「エイリアン、故郷に帰る」の巻(68) | 35歳年上の夫は師匠でエイリアン! 

35歳年上の夫は師匠でエイリアン! 

【夫】台湾人 × 【妻】日本人

国際結婚? いえ、惑際結婚ですから!

気がつけば2男1女。

あの男を見ていると、とても同じ人類だとは思えない。
漢方薬を水なしで飲めるなんて
一体どんな味覚をしてるんだ、あのおっさんは。

 

 

死亡届を提出。

保険金を請求。

 

あとは、お葬式だ。

 

 

日本と違って、

台湾では誰かが亡くなっても

すぐお葬式とはならずに、

日を選ぶとのこと。

 

 

 

 

それまでの間、

ご遺体は冷凍保存するらしい。

 

 

師匠の場合でいうと、

葬儀は亡くなってから

18日目だった。

 

 

私の両親。

子供たち。

私。

 

日本から台湾まで出向き、

みんなで参列することになった。

 

 

 

市内の旅行会社へ行き、

3泊4日の旅程を組んでもらった。

 

 

 

 

「旅行ではなくて、

夫の葬儀なんです」

 

 

 

 

スタッフさんには、

事実をそのままお伝えした。

 

嘘をつく必要はない。

 

むしろ、正直に

話しておく方がいいと思った。

 

 

 

その旅行会社は初めてではなく、

担当してくださったスタッフさんにも

以前、お世話になったことがある。

 

とても親切な方で、

今回も親身になってくださった。

 

 

印字されたスケジュール上では、

家族旅行にしか見えないのだが、

実際には違う。

 

 

私にしてみれば、決して

楽しい相談ではなかったから、

 

丁寧にご対応いただけたことが

本当に有難かった。

 

 

 

 

師匠の葬儀へ参列するための日程を

わざわざ組むなんて、本当に嫌だった。

 

間近に迫った別れの日時を

これでもかと突き付けられる。

 

 

 

おまけに。

 

その現実を目の当たりに

したからだろう。

 

スタッフさんと話している間、

心臓がバクバクと音を立て続け、

それが全身へと響いていく。

 

まるで、体中が大きく脈を

打っているような感じだった。

 

 

 

加えて。

 

やっぱり、この日も

頭がふらついていた。

 

でも、私の代わりに

動いてもらえる人はいない。

 

 

 

 

 

これは、今も

思うことなのだが。

 

 

あの頃、

何が辛かったか。

 

 

もちろん。

 

師匠が道端で倒れ、

病院に担ぎ込まれて入院し、

そのまま亡くなったこと。

 

そして、このことにまつわる

様々な出来事なのだが。

 

 

 

 

ただ、やっぱり。

 

あのおっさんを

亡くしたことを除くと。

 

私とって本当に辛かったのは、

私の周りに、私の置かれた状況を

理解してもらえる人がいなかった

ということではなかっただろうか。

 

 

 

あの時、私の周りには、

連れ合いを亡くした人はいなかった。

 

母には持病があったものの、

当時、両親にはお互いが居たし、

 

親戚の中にも、友人知人の中にも、

私と同じ経験をした人はいなかった。

 

 

 

たとえ年齢を重ねていても、

経験しなければ分からないことが

世の中にはある。

 

こればかりは、

年の功とはいかないのだろう。

 

 

だから、辛かったのだ。

 

 

 

頼りたくても、

頼ってみても。

 

お願いしたくても、

お願いしてみても。

 

 

 

 

でも。

 

これは仕方がないこと

なのだろう。

 

 

私にしたって、例えば。

 

お子さんを亡くした方のお気持ちは、

恐らく、分からない。

 

その方のお気持ちや状況を

察することはできるかもしれない。

 

寄り添うことも。

 

でも、理解できるかどうかとなれば、

話は別だ。

 

 

 

 

それが、どんなことであれ。

 

実際に、自分の心と体で

体験したことでなければ、

 

同じ視線で見据えることは、

なかなか難しいように思う。

 

 

 

 

そう考えると、

人は皆きっと、お互い様。

 

自分に接点がないことには、

気が付かずに通り過ぎてしまう。

 

 

 

 

もし、私がどうしても当時を

振り返ってしまうことがあれば。

 

 

 

 

「あの頃は、よく頑張ったね」

 

 

 

 

自分で自分に

言ってあげればいい。

 

声に出して、心から。

 

他の誰よりも、

自分で自分を認めてあげられたら、

それは素晴らしいことじゃないか。

 

 

そして、あの経験が

これまでは流れるままだった景色に

気が付かせてくれると思えばいい。

 

 

 

 

 

 

 

あの頃、最寄りの空港から

台北へのフライトは、

午後6時を過ぎた時刻だった。

 

お葬式は朝から。

 

前日ホテルに泊まらなければ、

当日の参列には間に合わない。

 

 

平日だったから、子供たちには

早めに学校から帰宅してもらい、

 

午後4時過ぎには

うちを出て空港へ向かった。

 

 

 

 

 

今でも、よく覚えている。

 

あれは、お葬式当日の

朝と言うべきか。

 

 

私はホテルのベッドで

悪夢を見た。

 

 

黒いマントのようなものを

羽織った骸骨が出てきた。

 

なにやら、口を開けて

笑っているようにも見えた。

 

 

もしかして、あれは

死神だったのだろうか。

 

 

ハッと目を覚ました瞬間、

胸の中心から、どす黒いものが

わらわらと広がっていくのを感じた。

 

これまでの人生で感じたことのない

気味悪さや心地悪さ、不安と恐怖が

すべて一緒くたになって、

私の体全体に伝わっていった。

 

 

 

少しの間、その夢の恐ろしさに

気を取られていたのが。

 

でも、しばらくすると。

 

 

 

まあ、無理もない。

 

 

 

こう思い、その後には、

妙な諦めが付いて来た。

 

 

 

胸の辺りは

ぐらぐらしたままだったし、

 

笑った風の骸骨を思い返すと

胸糞がすこぶる悪く、

おぞましくも感じたが。

 

 

 

でも。

 

今日は先生の葬儀だから、

こんな夢を見るんだなと。

 

 

 

まあ、仕方がない。

 

あの朝、お花畑の夢なんて

端から期待できなかったじゃないか。

 

 

 

 

それに。

 

振り返れば、

これも過ぎたこと。

 

 

今の私なら、あの骸骨に

ドロップキックの一発くらいは

お見舞いできる。

 

気取ったマント剝ぎ取って、

骨バラバラにしてくれるわ。

 

 

『羅生門』を超える展開が

お前を待っている。

 

 

 

 

 

 

 

にほんブログ村 家族ブログ 国際結婚夫婦(台湾・香港・中国人)へ