HEMMI計算尺のお話 その2です。
(その1 は「HEMMI計算尺 No.2664S & No.45Kをゲット! 〜零戦も東京タワーも新幹線も〜」)
HEMMI No.45Kは
20cmの中学生用モデルです(本体は23cmあります)
スタンダードモデル(事務・技術用モデル)のNo.2664S と並べてみると、
かわいらしいコンパクトな作りです。
コンパクトながら、指数・対数や三角関数も計算できます。
「1729.03の立方根」と「tan78゚」を計算してみました。
●1729.03の立方根
1729.03=1.72903*(10^3)を利用します。
K尺の1.729にカーソル(赤線)を合わせ、D尺の値を読むと・・・
ということで、
1729.03の立方根、
計算尺だと12.00です。(1.200*10)
電卓で計算すると、12.0023837857なので、さすが、の精度です。
実はこの「1729.03の立方根」、
『ご冗談でしょう、ファインマンさん』(下)
( 大貫昌子 訳、岩波現代文庫)
に収められたエッセイ「ラッキー・ナンバー」に登場する数字なのです。
ファインマンがブラジルのレストランで食事をとっていると、
そろばんの名手の日本人が入ってきて、計算スピードの比べっこをすることになってしまった。
極めつけの問題が、そろばんの名手の日本人が出した「1729.03の立方根」。
ファインマンは「近似」の概念を利用して、(あと、たまたま12^3=1728を知っていた偶然も手伝って)
日本人がやっとの思いで「12.0」と小数点第1位まで計算したとき、
すでに小数点第5位まで計算してしまった・・・
そろばんでなくて計算尺だったら、暗算マニアのファインマンに勝てていたかもしれませんね。
●tan78゚
まず、tan12°を求めます。(「なぜ?」かは後でご説明します)
計算尺をひっくり返してTI尺を「12」度にセット。
そのまま裏返すと、C尺にtan12°の10倍の値が示されます。
(すごい仕様!)
よって、tan12° = 0.212です。
(※C尺の目盛りの2.12を10で割ると得られます)
ここで
★tan(90°-θ)= 1/tanθ
の公式を利用します。
tan78° =tan(90°-12°)= 1/tan12° = 1/0.212
1/0.212を計算します。割り算です。
D尺の目盛りを読むと4.71。
ということで、
tan78゚は
計算尺だと4.71です。(D尺)
電卓で計算すると、4.7046301095なので、やはり、さすが、の精度です。
それにしても
★tan(90°-θ)= 1/tanθ
の公式をすっかり忘れておりました……面目ございません……
この関係式のおかげで、0° 〜 45° までのtanが求まれば、
90° まで、もっと言えば全ての角度のtanが求まります。
そういうわけで、tanを計算するTI尺の目盛りは45° までになっています。
本当によくできています、HEMMIの計算尺!
気づいたら大好きになってしまいました。