tip Toe.のラストライブから6日後。7/27。きのホ。のツアー仙台に行ってきた。

正式名称は「東仙阪福バンドセット昼夜公演ツアー 「AJIHEN」。

福岡は既に終わり、仙台、大阪、千秋楽の渋谷duoと続く全4公演。仙台は2公演目であった。


きのホ。のワンマンに行くのはこれが初である。

僕は元々滅多に推してないグループのワンマンには行かない。


僕なりに推すグループの基準というのがあって「メンバー全員に興味を持てる」「推しとよぶべきメンバーがいる」、そして何より重要なのが「全曲楽しめる」グループに限る、という事である。僕はDDのように思われるが、自分では余りDDのつもりはない。原則推すのは2グループまで。且つ、推したグループはちゃんと推すようにしている。ちゃんと推す、というのは、主催イベント、ワンマンは勿論、時間と財力が許す程度にはフェスや対バン、リリイベにも参加する、という事である。そしてこの推し方をするとなると多くて2グループが限度、という事になる。


ゆえに、滅多に被っても他のグループは見ないようにしている。目移りしたくないのだ。なにより長年ドルヲタをしてきた経験から、全く刺さらなそうなグループはそれなりにわかったりする。


ただ、困ったことにそうした僕の包囲網をくぐり抜けてくるグループがたまにいたりする。


きのホ。を初めて見たのは、確か2022年の7月の事だったように思う。デビューした頃もそれなりに僕の周りの目ざといヲタクが騒いでいたし、どうやら楽曲も良いらしい、とは見聞きしていたのだが、先にあげたような理由から、見知らぬ外国の出来事、程度にしか受け止めていなかった。


2022年。丁度その頃の僕は、クマリデパートに通いながら、そろそろ推しが卒業して熱量が醒めていったukkaの次の代わりを無意識に探していたように思う。そして、楽曲派第〇世代、とも呼ぶべき、クオリティの高い楽曲、魅力的なパフォーマンスをするグループが台頭してきた時期であった。ringwanderung、fishbowl、タイトル未定、さとりモンスター、きのホ。tip Toe.


2022年7月、fishbowl、きのホ。tip Toe.のスプリットツアーが渋谷duoで行われた。当時の目当てはfishbowlだった。きのホ。のセトリは憶えてないが、当時気に入っていた「相合傘」は無かったように思う。「相合傘」のイメージが強すぎてくるちゃんってそんな感じのキャラなんだ、と思っていたが、ハードな曲だと一転して力強いボーカリストに豹変する姿がやたら強烈なインパクトを残した。


だが、暫くして僕の興味はtip Toe.へ傾き、僕はtip Toe.を推した。


とはいえ、きのホ。運営のポテトさんとtip Toe.運営の本間さんの距離が近い事もあり、被る事も多かった。なによりtip Toe.のりんちゃんときのホ。のくるちゃんが仲が良い事もあり、自然と曲を聴くようになった。


2023年夏。知り合いから「ゾーンB」公演に誘われた。演劇とライブの融合。それだけ聞くとちょっと新規やたまに見ているだけの人間には敷居が高く感じられた。

断った。

だが、くるちゃんの故郷である秋田遠征を見に行った秋田のヲタ友達が絶賛していた。そんなにいいんだ。。。通っているヲタクよりも、通ってないヲタクの批評の方が信頼度が高い。

生だったかアーカイブだったか憶えてないが配信で見てみた。

めちゃめちゃ良かった。。。

楽曲もだが、メンバーの演技も初々しくて楽しかった。

行かなかったことを後悔した。


きのホ。がちょっと無視できない存在になりつつあった。


去年の夏を境に、積極的にtip Toe.と被った時はきのホ。を見るようになった。何度か行くうちにくるちゃんも憶えてくれた。もっともこちらは「tipのりんちゃんに喜ばれたい」という下心があったので余り純粋ではない。tipの推しはあいりちゃんだったのだが、きのホ。と被った時はくるちゃんに行き、りんちゃんにも行った。どちらかが先だと合わせてもう一人に同じポーズをお願いしたりしていた。


