二人で人相の話をしていたときのこと。
エイリアンがこう言い放った。
「私の顔、まあまあでしょ?」
まあまあって、もしかして...?
「....................」
もしや。
これは「踏絵」か何か?
私の弟子としての忠誠心を試してるのか...?
答えるのが爆弾級に難しい質問じゃないか。
このまま無言でいるのは、発言を否定しているようで、まずい、まずいぞ!
何でもいい!一秒でも早く何か言え!
師匠が自分の顔をどう思うか、訊いてるじゃないか!
「はあ...」
思わず「は行」でごまかした。
なんと都合のいい表現だろう。
相手の発言を否定も肯定もしていない。
おまけに自分にウソもついていない。
どうやら師匠が機嫌を損ねた様子はない。
これで、お互いの自尊心は保たれたのだ。
日本語に「玉虫色」があるのって、砂漠にオアシスがあるのと同じだ。
こんなとき本当に助かる。
いやはや。
顔の話は絶対タブーに違いないと思っていたのに...
まさか私の勝手な自主規制だったとは。
私にも最低限の社会性はある。
相手が触れられたくないと思っていることを、わざわざ言う。
これが、マナー違反だということくらいは知っている。
だから、顔のことは一度も触れたことがなかったのに。
まさか!
まさか師匠が自分の顔に自信があったとは...
これは、弟子になったばかりの頃のことだ。
たとえ冗談でも、師匠と呼ぶ人に対して、
「それって、陸に上がったカッパの仲間内でってことですか?」
なんて絶対に言えない。破門されたら困るじゃないか。
じゃあ。もし今、同じ質問をされたら...?
「いやー。この国に言論の自由があって良かった。」
「どんな戯言を吐き出しても、公害にならないって素晴らしい。」
まあ。いくら夫婦でもね。
何でもかんでも言っていいってわけじゃないし。
たとえ、カッパとチンパンジーの掛け合わせが服を着て歩いてると
どれだけ心の中で思っていても、
ここはやっぱり、
「ふうん?」
あるいは
「へえ?」
やっぱり、また「は行」でごまかすしかないだろう。
無用な夫婦喧嘩は避けるべし。
日本語による和平工作に「は行」必須なのだ。
それにしても。
自分に自信がなさすぎて暗い人も困っちゃうけど、
どこからその自信が来るのか、全く理解に苦しむような人も困っちゃう。
疲れるわー。
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