あなたは「Hard Times Come Again No More / ああ、 厳しい時代よ もう来ないで」

     ”その歌は 疲れ切った人々のため息 野辺に響く嘆きの声か”

と言う歌が有るのをご存知だろうか?この作曲者の他の歌は多分知っていると思う。

 

「おおスザンナ/草競馬/スワニー河(故郷の人々)/金髪のジェニー/ケンタッキーの我が家/主人は冷たい土の中に」などを作り 今も”アメリカ音楽の父”と称されるこの人

         ダイヤオレンジスティーブン・フォスターダイヤグリーンである。

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スティーブン・コリンズ・フォスター(Stephen Collins Foster)1824年~1864年

19世紀半ばのアメリカ合衆国を代表する歌曲・作曲家。20年間に約200曲を作曲し、その内訳は135曲のパーラーソングと28曲のミンストレル・ソングである。多くはメロディの親しみやすい黒人歌、農園歌、ラブソングや郷愁歌である。

 

アイルランド移民の子孫で、ペンシルベニア州比較的裕福な家庭に生まれた。しかし当時のアメリカでは現代的な意味で「作曲家」という職業分野は確立されてはいなかった。その結果、音楽著作権や作曲家の印税に対する配給の乏しさのため貧困を極めて37歳の時に風邪が元で死亡した。

現在は1966年に合衆国としてスティーブンフォスター・メモリアルデーが制定され、毎年1月13日が記念日となっている。

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さて本題である。アイルランドやアメリカでは2つの歴史的な事実(1845年アイルランドからアメリカへの移民・1937年アメリカ大不況)を踏まえて、音楽家に大切な歌として受け継がれている。日本では知る人は知るが、一般的にあまり知られていない曲と思う。

 

音符「Hard Times Come Again No More/ああ、厳しい時代よ もう来ないで」

 唄:アイルランドを代表する歌手メアリー・ブラック、モウラ・オコンネルほか

 

フォスターがこの曲を作ったのが1854年で、アイルランドが深刻な食糧(ジャガイモ)の飢饉や疫病・伝染病のため、多くのアイルランド人にとって国外脱出が唯一の生き残る手段になった。アメリカに劣悪な船で移住し始めたのが1845年からで、その数は爆発的に増え数百万人に上った。

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またその90年位後にアメリカで1937年に始まった世界恐慌は次の動画を見ると分かるが、悲惨なものであった。失職し今で言う難民の様なテント暮らしは当たり前で、職を求めて人々は農村や都市を彷徨った。

J・スタインベックの1939年の小説「怒りの葡萄」にも描かれていて、スタインベックは1940年にピュリッツア賞を受賞し、後のノーベル文学賞も受賞(1962年)も、本作を受賞理由としている。豊かなアメリカにもその様な時代があったのだ。だから心からの願いで、今日まで歌い継がれていると思う。

音符 唄:Mavis Staples/メイヴィス・ステイプルズ

歌詞和訳:

1) 人生の楽しみの中で立ち止まり
   その多くの涙を数えて見ないか
   貧しい者たちと悲しみを分け合いながら

   永遠に耳に残り続ける歌がある
   ああ、厳しい時代よ もう来ないで

(コーラス)

   その歌は 疲れ切った人々のため息
   厳しい時代よ もう来ないで
   それは幾日も小屋の戸から離れない
   ああ、厳しい時代よ もう来ないで

 

2) 歓喜や美 明るく陽気な音楽
   一方で 戸に倒れ込む儚い人影
   彼らに声はない だがその姿は訴えかける
   ああ、厳しい時代よ もう来ないで

(コーラス)

   青ざめうなだれた乙女 懸命に働いている
   疲れ切った心 より良き日々は終わった
   陽気な彼女の声 だがそれは日々のため息
   ああ、厳しい時代よ もう来ないで

 

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音符これもアイルランド在住やアメリカ・カナダに移住した子孫たちが唄っている・・

メアリー・ブラック(アイルランド)エミルー・ハリス(アメリカ)ケイトとアナ・マッガリグル姉妹(カナダ)などが唄う・・私の好きな歌手ばかりです。

 

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これは決して過去の事とは言えない。またいつか起こり得るかもしれないし、世界には経済不況でなくとも、現にその様な事に直面している多くの人々がいるのだ。

コロナ禍も、何とか早く収まってほしいものと切に願っている・・