りんちゃんは配信や特典会でも度々如何にくるちゃんが、きのホ。が素晴らしいかを話してくれた。「ゾーンB」を見に行ったというから感想を聞いたら「推しが尊過ぎてずっと泣いてた」と言われて笑った。感想になってない。2023年の春に、りんちゃんとくるちゃんが合同イベントをやっていたのだが、席数も少ない会場という事もあり、当時は何となくりんちゃん推しでもくるちゃん推しでもない自分がいく事が憚られ、スルーした。今では若干後悔している。


2023年10月。きのホ。の過去最大規模のワンマンがZEPP横浜で行われた。

友達に誘われた。

断った。


仕事が忙しい、という事が断った一番の理由ではあるのだが、同時に「ワンマンに行ったら絶対好きになる」怖さがあったのだ。

ライブが終わると、案の定絶賛の声がTLに流れてきた。

後悔した。


2023年8月。TIFでtip Toe.の解散が発表された。元々3年縛りのグループという事はわかっていた。2期に関して言えば、コロナ期間で活動出来なかったこともあり、メンバーそれぞれの在籍期間は異なるものの、4年の活動であり、十分な活動期間だった。そしてこの時点での発表では解散は2024年6月、というアナウンスだった。


発表から解散まで約1年の長さがあった故、当初はあまり悲しみは感じなかった。最後まで楽しめればいっかー。そんな気分でいた。


きのホ。はどの対バンでも楽しかった。去年9月のギュウ農宇都宮での屋外ステージでは、メンバーがステージから降りてきた。どのイベントだったか憶えてないが下北沢では、らねちゃんが壁を伝って、美里ちゃんが背中からダイブしていた。ステージが例え狭かろうが、屋外だろうが屋内だろうが、「全員楽しませるぞ」という気概が凄かった。


その辺あくまでもステージ上ではお嬢様然としたtip Toe.とは違った。勿論tip Toe.は大好きではあったのだが、元々ごりごり洋楽ロック好きだった為、毎回予測不能なきのホ。のパフォーマンスにもたまらない魅力を感じていた。


tip Toe.の終わりが近付くと、自然と知り合いのヲタクから「次はどこに通うんですか?」と聞かれた。そして殆どの身近な知り合いは「きのホ。でしょ?」と言ってきた。


3月のtip Toe.5thワンマンでラストライブが7/21と発表された。

一気に解散が現実となった。

4月にきのホ。のバンドセットツアーが発表された。見ると7/28に仙台が入っていた。関東民なら千秋楽の渋谷duoに行くべきなのだが、敢えてtip解散直後の仙台に行きたくなった。なんとなくきのホ。を見る事でtipの消失の穴を埋められる気がした。


毎回tip Toe.に一緒に通っていた仙台の友達を誘った。友達もきのホ。は好きだったのですぐOKしてくれた。そして他の秋田や岩手の友達も誘うと行きましょう、となった。

仙台は何度も遠征をしているが、毎回日帰りだった。tip Toe.傷心旅行になるのが予想されたので初めて泊りにした。


この間に5月の新宿LOFTの周年祭2days、6月の京都爛漫会、ときのホ。は月イチ頻度では見るようになっていった。ペンライトを買おうと物販に行ったら売り切れとの事だった。もっともペンライトを買うのはハマりそうなグループだけなので、この数年で買ったペンライトはクマリとtip Toe.しか無い。


7/28。仙台には11時半過ぎに着いた。いぎなり東北産のヲタクでもある友達がテレビ局の祭りにいぎなり東北産が出るから見ましょう、と誘われ勾当台公園に向かった。が、雨が強くなってきたので東北産登場前に会場である仙台MACANAに向かった。



MACANAは去年のtip Toe.秋ツアー以来だった。


昼の部は13時半開場、14時開演だった。着席、と公式が書いていたので全席椅子かと思いきや椅子が置かれているのは前方だけで後ろはスタンディングだった。我々が入場した時には既に椅子席は埋まっていたのでスタンディング最前を取った。


仙台の友達が「いや、俺なんてきのホ。見られるの仙台来た時だけだから恥ずかしい」と言っていたが、遠征はそうした地元民がいるのが望ましく、考えてみると、別にきのホ。ヲタでもない関東民の俺が仙台に来ている事の方がよっぽど謎だった。


