世界は「陰」と「陽」のせめぎあい 〜人類史上、最も輝かしい直感と類推〜 | 西宮・門戸厄神 はりねずみのハリー鍼灸院 本木晋平

西宮・門戸厄神 はりねずみのハリー鍼灸院 本木晋平

鍼灸師、保育士、JAPAN MENSA(メンサ)会員/IQ149(WAIS-Ⅲ)、日本抗加齢医学会指導士、実用イタリア語検定3級。趣味は読書、芸術鑑賞、小説執筆(2019年神戸新聞文芸年間賞受賞)、スイーツめぐり、香水づくり。

東洋医学の基本概念となる「陰陽論」は、


【A】世界(大宇宙)も人体(小宇宙)も「陰」と「陽」でできている。
【B】「陰」と「陽」には、次の性質がある。

(1)陰陽互根(互助律):陰陽一方だけを取り出すことはできない。
(2)陰陽制約(提携律):陰陽一方の増減に連動して他方も変化する。(総量は変化)
(3)陰陽消長(拮抗律):陰陽一方の増減に対して総量が一定になるように他方が変化する(総量は一定)
(4)陰陽転化(循環律):((2)(3)で調節できない場合)陰陽の一方が他方に変化する
(5)陰陽可分(交錯律):陰陽それぞれの中に様々な段階の陰陽がある。


現代から見れば、単純すぎるきらいがあります。

でも、世界を動かしている原理は、実はそんなに難しくないのではないか?
シンプルでクリアなものではないか?

日が昇って昼になり、日が沈んで夜になる。
日が昇れば目覚め、日が沈めば就寝する。

腹が減れば飯を食い、腹が膨れれば食べるのをやめる。

病気になっても、快復する。
快復できない場合は、死ぬ。

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陰陽論は、自然現象を説明するのに大変都合がよかったと言えます。
実際、二分法は近代科学でも十分通用しています。

電気の世界にはプラス極とマイナス極があり、磁気の世界でもN極とS極があります。
どちらかが単独で存在するモノポール(単極子)は、今のところ見つかっていません。

情報科学では、情報は「1」と「0」の二進法、二種類のビットで表現されます。
最近でこそ、1ビットにつき0と1の値を任意の割合で重ね合わせて保持できる量子ビットを使った「量子コンピュータ」ができそうかな? という状況になっていますが。

自律神経には交感神経と副交感神経があります。
男性・女性問わず、男性ホルモンも女性ホルモンも産生しています。
(ちなみに、女性ホルモンは男性ホルモンを原料にして作られます)

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ところが、陰陽論で説明しづらい場合がでてきました。

世界は「現象」だけでできていない。

世界は「実体」、モノであふれている。
「実体」は、陰陽の2種類だけでは分類しきれない。


「実体」の属性もたくさんあります。たとえば、色です。

むかしのひとたちは、赤を「陽」を象徴する色、黒を「陰」を象徴する色と考えました。
そして、赤と黒を混ぜると紫色になると考え(実際はドドメ色になりますが)、紫色は「陰」「陽」のふるさと(「太一/太乙」)の色として尊ばれました。

でも、世界にはいろいろな色がある。
青も黄も緑も茶もある。


体を解剖してみると、たくさんの臓器(臓腑)があった。
左右対称ではなかったし、まして左半分を「陽」、右半分を「陰」とできるほど単純ではなかった。


むかしのひとたちは「(特に二分法で表現できない)実体」を表現するために、どう考え、解決したのでしょうか?

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つづく


【参考】
旧約聖書の「伝道の書」には陰陽論的世界観が記述されています。

3:1 天が下のすべての事には季節があり、すべてのわざには時がある。
3:2 生るるに時があり、死ぬるに時があり、植えるに時があり、植えたものを抜くに時があり、
3:3 殺すに時があり、いやすに時があり、こわすに時があり、建てるに時があり、
3:4 泣くに時があり、笑うに時があり、悲しむに時があり、踊るに時があり、
3:5 石を投げるに時があり、石を集めるに時があり、抱くに時があり、抱くことをやめるに時があり、
3:6 捜すに時があり、失うに時があり、保つに時があり、捨てるに時があり、
3:7 裂くに時があり、縫うに時があり、黙るに時があり、語るに時があり、
3:8 愛するに時があり、憎むに時があり、戦うに時があり、和らぐに時がある。
3:9 働く者はその労することにより、なんの益を得るか。
(略)
3:20 みな一つ所に行く。皆ちりから出て、皆ちりに帰る。

(『口語旧約聖書』日本聖書協会、1955年)