吉川隆弘ピアノリサイタルで、立って拍手してきました! 〜芸術家の孤独、外国人としての孤独〜 | 西宮・門戸厄神 はりねずみのハリー鍼灸院 本木晋平

西宮・門戸厄神 はりねずみのハリー鍼灸院 本木晋平

鍼灸師、保育士、JAPAN MENSA(メンサ)会員/IQ149(WAIS-Ⅲ)、日本抗加齢医学会指導士、実用イタリア語検定3級。趣味は読書、芸術鑑賞、小説執筆(2019年神戸新聞文芸年間賞受賞)、スイーツめぐり、香水づくり。

兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院小ホールへ、

吉川隆弘ピアノリサイタル  を聴きに行ってきました。

 

ピアノの生演奏、2020年は全く聴けず、2021年は今日が初めて。

まず、そのことが嬉しかったです。

 

コロナ禍で入場制限もありましたが

音楽にーー本当の芸術に飢えた、多くの方が来られていました。

 

 

プログラムは

 

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ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲 WoO.80

ベートーヴェン:ピアノソナタ 第21番 ハ⻑調 Op.53 「ワルトシュタイン」

 

(15分 休憩)

 

ショパン:3つのマズルカ Op.59

ショパン:ピアノソナタ 第3番 ロ短調 Op.58

 

※アンコール

ショパン:ワルツ 第3番  イ短調 Op.34-2

ショパン:ワルツ 第7番 嬰ハ短調 Op.64-2

 

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毎度ながら素晴らしい演奏でした。

 

ベートーヴェンもショパンも、30代半ばーーそれぞれ自分のスタイルを確立した働き盛り、

その先どうするかーースタイルをどう建設的に壊していくかという、

天才のみが背負う課題に取り組み始めていた頃の作品です。

ベートーヴェンは「傑作の森」の時期(中期の始まり)、ショパンは晩年という違いはありますが。

 

吉川さんの演奏には、作曲家が新しさという課題に果敢に挑戦するところ、

「産みの苦しみ」特有の、建設を促す破壊衝動、

そしてーーこれは意外でしたがーー今回、そうしたエネルギーを発動させている、

 

「芸術家の孤独に加え、外国人であることの孤独」

 

までもが表現されていたように思います。

 

実を言うと、今日、今さらながら、

ベートーヴェンもショパンも「外国で」活躍していたことに気づかされ、驚いたのです。

 

ドイツ生まれのベートーヴェンは、オーストリアのウィーンで。

ポーランド生まれのショパンは、フランスのパリで。

 

さらに言えば、「外国人だけれども言葉はそれほど苦労していない」。

ベートーヴェンの場合、ドイツもオーストリアもドイツ語です。

ショパンの場合、お父さんはフランス人でした。

 

「言葉は通じてもしょせんはよそ者」。これは結構きつい。

イタリアのミラノで活躍されている吉川さんに通じるな、とも思いました。

 

去年から始まった新型コロナの流行で、

音楽活動を制限されたことの肩身の狭さ、外国人としての肩身の狭さを

痛感されたのかもしれない。

 

でも、まさにこの厳しい環境だからこそ、

音楽との関係を見直しながら、

芸術の強さや普遍性、新しい芸術的課題、

よく生きるために向き合わざるを得ない孤独を、再認識されたのかもしれない。

 

ろうそくの明るさは、

闇の中でこそ、いっそうありがたく確かに感じられるようなものです。

 

そしてわたしたちも、吉川さんの演奏を通じて、

芸術の強さや普遍性、よく生きるために向き合わざるを得ない孤独の大切さを再認識させられた・・・

 

コンサートホールの運営方針で「ブラヴォー!」と叫べなかったので、

立ち上がって拍手しました。

やりたいことがやれない新型コロナ禍での、吉川さんへの敬意と感謝の、せめてもの表明でした。

 

ありがとうございました。応援しています!