ステージには既にバンドセットが組まれていた。夜の部はバンドセットなのだが、昼の部はアコースティック、と聞いていたのでてっきりアコギだけのしっとりしたライブを想像していた。


14時になりバンドメンバーが入って来た。ゆっくりと音が出始める。ドラム音にエコーがかかる。「ん?これダブか!?」めちゃめちゃ驚いた。

ダブというのは、レゲエが派生した音楽である。要はジャマイカのクラブミュージックである。1990年代にイギリスのロックバンド、プライマルスクリームがダブのアルバムを作った。そうした例外はあるものの、独特すぎる為あまり「ダブ」を取り入れるグループは少ない。少なからずともアイドルでダブを取り入れたのはきのホ。が初なんじゃないだろうか?


そうして始まったのは「リビングデッド」だった。


過去何度もアイドルのバンドセットは見ている。普段「オケ」でのパフォーマンスに慣れていると、正直バンドメンバーの個性が出過ぎて残念な出来のグループも多かった。そこまでではなくとも、大半のグループは「あくまでもオケを生演奏にしてみました」の域を超えてなかった。「なんの為にバンドセットでやりたいのか?」そこのマインドが深堀り出来てないグループが多い。バンドセットに意味があるわけでなく、結果論でバンドセットでないと意味がない。


これはアコースティックライブ、というより、実質別バージョンライブとでも呼ぶべき、「きのホ。の楽曲を更に魅力的に見せるバンドアレンジ」のようなものだった。聴きなれた楽曲が全く新鮮に聴こえた。グループの音楽への飽くなき探求心を感じた。


そして更に驚かされたのは、ライブ中、曲によってメンバーが楽器を手にしたことだ。こはるちゃんのアコースティックギターは想定内だとして、美里ちゃんはピアニカ、フルート、らねちゃんはカウベル、と名前分からないお尻の下で叩くパーカッション、くるちゃんはカズー。楽器のチョイスも渋い。元から演奏できたのかは知らないがアイドルが「ちょっとやってみました」の域では無い。どのメンバーの演奏も完璧にバンドと一体となっていた。


ミコちゃんが小型ピアノを出してきて単音を同じリズムで叩いた。そこにゆっくりと他の楽器が入ってきて「晴天」が披露された。オリジナル同様、ミコちゃんのピアノは何回かキーを変えた。ピアノの音色がMACANAを包み込む。それはとても美しい音色だった。


以前tipプロデューサーの本間さんと話していたら「気軽にお酒を飲みながら見られるライブをやりたい」と言っていた。tipでは結局実現しなかったけれど、きのホ。ならやれそうな気がした。


後半、らねちゃんがカンカンとカウベルをたたき始める。リズムで「コネクト」だと分かった。客席が手拍子でコネクトのリズムに合わせる。一体感が凄い。常々思っている事だが、きのホ。のパフォーマンスは独特だ。ステージとフロアの隔たりを感じない。

一般的に、アイドルのライブは演者のパフォーマンスに対し、オタクが考案したコールやMIXを入れて成立している。それはそれで楽しいのだが、初見で見るとイマイチ着いていけない現場が多いのも確かだ。

きのホ。の場合、メンバーに委ねていれば、初見でも楽しめる。そこがきのホ。ならではの魅力だ。


時計を見ていなかったのでそれが1時間だったのか、1時間半だったのか。ラストの「観月京」を最後にライブは終わった。強烈なライブだった。


考えてみると、この数か月、週3ペースでtip Toe.のライブを見ていたのだが、そこにはライブを楽しむという純粋な気持ちに「間もなく終わってしまう」というドラマを重ねてみてしまっていた。久しぶりに心からライブを、音楽を楽しんだ。


tip Toe.解散直前の7/2。りんちゃんのソロイベでラストの曲として選んだのは大森靖子が手がけたMAPAの「アイドルを辞める日」という曲だった。


きのホ。のライブを見ながらその一節をふと思い出した。


「音楽で会いましょう」


慌てて物販で夜の部の為にペンライトを買った。


おしまい