第十二章 サンの小屋
「申し訳ありませんが、もう一回よく考えてお返事します。楽な金額ではないもので…。では、一旦失礼します」
電話を切ると、布団の上でシュッシュッと威勢良く足を動かしている息子を抱き上げ、オフィスに様変わりした一階に下りて行った。
「おお、ショー君」
小谷野が抱っこして高々と持ち上げると、息子はキャッキャッと笑って上機嫌だった。
「家政婦さん、聞いてみたけど、驚くなかれ、一時間千五百円ですって」
「ふーん、結構な値段だね。下手をすると、我々の時給より高いじゃないか。恐れ入ったね、まったく」
「乳幼児の世話は割高になるんですって。こちらとしては、露木という六十三歳のベテランを派遣できますって言っていたけど、四時間で六千円でしょう。利益がふっとんじゃうわ。どうしたもんですかねえ」
「しかし、この急場だけは頼むしかないと思うよ。貴女に頭を取ってもらわないことには、この仕事は引き受けられないんだから」
「そりゃあ、そうなんだけど…」
「六十三歳っていう年齢が気に入ったね。ベテランだけど、さりとてそう年をとってもいないからね。安心して任せられるとは思うけど、遣り繰りするのは貴女なんだから一任するよ。よく考えてみればいい。ちょっと疲れたから、ショー君とそこら辺を歩いてくるよ」
「そうしてくれると、ショー君も喜ぶわ。もう時間がないから、その間に結論を出します」
「了解」