第13章 因幡の白兎(9) | 3.5次元の不倫

3.5次元の不倫

この本は恋愛と人生についての小説ですが、
ひきつづき児童書(英語の対訳付)を書きました。
おたのしみに!

「それでね、すぐに雑誌の編集長に会いに行ったのよ。どういう人だか知りたかったし、記事の信憑性を確認したかったから。そしたら、たった一人で製品を考えて特許を取って、販路も独自で開拓したぐらいだから、強烈なバイタリティーの持ち主だと思うっていう感想を話してくれて、記事の内容に脚色はありませんって、少し色をなすような言い方だった。それで、すぐにその人の家を訪ねて行ったのよ。

図面とか企画書を持ってね。そしたら、商品化の見込みは十分にあるから、自分が責任を持ってコンサルタントをお引き受けする。販路も持っているし、銀行にも顔が利くから融資の面も心配する必要はないっていうところまで話が進んで行ったわけなんです。用立てて頂くお金は、当座のコンサルタント料に必要なお金なんです」

「だけど、こんなことまでしなきゃ生きて行けないものかしらね。今の仕事じゃ、どうしても心もとないわけね」

「言い難いことだけど、私って仲の悪い夫婦の取り持ちばっかりやっていたお陰で、危機管理の才に長けているみたいなのよ。ことあるごとに直感が降りるのよ、今これをやらないととんでもない事態になるってね」

「本人を目の前に置いて、はっきり言う人ね、まったく」

「すみません。でも、私だってまんざら馬鹿でもないのよ。考えに考えた挙句、死んだ気になって話しをしに来たんだから」

「そりゃあ、そうでしょうよ。ならばやめておいて欲しいんだけどね。蒸し返すつもりはないけど、店にしても発明にしても、素人がやるようなことじゃないのよ。家屋敷を取られるか、気がおかしくなるかがオチなのよ。何でそれがわからないのか、悲しくなるわ」

「知的所有権っていうのが出来て、時代が変わったのよ。大発明をするわけじゃないし。それに、その人、来年早々にお上のお手伝いをすることになったのよ。商品価値を通産省のお役人に代わって判定するんだって。名前を言って通産省に問い合わせてみたら、間違いありませんっていう返事だったのよ。それなりに、裏は取っているつもりなんだけど…」