(平山先生の奥様が言う通り、世の中には、どうしようもないと割り切るしかないことがある。先生のお宅が、遠く離れた祖父母に預けるしかなかったように、うちは保育園に預けるしか道がない。どうしようもないのよ。でも、先生のお宅に比べれば、うちはまだマシかもしれない。夜には会えるんだから。それに、取越し苦労っていうこともある。案外、お友達と楽しく過ごしてくれるかもしれないし、そう信じるしかない。今日は図書館に来て良かった。親の苦しみを分かち合える人が出来たから。ショー君、しばらくの間、我慢してね。ご免ね)。
明日の糧 煩うことなく 抱き締めたし
愛しき盛りの 吾子を預けて
本を注文しての帰り道、それでも涙は止まらなかった。
入園して十日目、息子は熱を出して園を休んだ。そして翌朝、起きてきた息子の目を見て、卒倒しかけた。片目が大きく腫れて、瞼が完全に塞がっていたのだった。夜なべ仕事でまだ眠っている小谷野を、もの凄い勢いで揺り起こした。
「どうした?」
「ショー君の目が、大変!」
「医者だ、医者!」
親の異変に驚いたのか、息子が大声で泣いた。
<南無阿弥陀仏><南無妙法蓮華経><アーメン>、診察室で、知りうる限りの神仏にすがった。小谷野は、何かを念じるように目をつぶっていたが、こらえかねた様子で尋ねた。