被災後に
通うことになるまで、
ずっと長い間
コインランドリーに
行く機会がなかった私は、
最新のマシーンに触れ、
時代の流れを
ひしひしと感じた。
気分は、すっかり
浦島花子。
巷の洗濯事情は、
私などが知らぬ間に、
大きな進化を遂げていた。
まず。
洗剤を持参する
必要がない。
自動投入だそうで。
小銭を入れて
ドアを閉めれば、
あとはおまかせ。
それに、
いつの間にやら。
洗濯と乾燥が
ひとつのマシーンで
完結するようになっていた。
ただ。
台数で言えば、
乾燥機の方が
多かった。
災害時等を除けば、
普段は乾燥機の方が
需要が大きいのだろう。
私が一番
驚いたのは、
ひと昔、いや
ふた昔前と違って、
乾燥機の威力が
すごいこと。
少ない時間で
よく乾くようになった。
それから。
今どきの
コインランドリーって。
ネットのサイトで、
洗濯機が空いているかどうか、
待ち時間があと何分なのか、
台ごとにチェックできる
ようになってるのね。
これは便利。
助かるわ。
あと、
もうひとつ。
洗濯前に
ドラム洗浄する
機能があること。
約2分。
するかしないかは、
自分で選べる。
これについては、
思い出がある。
前の人の洗濯が終わった後、
洗濯物をお店のかごへ
移動させてもらった時のこと。
靴下を片方
取り出し損ねたまま
ドラム洗浄を始めて
しまったことがあった。
私ではなく、
次男が。
もちろん、
靴下はびしょ濡れ。
ドラム洗浄が終わるのを待ち、
すぐさま、靴下を乾燥機に入れ、
乾かし始めた。
その間に、前の人が
洗濯物を取りに来たので、
事情を説明して、お詫びしたのだが。
爽やかに笑ってくださって、
事なきを得た。
どうもすみませんでした。
この次男。
コインランドリーに
一緒に通っていた頃は、
本当によく助けてくれた。
今でも、心から
感謝している。
私より先に車を降りて、
空いている台を
確保してくれたり。
一緒に洗濯物を
畳んでくれたり。
洗濯乾燥の待ち時間に、
一緒に買い物してくれたり。
あの男。
10代の高校生にして、
すでに立派な家事大臣。
買い物中も、
割引品や見切り品を
上手に見つけてきてくれる。
恐れ入ったよ、母ちゃんは。
やっぱり。
どうしても。
私と連れ立って
スーパーに通っていると、
ああなるわけね。
買い物マインドと
そこから派生する行動が、
私にそっくり。
まるで鏡。
ああ。
恐ろしい...
コインランドリーと
同じ敷地内のスーパーで、
お店の目玉とおぼしき
コロッケをよく買った。
5つで250円。
このくらいの
お値段だったような。
断水中は、うちで
料理できなかったから、
お惣菜をお安く買えるのは
とても有難かった。
スーパーに隣接した
ドラッグストアでも
割引のお品物を買ったけど、
ここでよく買ったのは、
箱入りのペットボトルの水。
それにしても。
富山県のお風呂屋さんや
コインランドリーに
通っていた頃。
お隣の県で
あるにも関わらず。
お風呂屋さんでは、娘の
同級生のご家族に遭遇し。
同じ市内から来ている人に
たくさん出会い。
「お風呂の支援金、欲しいわー」
脱衣場で聞いた、
この声に共感し。
コインランドリーでは、
割とご近所さんの車を見かけ。
スーパーでも
同じ町内の人を見かけ。
なんだか。
他県にいる
気がしなかった。
今、振り返ってみると。
大変だった
あの日々の中にも、
僥倖はあった。
地元よりも富山県の方が、
ガソリンや灯油が
安いことを発見し。
刻々と変化する状況に
後れを取らないようにと、
まるで何かに
喰らいつくかように、
それなりに毎日を
懸命に暮らす経験をし。
そして、次男。
この男との
洗濯や買い物は、
今になって思えば、
楽しいものだった。
それは、次男が精一杯
頑張ってくれたお陰だ。
考えてみれば。
地震以外でも、
辛い時や困った時には、
いつも傍に居て、
私や娘を助けてくれた。
いつもいつも、
本当にどうもありがとう。
まあ。
喧嘩してばかり
だけどね。
昨日もふたりで
声が枯れるほど
大声張り上げたし。
母ちゃんは、扇風機の
リモコン投げたし。
でもね。
次男よ。
貴方は、
私の戦友。
断言。
貴方がいたから、
今日の私がいる。
感謝の意を表して
熱いキスを送るわ。
拒否権はない。
末筆では
ございますが。
その節は、富山県の皆様に
大変お世話になりました。
お陰様で、水のある生活を
送ることができました。
誠にありがとうございました。
また、ご迷惑をおかけしたことも
あったかと思います。
どうかどうか、
お許しいただけたらと存じます。