数日後、何年振りかで銀座を訪れた。和泉瑤子からの強引な誘いであった。電話で妊娠の報告を聞いた彼女の驚きようは、かなりのものであった。
「突っ張り女の妊婦姿なんて、最高の見ものだわ。出ていらっしゃいよ。ご馳走するから」
「でも、銀座はちょっと遠いような気がして…」
「ダメよ。田舎にくすぶってばっかりじゃ。子供には刺激が必要なのよ。第一、元気なんでしょう?」
「うん。先生がビックリしていたわよ。若い人よりよっぽど元気だって。失礼な言い草よね」
「医者が太鼓判押すくらいなら、問題ないじゃないの。<われもこう>を予約しておくわよ」
「もっと安い所にしてよ。気が引けるから」
「卯月の妊婦姿を拝ませてもらうんだから、それくらいのギャラは払うわよ。じゃあ、いいのね?」
「いいわよ。でも、笑ったりしないでよ」
「そんな失礼な事をするわけないわよ。じゃあ、気をつけて来てね」
弾んだ声を残して、電話は切れた。
(よっぽど私の妊婦姿が見たいんだわ。もっとも、逆の立場だったら、私だってこれを見逃す手はないって思うに違いない。瑤子には色々と世話になっているから、見たいというのを断るわけにはいかないわ)。まるで、人寄せパンダであった。
「ウワア! マタニティーを着ているんだ!」
先に来ていた瑤子は、姿を認めるなり、笑いこそしなかったものの、雄たけびに近い声をはりあげた。