ネルドリップで、1杯点てより多杯数点ての方が“粘性が高く”“コクが出て”しかもいやなアフターテイストが残らないモノとなる。このことから、よりコーヒー層の行程を長く、しかもお湯の接触を速くした方が良いと考えられる。口径より深さの方が長いネルフィルターを使うメリットはここにあるように伺える。しかし、行程が細長くなると抵抗が増して、中心に速い流れを作ることは困難となる。ここで、あなたが自動車を運転中に幅に余裕のない路地に迷い込んでしまった事を思い出して欲しい。前進で気を付けながら何とかぶつからずに済んだ先の角を、曲がったところで行き止まりだった。血の気が引く思いをした筈。前進時よりバックでの走行の方が、死角が多い事も大きな理由だが、更に、修正が効かないからだ。ドリップ時のお湯の流れも、方向が変わってしまうと修正が利かない。通常、お湯を 長い抵抗のある行程(コーヒー層)を思うように通過させることは出来ない。そこで、一度中心に棒を挿し、粉の密度を低くして、サイドへの流出を防ぐ方法を採っている。今、大きな矛盾が生じている事に気付いただろうか。コーヒー層の距離は確かに長くなっているが、粉との総接触距離は変わっていないことになる。なぜなら、粉の密度の低い=表面積の総計は小さいからである。元々、湯のベクトル コントロールが出来ないから、この様な安易対策で対処しようとしてしまった結果だ。
 湯のベクトル コントロールが出来ると、縦長ネルは全く必要ないことに気付く事だろう。それには、分子間力を自在に操れる理論を基に作ったポットetcと操作法が必要となる。今後、ドリップ技術は“コーヒーは嗜好品だから”という言い逃れより、より正確な理論解釈が必要となってくる。