2020年5月29日金曜日の20:00(日本時間)、
ミラノのトレヴァード・ストゥーディオで
(インターネットで聴くオンライン同時配信)
が催されました。
小一時間程度ながら、とても充実したプログラムでした。
■□■プログラム■□■
ベートーヴェン
●ピアノ・ソナタ第17番ニ短調『テンペスト』 作品31ー2より第3楽章
ショパン
●ノクターン第17番 嬰へ短調 作品48ー2
●マズルカ第25番 ロ短調 作品33ー4
ーーー(休憩 約2分間)ーーー
ラヴェル
●優雅で感傷的なワルツ(抜粋:第1曲〜第5曲)
●『夜のガスパール』より第3曲「スカルボ」
ーーーー
ベートーヴェン、ショパン、ラヴェルどれもが、
クリアに処理されていました。
澄明感がありました。(「透」明感ではなく)
単に楽譜通り弾くだけでは、
あのみずみずしい、若やいだ澄明感は出せません。
たとえば
ショパンの嬰へ短調のノクターン。
♯が3つですが、中間部は♭が5つの変ニ長調。
♯や♭が多い調性の音楽を、いわゆる「楽譜通り」に弾いてしまうと、
くぐもり声のようなもやもやした音楽になってしまいがちです。
それをどう処理したらああなるのか、
(移調やズルをしているのではないですよ、もちろん)
メロディーをくっきり聴き取れたのには驚きました。
後半のラヴェルはそんな「吉川節」「吉川マジック」がより鮮やかに発揮されていました。
テクノミュージックのようにではなく、
現代音楽の歌曲(!)のように「スカルボ」を弾けるのは、
吉川さんくらいではないでしょうか。
特記すべき点はもう一つ。
ピアニッシモ(弱音)や休符の表現がとても美しかった。
静けさ、沈黙の美しさを表現できるのが
クラシック音楽ならではのよさだと思うのですが、
現代となってはぜいたくに「なってしまった」静けさ、
「無音の音」の禅問答のようなミステリアスで凝縮された豊かな静けさがありました。
■□■
ピアノは、アルゲリッチやキーシンもコンサートで使用した銘器である、
ファブリーニ・コレクションの「ドゥエチェンテージモ」、
調律も、ミラノ・スカラ座の名調律師、
サンドロ・キアーラ・ ヴァイラーティさんが行ったということで、
とても弾きやすそうな(演奏家の意図がダイレクトにピアノに伝わりそうな)感じが
動画からもうかがえました。
おそらくは初めての試みだったと思うのですが、
ーーわたしもストリーミングで聴くのは初めてですーー
インターネットを利用した音楽活動が増えてくるかもしれませんね。
ミラノからの素晴らしい演奏、ありがとうございました。