第15章 天職(コーリング)(15) | 3.5次元の不倫

3.5次元の不倫

この本は恋愛と人生についての小説ですが、
ひきつづき児童書(英語の対訳付)を書きました。
おたのしみに!

「ウーちゃん、ありがとうね。また、会おう」

「はい」

ヒグラシが鳴いた。--カナカナという物悲しい泣き声さえ、再生の人生への応援歌に聞こえた。夏が過ぎ去ろうとしていた。

 卯月との、濃密にしてドラマチックな再会が終わった。宴の後はまた、おでんと二人きりの淡々とした日常を生きていた。卯月と吾朗の業火に焼かれたような歳月を省みるにつけ、安穏とした今の生活を有難いとはもちろん思うのだが、一方で、自分の生命の炎を燃やすだけの生きざまが心苦しく、罪悪感に苛まれるのだった。間違いなく、卯月の置き土産であった。尻を叩かれる思いであった。

(卯月との話を思い返したり、墓参りに行ったりしている間に、むざむざと時が流れてしまった。さあ、そろそろ本気で始めよう。書くと言った以上、結果を出さなければ、卯月に怒られてしまう。それでも、タイトルは決めたし、目次も粗方はできているんだから、まったくさぼっていたわけじゃないさ。それにしても、この年になってまだ自己弁護しているんだから、人間って奴は御しがたいね)。おでんのモコモコの前足を借りて、自分の頭をたたいた。玄関のチャイムが鳴った。

荷物が届いた。卯月からだった。ラベルを見ると、スープ、その他と記してあった。(例の、ママちゃんスープかもしれない)。心が躍った。いそいそと箱を開けた。封書の下に、ペットボトルが三本、その他に干物や野菜の類が整然と納められていた。