第6章 隠れ家 (3) | 3.5次元の不倫

3.5次元の不倫

この本は恋愛と人生についての小説ですが、
ひきつづき児童書(英語の対訳付)を書きました。
おたのしみに!

ある日曜日の昼下がり、短大時代の友人である和泉瑤子と銀座の懐石料理店で食事を共にしていた。

「私さ、いたたまれなくなって卯月の家に行ってきたのよ」

「えっ、そうなの。悪かったわね。それで、母はどんな様子だったかしら」

「はっきり言うけど、全体に小さくなった感じね。ショボンとしていたわ」

「そう……。胸が痛いわ。ご免ね、涙が出てきちゃった」

「泣いてもいいからね。あのね、卯月がいなくなって、すぐに彼が訪ねて来て、卯月さんを責めないで欲しい。自分も彼女を恨むつもりは全くないって言ったんだって」

「そうなの。彼らしいわ」

「上司に挨拶状を出してくれたり、お歳暮の心配をしてくれたり、よく自分をフォローしてくれたと思う。お陰で、大した学歴もないのに一応の地位に付く事もできたから、感謝しているって。自分の力では卯月さんの人生を満足させてあげる事ができなかった。自分の力不足ですって本心からそう言ったらしいわよ」

「私だって恨みもつらみもないもの。ライオンの子供と同じよ。最初は可愛くても成長すれば人間の手には余るでしょう。私の中の得体の知れない激しさが彼の元から脱出を命じたのよ」

「旅行好きの卯月さんのお蔭で、あちこち旅をする事ができたし、食事もおいしかった。お弁当もいつもとっても楽しみだったって」

「やめて。悪いけどもうやめてくれる」

抑え切れない涙がハンカチをグッショリと濡らした。