には、『風の歌を聴け』以降、二十代~三十代の主人公、そして、離婚歴のある場合が多い。
本作は、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』と同様に、中野区野方に住む、二人の主人公の別々の物語が、交互に進むが、本作は、時間軸が、並行して、進展する。
また、本作の二つの物語は、双方共、現実世界である。
本作の主人公、「僕」は、田村カフカ。
田村は、本名であるが、カフカは、偽名である。
僕には、顔を覚えていない、母と血の繋がらない、姉がいるが、生き別れている。
彫刻家の父は、僕に「母と交わり、父を殺し、姉とも交わる」とのギリシア悲劇のオイディプスの呪いの言葉を放ったため、十五歳の誕生日に家出する。
「僕」には、「カラス」と呼ばれる、少年が、アドバイスをするが、「僕」自身の内面の声と考えらえる。
僕は、夜行バスに乗って、四国の高松に行き、甲村記念図書館を訪れる。
そして、図書館司書の大島さんと、館長の佐伯さんの好意により、図書館の雑用係として、住み込むことができるようになる。
僕は、五十代の女性の佐伯さんを母だと考える。
本作のもう一人の主人公は、六十代の男性、ナカタサトル。
ナカタさんと呼ばれている。戦争中の疎開地での何かの影響によって、頭が悪くなり、字が読めなくなる。
その代わり、猫と話せる、魚、ヒル等を降らせる、不思議な力を持っている。
ナカタさんは、猫と話せるため、迷子の猫を探し、謝礼を貰っていた。
猫のゴマの捜索を頼まれた時、ウィスキーのジョニー・ウォーカーに扮した、男性の家に導かれる。
彼は、近所の猫を捕まえると、身体を切り裂き、その心臓を食べていた。
ナカタさんは、その姿を目の当たりにし、夢中になって、ジョニー・ウォーカーを殺害する。
ナカタさんは、トラックをヒッチハイクして、旅に出る。
富士川サービスエリアにて、中日ドラゴンズの帽子を被っている、二十代半ばのトラック運転手の星野青年に出会う。
星野青年は、ナカタさんが、世話になった、死んだ、じいちゃんに雰囲気が、似ており、ナカタさんの面倒を見て、仕事終了後、一緒に旅をすることになる。
「僕」が、甲村記念図書館に住み込む前、高松で、血まみれの服を着て、気絶していた。
その日は、夜行バスで、知り合った、二十代の美容師の女性、さくらの家に泊めて貰った。
僕は、さくらを血の繋がらない、姉ではないかと考える。
その晩、僕の父が、中野区にて、殺害され、警察が、捜査を始める。
ジョニー・ウォーカーが、僕の父と思われる。
本作は、村上春樹の真骨頂である、現実世界へのファンタジーの介入である。
「僕」と、ナカタさんの二つの物語は、高松にて、交わることになる。
現実から、離れた、森の中、入り口の石等、謎の解けない、ファンタジー要素満載で、必読の作品である。
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